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23(1)
二人の刑事はやがて部屋に入ってきたが、今度はどちらも腰掛けなかった。僕はまだぼんやりと黴を眺めていた。
「あんた帰っていいですよ、もう」と漁師が無表情な声で僕に言った。「御苦労さんでした」
「帰っていい?」と僕は唖然として聞きかえした。
「もう質問が終わったの。おしまい」と文学が言った。
「いろいろと事情が変わったのよ」と漁師が言った。「これ以上あんたをここに置いておけなくなった。だから帰っていいです。御苦労さん」
僕はすっかり煙草臭くなってしまったジャケットを着て、椅子から立ち上がった。何だかよくわけがわからないけれど、何にせよ相手の気が変わらないうちにさっさと帰ってしまった方がよさそうだった。玄関まで文学が送ってくれた。
「あのね、あんたがシロだってことは、昨日の夜にもうわかってたんですよ」と彼は言った。「鑑識と解剖の結果が出て、あんたとは全く繋がりがみつからなかった。残っていた精液の血液型も違ってた。あんたの指紋も出なかった。でもね、あんたは何か隠してたね。だから置いておいたんです。それを吐き出すまでもう少し叩いてみようって。何か隠してることは我々にはわかるんだ。勘ですよ。職業的な勘。あの女が誰か、ヒントくらいは持ってるでしょう?でも何かの理由でそれを隠している。いけないことだよ。俺たちそんな甘くないよ。プロだから。だいたい人が一人殺されてるんだ」
「悪いけど何を言ってるのかよくわからない」と僕は言った。
「また来てもらうことになるかもしれんですよ」と彼はポケットからマッチを出して、マッチ棒で爪の甘皮を押しながら言った。「やるとなると、我々はしつこいからね。今度は横から弁護士が出てきてもびくともしないくらいびしっと準備してやる」
「弁護士?」と僕は訊いた。
でもその時、彼はもう建物の中に姿を消していた。僕はタクシーを拾って家に帰った。そして浴槽に湯をはって、ゆっくりとそこに身を沈めた。歯を磨き、髭を剃り、頭を洗った。体中が煙草臭かった。ひどい場所だった、と僕は思った。蛇の穴みたいだ。
过了一会儿两位刑警回到房间,这次两人谁也没有坐下。我还在发呆地望着那黑斑点。
“你可以回去了。”渔夫用无表情的声音对我说。“让你受苦了。”
“可以回去了吗?”我哑然地反复问。
“提问已经结束了。结束了。”文学说。
“各种事情都在变化。”渔夫说。“再也不用让你呆在这里了。所以可以回去了。辛苦了。”
我穿上完全被烟熏臭了的短外套,从椅子上站了起来。虽然说也并不完全明白,在他们的态度还没有变化之时先离开为好。文学还把我送到大门。
“那个,有关你的事情,在昨天晚上已经明白了。”他说。“鉴别和解剖结果都出来了,没有发现和你有什么关系。所残留的精液的血型也不同,没有找到你的指纹。可是你在隐瞒什么,所以就一直没有放你。在你说出那件事之前还可以再询问。你在隐瞒什么事我们也很清楚。这是直觉,职业的直觉。那女的是谁?有什么启示吧?可是,是什么理由隐瞒?那是不可以的。我们是不会姑息的。专业的原因。大概是人被一个人杀了。”
“不明白,你要说出什么呢?我还不明白。”我说。
“也许还会让你再来。”他从口袋里拿出火柴,用火柴棒摁住手指甲嫩皮说。“若真那样做的话,我们就纠缠不休了。下面要准备好,若从外面请来辩护律士我们也满不在乎。”
“辩护律士?”我问。
可是,在那个时候他已经消失到大楼之中。我拦住出租车回到家。紧接着向浴槽里放热水,将身体慢慢地沉下去。刷牙,刮胡子,洗头。体内都有烟的臭味。我想,那个地方也太恶劣了。就像蛇窝一样。 |
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