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彼は微笑んで車を降りようとしたが、ふと思い直したように僕の顔を見た。
「不思議な話だけど、僕には君以外に友達と言えそうな人間がまったく一人もいないんだ。二十年振りに会って、それも今日で会うのが二回目なのにね。不思議だ」
そう言って彼は行ってしまった。彼はトレンチコートの襟を立てて、春の小雨の中をニューグランドホテルの玄関に入っていった。『カサブランカ』みたいだ、と僕は思った。美しい友情の始まり……。
でも僕もやはり彼に対して同じようなことを感じていた。だから彼の言うことはよく理解できた。僕が今友達と呼べるのは彼しかいないような気がした。そして僕もやはりそれを不思議だと感じていた。それが『カサブランカ』みたいに見えるのは、彼のせいではないのだ。
僕はスライ&ザファミリーストーンを聴き、曲にあわせてハンドルをぱたぱたと叩きながら東京に戻った。懐かしき『エヴリデイピープル』。
僕はなんてことのない人間、
君だってどっこいどっこい、
やってることは違っても、
僕らは似たもの同士だぜ、
ウーシヤシャ、エヴリデイピープル
雨は相変わらず静かに均一に降り続いていた。夜の間に植物の芽を導き出す、優しく柔らかな雨。「非常に、完全に、死んでいる」と僕は自分に向かって言ってみた。そしてあのホテルに泊まって五反田君と一緒に酒を飲むべきだったかな、とふと思った。僕と五反田君との間には四っの共通点がある。まず理科の実験班が同じだった。次にどちら離婚していて独身だ。それからキキと寝ている。そして第四にどちらもメイ寝ている。そしてメイは死んでいる。非常に、完全に。酒を一緒に飲むだけの価値はある。別に付き合ったってよかったのだ。僕ばどうせ暇で、とくに明日に何をするという予定もなかった。何が僕を止めたのだろう?たぶんそれが映画のシーンみたいに見えることが嫌だったんだろう、と僕は思った。考えようによっては気の毒な男だ。あまりにもチャーミングーすぎる。そしてそれは彼のせいではないのだ。たぶん。
渋谷のアパートに戻ると、僕はブラインドの隙間から高速道路を眺めながらウイスキーを飲んだ。四時前に眠くなってきたのでベッドに入って眠った。
他微笑着正要下车之时,突然回想起什么看着我的脸。
“真想不开。除你之外可称为我朋友的人几乎一人都没有。回望一下二十年,不过今天才是第二次见面。不可思议。”
这样说完之后他走了。他把大衣领竖起来,在春天的小雨中走进新グランド宾馆的大门。像カサブランカ那样。美好的友情开始了……
我对他也是相同的感觉。所以他说的话我很容易理解。也觉得现在把我称做朋友的也只有他。我也觉得那是不可思议。把他看成カサブランカ,那并不是他的原因。
我听着スライ和ザファミリーストーン,合着那节奏敲着方向盘回到东京。很怀念エヴリデイピープル。
“我是无事可做的人,
你我不可分解,
所做的事有所不同,
我们是相近的同士,
噢、不过普通人而已。”
雨照旧静静地均匀地继续下着。在夜间植物的芽就会生长出来,多么温柔细纤的雨。“非常地、完全地、死去了。”我对着自己自言自语。我突然这么想:应该住在那个宾馆和五反田一起喝酒呀。我和五反田之间有四个共同点。首先是同一个理科实验班。其次是两人都离了婚是独身。再次是和奇奇睡觉。第四是都和メイ睡觉。而且メイ死了。非常地、完全地相同。一起喝酒的价值是有的。是特别相近的很好的交际。我有空余时间,也没有特殊的明天要做什么的予定。是什么要制止我呢?大概是讨厌看上去像电影场面那样吧。按着这种想法推测真是个可怜的人。也真是有魅力的人。那并不是他的原因。大概是这样。
回到渋谷的公寓后,我透过百叶窗的缝隙望着高速路喝上了威士忌。在四点之前困起来,就躺在床上睡觉。 |
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