咖啡日语论坛

 找回密码
 注~册
搜索
查看: 30351|回复: 88

[好书推荐] 窓際のトットちゃん(每日更新....全文完!)

[复制链接]
头像被屏蔽
发表于 2006-3-30 18:38:49 | 显示全部楼层 |阅读模式
算是我第一次看的日文原版书。来自一位日本朋友的推荐。很喜欢。相信有看到过中文版的朋友。放在这里,希望大家喜欢。我争取每天更新。
 これは、第二次世界大戦が終わる、ちょっと前まで、実際に東京にあった小学校と、そこに、本当に通っていた女の子のことを書いたお話です。                                   

                                        窓際のトットちゃん                    作家:黒柳徹子\

[ 本帖最后由 bgx5810 于 2008-8-17 17:35 编辑 ]

本帖子中包含更多资源

您需要 登录 才可以下载或查看,没有帐号?注~册

x
回复

使用道具 举报

发表于 2006-3-31 08:35:27 | 显示全部楼层
搂主加油。
回复 支持 反对

使用道具 举报

头像被屏蔽
 楼主| 发表于 2006-3-31 19:47:09 | 显示全部楼层
引用第1楼townking2006-03-31 08:35发表的“”:
搂主加油。


嗯!谢谢支持
马上贴今天的
回复 支持 反对

使用道具 举报

头像被屏蔽
 楼主| 发表于 2006-3-31 19:48:07 | 显示全部楼层
窓際のトットちゃん
新しい学校の門をくぐる前に、トットちゃんのママが、なぜ不安なのかを説明すると、それはトットちゃんが、小学校一年なのにかかわらず、すでに学校を退学になったからだった。一年生で!!
 つい先週のことだった。ママはトットちゃんの担任の先生に呼ばれて、はっきり、こういわれた。
 「お宅のお嬢さんがいると、クラス中の迷惑になります。よその学校にお連れください!」
 若くて美しい女の先生は、ため息をつきながら、繰り返した。
 「本当に困ってるんです!」
 ママはびっくりした。(一体、どんなことを……。クラス中の迷惑になる、どんなことを、あの子がするんだろうか……)
 先生は、カールしたまつ毛をパチパチさせ、パーマのかかった短い内巻の毛を手でなでながら説明に取り掛かった。
 「まず、授業中に、机のフタを、百ぺんくらい、あけたり閉めたりするんです。そこで私が、用事がないのに、開けたり閉めたりしてはいけませんと申しますと、お宅のお嬢さんは、ノートから、筆箱、教科書、全部を机の中にしまってしまって、一つ一つ取り出すんです。たとえば、書き取りをするとしますね。するとお嬢さんは、まずフタを開けて、ノートを取り出した、と思うが早いか、パタン!とフタを閉めてしまいます。そして、すぐにまた開けて頭を中につっこんで筆箱から“ア”を書くための鉛筆を出すと、急いで閉めて、“ア”を書きます。ところが、うまく書けなかったり間違えたりしますね。そうすると、フタを開けて、また頭を突っ込んで、消しゴムをだし、閉めると、急いで消しゴムを使い、次に、すごい早さで開けて、消しゴムをしまって、フタを閉めてしまいます。で、すぐ、また開けるので見てますと、“ア”ひとつだけ書いて、道具をひとつひとつ、全部しまうんです。鉛筆をしまい、閉めて、また開けてノートをしまい……というふうに。そして、次の“イ”のときに、また、ノートから始まって、鉛筆、消しゴム……その度に,私の目の前で、目まぐるしく、机のフタが開いたり閉まったり。私、目が回るんです。でも、一応、用事があるんですから、いけないとは申せませんけど……」
 先生のまつ毛が、その時を思い出したように、パチパチと早くなった。
 そこで聞いて、ママには、トットちゃんが、なんで、学校の机を、そんなに開けたり閉めたりするのか、ちょっとわかった。というのは、初めて学校に行って帰ってきた日に、トットちゃんが、ひどく興奮して、こうママに報告したことを思い出したからだった。
「ねえ、学校って、すごいの。家の机の引き出しは、こんな風に、引っ張るのだけど、学校のはフタが上にあがるの。ゴミ箱のフタと同じなんだけど、もっとツルツルで、いろんなものが、しまえて、とってもいいんだ!」
ママには、今まで見たことのない机の前で、トットちゃんが面白がって、開けたり閉めたりしてる様子が目に見えるようだった。そして、それは、(そんなに悪いことではないし、第一、だんだん馴れてくれば、そんなに開けたり閉めたりしなくなるだろう)と考えたけど、先生には、
「よく注意しますから」といった。
ところが、先生には、それまでの調子より声をもうすこし高くして、こういった。
「それだけなら、よろしいんですけど!」
ママは、すこし身がちぢむような気がした。先生は、体を少し前にのり出すといった。
「机で音を立ててないな、と思うと、今度は、授業中、立ってるんです。ずーっと!」
ママは、またびっくりしたので聞いた。
「立ってるって、どこにでございましょうか?」
先生はすこし怒った風にいった。
「教室の窓のところです!」
ママは、わけが分からないので、続けて質問した。
「窓のところで、何をしてるんでしょうか?」
先生は、半分、叫ぶような声で言った。
「チンドン屋を呼び込むためです。」

