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映画が終わって、場内の照明がついた。音楽が流れた。でも僕はまだ体をこわばらせたままじっと白いスクリーンを睨んでいた。これは現実なんだろうか、と僕は思った。映画が終わってしまうと、それは全然現実じゃないみたいに思えた。どうしてキキが映画に出てるんだ?それも五反田君と一緒に。馬鹿気てる。僕はきっと何処かで間違いを犯しているにちがいない。回路が入れ違っているのだ。何処かで想像力と現実が交錯し混乱しているのだ。そうとしか考えられないじゃないか?
僕は映画館を出てしばらくあたりを歩きまわった。そしてずっとキキのことを考えていた。「どうしたっていうのよ?」と彼女は僕の耳元で囁きつづけていた。
どうしたっていうんだろう?
でもあれはキキだった。間違いなくそうだったんだ。僕に抱かれているときにも、彼女はああいう顔をして、ああいう風に唇をふるわせ、ああいう風に溜め息をついたのだ。あれは演技なんかじゃない。本当にそうなんだ。でも映画だぜ、あれは。
僕にはわからなかった。
時間がたてばたつほど、僕は自分の記憶が信用できなくなってきた。あれはただの幻想だったのだろうか?
一時間半後に僕はもう一度その映画館に入った。そしてもう一度最初から『片想い』を見た。日曜日の朝、五反田君は女を抱いていた。女の背中が見えた。カメラが回る。女の顔が見える。キキだった。間違いない。主人公の女の子が入ってくる。息を呑む。目を閉じる。走り去る。五反田君は茫然とする。キキが言う。「どうしたっていうのよ?」。フェイドアウト。
まったく同じことの繰り返しだった。
それでも映画が終わると、僕にはそれがやはり全然信じられなかった。何かの間違いだろうと思った。どうしてキキが五反田君と寝るんだ?
翌日、僕はもう一度映画館にいってみた。そして座席の上で体をこわばらせ、『片想い』をもう一度見てみた。僕はじっとそのシーンが来るのを待っていた。すごくいらいらしながら。やっとそのシーンになった。日曜日の朝、五反田君は女を抱いていた。女の背中が見えた。カメラが回る。女の顔が見える。キキだ。間違いない。主人公の女の子が入ってくる。息を呑む。目を閉じる。走り去る。五反田君は茫然とする。キキが言う。「どうしたっていうのよ?」
僕は暗闇のなかで溜め息をついた。
オーケー、これは現実だ。間違いない。繋がっている。
电影结束,场内的灯亮了。开始播放音乐。可是我的身体还是那么僵硬继续在看着银幕。这是现实的吗?电影结束后,我觉得那全然不是现实。奇奇怎么会出现在电影中?而且和五反田一起。有那么可笑!我绝对在什么地方犯错误。回路装错了。在什么地方想像力和现实出现交错混乱。必须这样考虑吗?
走出电影院后我在周围转悠了一会儿。而且一直处于在想奇奇的事。“这是怎么回事呢?”她在我的耳旁不停地嘟哝。
这是怎么回事呢?
毕竟那是奇奇。没有错。在被我抱着的时候,她也是那样的模样,以那种方式抖着嘴唇,以那种方式喘气。那不是演技。那是真的。可是那也是电影。
我弄不明白。
随着时间往前走,我越不相信自己的记忆。那也只是幻想而已吗?
一个半小时之后我再一次走进电影院。又重新从头开始看《单恋》。一个星期日的早晨,五反田抱着女的。看到了她的后背。镜头在转。看到了女人的脸。是奇奇。没有错。女主人公走了进来。停止呼吸。闭上眼睛。跑走了。五反田君茫然。奇奇说:“这是怎么回事?”画面渐渐淡出。
完全是相同的事在反复。
电影结束之后,我还是不能完全相信那件事。有什么错误吧。为什么奇奇和五反田睡了呢?
第二天我又去了一趟电影院。在座位上身体僵硬,又看了一次《单恋》。我专门等着那个场面的到来。非常焦急。终于那个场面来了。在星期日的早上,五反田抱着女的。看到了那女人的后背。镜头在转。看到了那女人的脸。是奇奇。没有错。女主人公走了进来。停止呼吸。闭上眼睛。跑走了。五反田君茫然。奇奇说:“这是怎么回事?”
我在黑暗中喘了一口气。
好了,这是现实。没有错。能联系上了。 |
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