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0 l5 _- p0 l V3 d/ Y友人に「私は貧乏ですから」と言う人のが口癖の人がいる。顔を合わせると、一度これを口にしないと気がすまない。% ^; @2 t( \3 Q- x; c
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例えば、「ここのところ天気続きだね]と言うと、
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: r7 h {, w% D( j6 ?6 K$ e[天気は大歓迎だ、私は貧乏ですから], e& p/ ~- k5 ~" l" m/ I
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+ {5 X' D$ E& u0 \, @5 Nあらゆるものを、自分の貧乏に結び付けないとおきまらない。そのくせ、それ程貧しく、息子と夫婦の三人暮らし、娘はそれぞれ嫁にやり、自分は悠々と句を楽しみ、夫人連から先生と呼ばれ、その弟子たちを集めてよく句会などを催している。' O+ H+ p4 _8 S) h0 r
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その息子に度々縁談がもちこまれるが、いいところまで言ってこわれてしまう。妻君は、おそらく夫が口癖の[私は貧乏ですから」を口にするせいだと言う。その度に友人は、「おれに罪をきせるな」と怒り出して、息子の縁談が始まると、夫婦喧嘩がもちあがる。
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最近、息子にまた縁談があり、見合いも済んで、向こうの父親に料亭へ招待されることになった。向こうの父親は無学だが、苦労の末に自動車の修理工場を経営している人で、「こんな粗末のところへお招きして、失礼は御免ください」といった。
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0 `$ o- o) J' N8 p8 E8 b「いや、結構です。わたしは貧乏ですから」友人はつい、何時もの口癖を出してしまった。0 S# ~7 [, U4 U
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! a m( G9 ^- f, X8 M家を出るとき、妻君から今日だけは口癖を慎むように言われたのだが、長年の習慣はどうにもならなかった。すると、その言葉の下から、
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+ m/ d Z0 B2 i8 F( v- v「いや、貧乏は美徳です。」と相手は言った。友人はぐっとつまった。そういう時いつも返ってくる言葉は, n" W9 }" H, w% g. e
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* g# _; x; |+ g3 [% y1 m「どう致しまして」とか、「いやいや」とか、「ご冗談を」とか、単なる苦笑だけだったが、「貧乏は美徳です」とずっけり言われて、二の句がつげなかった。0 f( ?9 }4 T+ m# _ z& b
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「私は貧乏ですから」という口癖も、それからふっつり彼は口にしなくなった。つまり、長年の悪癖が直った。そしてその縁談もまとまったそうである。$ W- Z6 H& C, I8 d. F+ [! D
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