先生の話を、まとめて見ると、こういうことになるらしかった。
一時間目に、机をパタパタを、かなりやると、それ以後は、机を離れて、窓のところに立って外を見ている。そこで、静かにしていてくれるのなら、立っててもいい、と先生が思った矢先に、突然、トットちゃんは、大きい声で「チンドン屋さーん!」と外に向かって叫んだ。だいたい、この教室の窓というのが、トットちゃんにっとては幸福なことに、先生にとっては不幸なことに、1階にあり、しかも通りは目の前だった。そして境といえば、低い、生垣があるだけだったから、トットちゃんは、簡単に、通りを歩いてる人と、話ができるわけだったのだ。さて、通りかかったチンドン屋さんは、呼ばれたから教室の下まで来る。するとトットちゃんは、うれしそうに、クラス中の皆に呼びかけた。「来たわよー」。勉強してたクラス中の子供は、全員、その声で窓のところに、詰め掛けて、口々に叫ぶ。「チンドン屋さーん」。すると、トットちゃんは、チンドン屋さんに頼む。
「ねえ、ちょっとだけで、やってみて?」
学校のそばを通る時は、音をおさえめにしているチンドン屋さんも、せっかくの頼みだからというので盛大に始める。クラスネットや鉦や太鼓や、三味線で。その間、先生がどうしてるか、といえば、一段落つくまで、ひとり教壇で、ジーっと待ってるしかない。(この一曲が終わるまでの辛抱なんだから)と自分に言い聞かせながら。 
さて、一曲終わると、チンドン屋さんは去って行き、生徒たちは、それぞれの席に戻る。ところが、驚いたことに、トットちゃんは、窓のところから動かない。「どうして、まだ、そこにいるのですか?」という先生の問いに、トットちゃんは、大真面目に答えた。
「だって、また違うチンドン屋さんが来たら、お話しなきゃならないし。それから、さっきのチンドン屋さんが、また、戻ってきたら、大変だからです。」

「これじゃ、授業にならない、ということが、おわかりでしょう?」
話してるうちに、先生は、かなり感情的なってきて、ママに言った。ママは、(なるほど、これでは先生も、お困りだわ)と思いかけた。とたん、先生は、また一段と大きな声で、こういった。
「それに……」
ママはびっくりしながらも、情けない思い出先生に聞いた。
「まだ、あるんでございましょうか……」
先生は、すぐいった。
「“まだ”というように、数えられるくらいなら、こうやって、やめていただきたい、とお願いはしません!!」
それから先生は、少し息を静めて、ママの顔を見て言った。
「昨日のことですが、例によって、窓のところに立っているので、またチンドン屋だと思って授業をしておりましたら、これが、また大きな声で、いきなり、『何してるの?』と、誰かに、何かを聞いているんですね。相手は、私のほうから見えませんので、誰だろう、と思っておりますと、また大きな声で、『ねえ、何をしてるの?』って。それも、今度は、通りにでなく、上のほうに向かって聞いてるんです。私も気になりまして、相手の返事が聞こえるかした、と耳を澄ましてみましたが、返事がないんです。お嬢さんは、それでも、さかんに、『ねえ、何してるの?』を続けるので、授業にもさしさわりがあるので、窓のところに行って、お嬢さんの話しかけてる相手が誰なのか、見てみようと思いました。窓から顔を出して上を見ましたら、なんと、つばめが、教室の屋根の下に、巣を作っているんです。その、つばめに聞いてるんですね。そりゃ私も、子供の気持ちが、分からないわけじゃありませんから、つばめに聞いてることを、馬鹿げている、とは申しません。授業中に、あんな声で、つばめに、『何をしてるのか?』と聞かなくてもいいと、私は思うんです」
そして先生は、ママが、一体なんとお詫びをしよう、と口を開きかけたのより、早く言った。
「それから、こういうことも、ございました。初めての図画の時間のことですが、国旗を描いて御覧なさい、と私が申しましたら、他の子は、画用紙に、ちゃんと日の丸を描いたんですが、お宅のお嬢さんは、朝日新聞の模様のような、軍艦旗を描き始めました。それなら、それでいい、と思ってましたら、突然、旗の周りに、ふさを、つけ始めたんです。ふさ。よく青年団とか、そういった旗についてます。あの、ふさです。で、それも、まあ、どこかで見たのだろうから、と思っておりました。ところが、ちょっと目を離したキスに、まあ、黄色のふさを、机にまで、どんどん描いちゃってるんです。だいたい画用紙に、ほぼいっぱいに旗を描いたんですから、ふさの余裕は、もともと、あまりなかったんですが、それに、黄色のクレヨンで、ゴシゴシふさを描いたんですね。それが、はみ出しちゃって、画用紙をどかしたら、机に、ひどい黄色のギザギザが残ってしまって、ふいても、こすっても、とれません。まあ、幸いなことは、ギザギザが三方向だけだった、ってことでしょうか?」
ママは、ちぢこまりながらも、急いで質問した。
「三方向っていうのは……」
先生は、そろそろ疲れてきた、という様子だったが、それでも親切にいった。
「旗竿を左はじに描きましたから、旗のギザギザは、三方だけだったんでございます」
ママは、少し助かった、と思って、
「はあ、それで三方だけ……」
といった。すると、先生は、次に、とっても、ゆっくりの口調で、一言ずつ区切って
「ただし、その代わり、旗竿のはじが、やはり、机に、はみ出して、残っております!!」
それから先生は立ち上がると、かなり冷たい感じで、とどめをさすように言った。
「それと、迷惑しているのは、私だけではございません。隣の一年生の受け持ちの先生もお困りのことが、あるそうですから……」
ママは、決心しないわけには、いかなかった。(確かに、これじゃ、他の生徒さんに、ご迷惑すぎる。どこか、他の学校を探して、移したほうが、よさそうだ。何とか、あの子の性格がわかっていただけて、皆と一緒にやっていくことを教えてくださるような学校に……)
そうして、ママが、あっちこっち、かけずりまわって見つけたのが、これから行こうとしている学校、というわけだったのだ。
ママは、この退学のことを、トットちゃんに話していなかった。話しても、何がいけなかったのか、わからないだろうし、また、そんなにことで、トットちゃんが、コンプレックスを持つのも、よくないと思ったから、(いつか、大きくなったら、話しましょう)と、きめていた。ただ、トットちゃんには、こういった。
「新しい学校に行ってみない?いい学校だって話よ」
トットちゃんは、少し考えてから、言った。
「行くけど……」
ママは、(この子は、今何を考えてるのだろうか)と思った。(うすうす、退学のこと、気がついていたんだろうか……)
次の瞬間、トットちゃんは、ママの腕の中に、飛び込んで来て、いった。
「ねえ、今度の学校に、いいチンドン屋さん、来るかな?」
とにかく、そんなわけで、トットちゃんとママは、新しい学校に向かって、歩いているのだった。
回复 支持 反对

使用道具 举报

头像被屏蔽
 楼主| 发表于 2006-4-1 21:20:51 | 显示全部楼层
新しい学校
学校の門が、はっきり見えるところまで来て、トットちゃんは、立ち止った。なぜなら、この間まで行っていた学校の門は、立派なコンクリートみたいな柱で、学校の名前も、大きく書いてあった。ところが、この新しい学校の門ときたら、低い木で、しかも葉っぱが生えていた。
「地面から生えてる門ね」
と、トットちゃんはママに言った。そうして、こう、付け加えた。
「きっと、どんどんはえて、今に電信柱より高くなるわ」
確かに、その二本の門は、根っこのある木だった。トットちゃんは、門に近づくと、いきなり顔を、斜めにした。なぜかといえば、門にぶら下げてある学校の名前を書いた札が、風に吹かれたのか、斜めになっていたからだった。
「トモエがくえん」
トットちゃんは、顔を斜めにしたまま、表札を読み上げた。そして、ママに、
「トモエって、なあに?」
と聞こうとしたときだった。トットちゃんの目の端に、夢としか思えないものが見えたのだった。トットちゃんは、身をかがめると、門の植え込みの、隙間に頭を突っ込んで、門の中をのぞいてみた。どうしよう、みえたんだけど!
「ママ!あれ、本当の電車?校庭に並んでるの」
それは、走っていない、本当の電車が六台、教室用に、置かれてあるのだった。トットちゃんは、夢のように思った。“電車の教室……”
電車で窓が、朝の光を受けて、キラキラと光っていた。目を輝かして、のぞいているトットちゃんの、ホッペタも、光っていた。

  気に入ったわ
  次の瞬間、トットちゃんは、「わーい」と歓声を上げると、電車の教室のほうに向かって走り出した。そして、走りながら、ママに向かって叫んだ。
「ねえ、早く、動かない電車に乗ってみよう!」
ママは、驚いて走り出した。もとバスケットバールの選手だったままの足は、トットちゃんより速かったから、トットちゃんが、後、ちょっとでドア、というときに、スカートを捕まえられてしまった。ママは、スカートのはしを、ぎっちり握ったまま、トットちゃんにいった。
「ダメよ。この電車は、この学校のお教室なんだし、あなたは、まだ、この学校に入れていただいてないんだから。もし、どうしても、この電車に乗りたいんだったら、これからお目にかかる校長先生とちゃんと、お話してちょうだい。そして、うまくいったら、この学校に通えるんだから、分かった?」
トットちゃんは、(今乗れないのは、とても残念なことだ)と思ったけど、ママのいう通りにしようときめたから、大きな声で、\
「うん」
といって、それから、いそいで、つけたした。
「私、この学校、とっても気に入ったわ」
ママは、トットちゃんが気に入ったかどうかより、校長先生が、トットちゃんを気に入ってくださるかどうか問題なのよ、といいたい気がしたけど、とにかく、トットちゃんのスカートから手を離し、手をつないで校長室のほうに歩き出した。
どの電車も静かで、ちょっと前に、一時間目の授業が始まったようだった。あまり広くない校庭の周りには、塀の変わりに、いろんな種類の木が植わっていて、花壇には、赤や黄色の花がいっぱい咲いていた。
校長室は、電車ではなく、ちょうど、門から正面に見える扇形に広がった七段くらいある石の階段を上った、その右手にあった。
トットちゃんは、ママの手を振り切ると、階段を駆け上がって行ったが、急に止まって、振り向いた。だから、後ろから行ったママは、もう少しで、トットちゃんと正面衝突するところだった。
「どうしたの?」
ママは、トットちゃんの気が変わったのかと思って、急いで聞いた。トットちゃんは、ちょうど階段の一番うえに立った形だったけど、まじめな顔をして、小声でママに聞いた。
ママは、かなり辛抱づよい人間だったから……というか,面白がりやだったから、やはり小声になって、トットちゃんに顔をつけて、聞いた。
「どうして?」
トットちゃんは、ますます声をひそめて言った。
「だってさ、校長先生って、ママいったけど、こんなに電車、いっぱい持ってるんだから、本当は、駅の人なんじゃないの?」
確かに、電車の払い下げを校舎にしている学校なんてめずらしいから、トットちゃんの疑問も、もっとものこと、とママも思ったけど、この際、説明してるヒマはないので、こういった。
「じゃ、あなた、校長先生に伺って御覧なさい、自分で。それと、あなたのパパのことを考えてみて?パパはヴァイオリンを弾く人で、いくつかヴァイオリンを持ってるけど、ヴァイオリン屋さんじゃないでしょう?そういう人もいるのよ」
トットちゃんは、「そうか」というと、ママと手をつないだ。
回复 支持 反对

使用道具 举报

发表于 2006-4-1 23:23:40 | 显示全部楼层
图书馆看的是中文版的
谢谢楼主拉     
回复 支持 反对

使用道具 举报

头像被屏蔽
 楼主| 发表于 2006-4-2 11:26:18 | 显示全部楼层
校長先生
  トットちゃんとママが入っていくと、部屋の中にいた男の人が椅子から立ち上がった。
その人は、頭の毛が薄くなっていて、前のほうの歯が抜けていて、顔の血色がよく、背はあまり高くないけど、肩や腕が、がっちりしていて、ヨレヨレの黒の三つ揃いを、キチンと着ていた。
トットちゃんは、急いで、お辞儀をしてから、元気よく聞いた。
「校長先生か、駅の人か、どっち?」
「校長先生だよ」
トットちゃんは、とってもうれしそうに言った。
「よかった。じゃ、おねがい。私、この学校にいりたいの」
校長先生は、椅子をトットちゃんに勧めると、ママのほうを向いて言った。
「じゃ、僕は、これからトットちゃんと話がありますから、もう、お帰り下さって結構です」
ほんのちょっとの間、トットちゃんは、少し心細い気がしたけど、なんとなく、(この校長先生ならいいや)と思った。ママは、いさぎよく先生にいった。
「じゃ、よろしく、お願いします」
そして、ドアを閉めて出て行った。
校長先生は、トットちゃんの前に椅子を引っ張ってきて、とても近い位置に、向かい合わせに腰をかけると、こういった。
「さあ、何でも、先生に話してごらん。話したいこと、全部」
「話したいこと!?」
(なにか聞かれて、お返事するのかな?)と思っていたトットちゃんは、「何でも話していい」と聞いて、ものすごくうれしくなって、すぐ話し始めた。順序も、話し方も、少しグチャグチャだったけど、一生懸命に話した。
今乗ってきた電車が速かったこと。\
駅の改札口のおじさんに、お願いしたけど、切符をくれなかったこと。
前に行ってた学校の受け持ちの女の先生は、顔がきれいだということ。
その学校には、つばめの巣があること。
家には、ロッキーという茶色の犬がいて“お手”と“ごめんくださいませ”と、ご飯の後で、“満足、満足”ができること。
幼稚園のとき、ハサミを口の中に入れて、チョキチョキやると、「舌を切ります」と先生が怒ったけど、何回もやっちゃったっていうこと。
洟が出てきたときは、いつまでも、ズルズルやってると、ママにしかられるから、なるべく早くかむこと。
パパは、海で泳ぐのが上手で、飛び込みだって出来ること。
こういったことを、次から次と、トットちゃんは話した。先生は、笑ったり、うなずいたり、「これから?」とかいったりしてくださったから、うれしくて、トットちゃんは、いつまでも話した。でも、とうとう、話がなくなった。トットちゃんは、口をつぐんで考えていると、先生はいった。
「もう、ないかい?」
トットちゃんは、これでおしまいにしてしまうのは、残念だと思った。
せっかく、話を、いっぱい聞いてもらう、いいチャンスなのに。
(なにか、話は、ないかなあ……)
頭の中が、忙しく動いた。と思ったら、「よかった!」。話が見つかった。
それは、その日、トットちゃんが着てる洋服のことだった。たいがいの洋服は、ママが手製で作ってくれるのだけれど、今日のは、買ったものだった。というのも、なにしろトットちゃんが夕方、外から帰ってきたとき、どの洋服もビリビリで、ときには、ジャキジャキのときもあったし、どうしてそうなるのか、ママにも絶対わからないのだけれど、白い木綿でゴム入りのパンツまで、ビリビリになっているのだから。トットちゃんの話によると、よその家の庭をつっきって垣根をもぐったり、原っぱの鉄条網をくぐるとき、「こんなになっちゃうんだ」ということなのだけれど、とにかく、そんな具合で、結局、今朝、家をでるとき、ママの手製の、しゃれたのは、どれもビリビリで、仕方なく、前に買ったのを着てきたのだった。それはワンピースで、エンジとグレーの細かいチェックで、布地はジャージーだから、悪くはないけど、衿にしてある、花の刺繍の、赤い色が、ママは、「趣味が悪い」といっていた。そのことを、トットちゃんは、思い出したのだった。だから、急いで椅子から降りると、衿を手で持ち上げて、先生のそばに行き、こういった。
「この衿ね、ママ、嫌いなんだって!」

それをいってしまったら、どう考えてみても、本当に、話しはもう無くなった。トットちゃんは(少し悲しい)と思った。トットちゃんが、そう思ったとき、先生が立ち上がった。そして、トットちゃんの頭に、大きく暖かい手を置くと、
「じゃ、これで、君は、この学校の生徒だよ」
そういった。……その時,トットちゃんは、なんだか、生まれて初めて、本当に好きな人にあったような気がした。だって、生まれてから今日まで、こんな長い時間、自分の話を聞いてくれた人は、いなっかたんだもの。そして、その長い時間の間、一度だって、あくびをしたり、退屈そうにしないで、トットちゃんが話してるのと同じように、身を乗り出して、一生懸命、聞いてくれたんだもの。\
トットちゃんは、このとき、まだ時計が読めなかったんだけど、それでも長い時間、と思ったくらいなんだから、もし読めたら、ビックリしたに違いない。そして、もっと先生に感謝したに違いない。というのは、トットちゃんとママが学校に着いたのが八時で、校長室で全部の話が終わって、トットちゃんが、この学校の生徒になった、と決まったとき、先生が懐中時計を見て、「ああ、お弁当の時間だな」といったから、つまり、たっぷり四時間、先生は、トットちゃんの話を聞いてくれたことになるのだった。
後にも先にも、トットちゃんの話を、こんなにちゃんと聞いてくれた大人は、いなかった。
それにしても、まだ小学校一年生になったばかりのトットちゃんが、四時間も、一人でしゃべるぶんの話しがあったことは、ママや、前の学校の先生が聞いたら、きっと、ビックリするに違いないことだった。

このとき、トットちゃんは、まだ退学のことはもちろん、周りの大人が、手こずってることも、気がついていなかったし、もともと性格も陽気で、忘れっぽいタチだったから、無邪気に見えた。でも、トットちゃんの中のどこかに、なんとなく、疎外感のような、他の子供と違って、ひとりだけ、ちょっと、冷たい目で見られているようなものを、おぼろげには感じていた。それが、この校長先生といると、安心で、暖かくて、気持ちがよかった。
(この人となら、ずーっと一緒にいてもいい)
これが、校長先生、小林宗作氏に、初めて遭った日、トットちゃんが感じた、感想だった。そして、有難いことに、校長先生も、トットちゃんと、同じ感想を、その時、持っていたのだった。
回复 支持 反对

使用道具 举报

头像被屏蔽
 楼主| 发表于 2006-4-2 15:16:24 | 显示全部楼层
お弁当
 トットちゃんは、校長先生に連れられて、みんなが、お弁当を食べるところを、見に行くことになった。お昼だけは、電車でなく、「みんな、講堂に集まることになっている」と校長先生が教えてくれた。講堂はさっきトットちゃんが上がってきた石の階段の、突き当たりにあった。いってみると、生徒たちが、大騒ぎをしながら、机と椅子を、講堂に、まーるく輪になるように、並べているところだった。隅っこで、それを見ていたトットちゃんは、校長先生の上着を引っ張って聞いた。
「他の生徒は、どこにいるの?」
 校長先生は答えた。
「これで全部なんだよ」
「全部!?」
トットちゃんは、信じられない気がした。だって、前の学校の一クラスと同じくらいしか、いないんだもの。そうすると、
「学校中で、五十人くらいなの?」
校長先生は、「そうだ」といった。トットちゃんは、なにもかも、前の学校と違ってると思った。
 みんなが着着席すると、校長先生は、
「みんな、海のものと、山のもの、もって来たかい?」
と聞いた。
 「はーい」
 みんな、それぞれの、お弁当の、ふたを取った。
 「どれどれ」
 校長先生は、机で出来た円の中に入ると、ひとりずる、お弁当をのぞきながら、歩いている。生徒たちは、笑ったり、キイキイいったり、にぎやかだった。
 「海のものと、山のもの、って、なんだろう」
 トットちゃんは、おかしくなった。でも、とっても、とっても、この学校は変わっていて、面白そう。お弁当の時間が、こんなに、愉快で、楽しいなんて、知らなかった。トットちゃんは、明日からは、自分も、あの机に座って、『海のものと、山のもの』の弁当を、校長先生に見てもらうんだ、と思うと、もう、嬉しさと、楽しさで、胸がいっぱいになり、叫びそうになった。
 お弁当を、のぞきこんでる校長先生の肩に、お昼の光が、やわらかく止まっていた。
回复 支持 反对

使用道具 举报

头像被屏蔽
 楼主| 发表于 2006-4-2 15:20:14 | 显示全部楼层
今日から学校に行く 
きのう、「今日から、君は、もう、この学校の生徒だよ」、そう校長先生に言われたトットちゃんにとって、こんなに次の日が待ち遠しい、ってことは、今までになかった。だから、いつもなら朝、ママが叩き起こしても、まだベッドの上でぼんやりしてることの多いトットちゃんが、この日ばかりは、誰からも起こされない前に、もうソックスまではいて、ランドセルを背負って、みんなの起きるのを待っていた。
 この家の中で、いちばん、きちんと時間を守るシェパードのロッキーは、トットちゃんの、いつもと違う行動に、怪訝そうな目を向けながら、それでも、大きく伸びをすると、トットちゃんにぴったりとくっついて、(何か始まるらしい)ことを期待した。
 ママ大変だった。大忙しで、『海のものと山のもの』のお弁当を作り、トットちゃんに朝ごはんを食べさせ、毛糸で編んだヒモを通した、セルロイドの定期入れを、トットちゃんの首にかけた。これは定期を、なくさないためだった、パパは
「いい子でね」
と頭をヒシャヒシャにしたまま言った。
「もちろん!」と、トットちゃんは言うと、玄関で靴を履き、戸を開けると、クルリと家の中を向き、丁寧にお辞儀をして、こういった。
 「みなさま、行ってまいります」
 見送りに立っていたママは、ちょっと涙でそうになった。それは、こんなに生き生きとしてお行儀よく、素直で、楽しそうにしてるトットちゃんが、つい、このあいだ、「退学になった」、ということを思い出したからだった。(新しい学校で、うまくいくといい……)ママは心からそう祈った。
 ところが、次の瞬間、ママは、飛び上がるほど驚いた。というのは、トットちゃんが、せっかくママが首からかけた定期を、ロッキーの首にかけているのを見たからだった。ママは、(一体どうなるのだろう?)と思ったけど、だまって、成り行きを見ることにした。トットちゃんは、定期をロッキーの首にかけると、しゃがんで、ロッキーに、こういった。
 「いい?この定期のヒモは、あんたに、合わないのよ」
 確かに、ロッキーにはヒモが長く、定期は地面を引きずっていた。
 「わかった?これは私の定期で、あんたのじゃないから、あんたは電車に乗れないの。校長先生に聞いてみるけど、駅の人にも。で『いい』っていったら、あんたも学校に来られるんだけど、どうかなあ」
 ロッキーは、途中までは、耳をピンと立てて神妙に聞いていたけど、説明の終わりのところで、定期を、ちょっと、なめてみて、それから、あくびをした。それでも、トットちゃんは、一生懸命に話し続けた。
 「電車の教室は、動かないから、お教室では、定期はいらないと思うんだ。とにかく、今日は持ってるのよ」
 たしかにロッキーは、今まで、歩いて通う学校の門まで、毎日、トットちゃんと一緒に行って、後は、一人で家に帰ってきていたから、今日も、そのつもりでいた。
 トットちゃんは、定期をロッキーの首からはずすと、大切そうに自分の首にかけると、パパとママに、もう一度、
 『行ってまいりまーす』
 というと、今度は振り返らずに、ランドセルをカタカタいわせて走り出した。ロッキーも、からだをのびのびさせながら、並んで走り出した。
 駅までの道は、前の学校に行く道と、ほとんど変わらなかった。だから、途中でトットちゃんは、顔見知りの犬や猫や、前の同級生と、すれ違った。トットちゃんは、その度に、「定期を見せて、驚かせてやろうかな?」
と思ったけど、(もし遅くなったら大変だから、今日は、よそう……)と決めて、どんどん歩いた。
 駅のところに来て、いつもなら左に行くトットちゃんが、右に曲がったので、可哀そうにロッキーは、とても心配そうに立ち止って、キョロキョロした。トットちゃんは、改札口のところまで行ったんだけど、戻ってきて、まだ不思議そうな顔をしてるロッキーにいった。
 「もう、前の学校には行かないのよ。新しい学校に行くんだから」
 それからトットちゃんは、ロッキーの顔に、自分の顔をくっつけ、ついでにロッキーの耳の中の、においをかいだ。(いつもと同じくらい、くさいけれど、私には、いい、におい!)そう思うと顔を離して、
「バイバイ」
というと、定期を駅の人に見せて、ちょっと高い駅の階段を、登り始めた。ロッキーは、小さい声で鳴いて、トットちゃんが階段を上がっていくのを、いつまでも見送っていた。
回复 支持 反对

使用道具 举报

头像被屏蔽
 楼主| 发表于 2006-4-2 16:00:56 | 显示全部楼层
電車の教室

 トットちゃんが、きのう、校長先生から教えていただいた、自分の教室である、電車のドアに手をかけたとき、まだ校庭には、誰の姿も見えなかった。今と違って、昔の電車は、外から開くように、ドアに取手がついていた。両手で、その取手を持って、右に引くと、ドアは、すぐ開いた。トットちゃんは、ドキドキしながら、そーっと、首を突っ込んで、中を見てみた。
 「わあーい」
 これなら、勉強しながら、いつも旅行をしてるみたいじゃない。網棚もあるし、窓も全部、そのままだし。違うところは、運転手さんの席のところに黒板があるのと、電車の長い腰掛を、はずして、生徒用の机と腰掛が進行方向に向いて並んでいるのと、つり革が無いところだけ。後は、天井も床も、全部、電車のままになっていた。トットちゃんは靴を脱いで中に入り、誰でも腰掛けていたいくらい、気持ちのいい椅子だった。トットちゃんは、うれしくて、(こんな気に入った学校は、絶対に、お休みなんかしないで、ずーっとくる)と,強く心に思った。
 それからトットちゃんは、窓から外を見ていた。すると、動いていないはずの電車なのに、校庭の花や木が、少し風に揺れているせいか、電車が走っているような気持ちになった。
 「ああ、嬉しいなあー」
 トットちゃんは、とうとう声に出して、そういった。それから、顔をぺったりガラス窓にくっつけると、いつも、嬉しいとき、そうするように、デタラメ歌を、うたいはじめた。
 とても うれし
 うれし とても
 どうしてかっていえば……
そこまで歌ったとき、誰かが乗り込んできた。女の子だった。その子は、ノートと筆箱をランとセルから出して机の上に置くと、背伸びをして、網棚にランドセルをのせた。それから草履袋も、のせた。トットちゃんは歌をやめて、急いで、まねをした。次に、男の子が乗ってきた。その子は、ドアのところから、バスケットボールのように、ランドセルを、網棚に投げ込んだ。網棚の、網は、大きく波うつと、ランドセルを、投げ出した。ランドセルは、床に落ちた。その男の子は、「失敗!」というと、またもや、同じところから、網棚めがけて、投げ込んだ。今度は、うまく、おさまった。『成功!』と、その子は叫ぶと、すぐ、「失敗!」といって、机によじ登ると、網棚のランドセルを開けて、筆箱やノートを出した。そういうのを出すのを忘れたから、失敗だったに違いなかった。
 こうして、九人の生徒が、トットちゃんの電車に乗り込んできて、それが、トモエ学園の、一年生の全員だった。
 そしてそれは、同じ電車で旅をする、仲間だった。


今天就到这里了。肩膀快要僵了!明天继续努力!
回复 支持 反对

使用道具 举报

头像被屏蔽
 楼主| 发表于 2006-4-3 18:42:09 | 显示全部楼层
授業 
お教室が本当の電車で、“かわってる”と思ったトットちゃんが、次に“かわってる”と思ったのは、教室で座る場所だった。前の学校は、誰かさんは、どの机、隣は誰、前は誰、と決まっていた。ところが、この学校は、どこでも、次の日の気分や都合で、毎日、好きなところに座っていいのだった。
 そこでトットちゃんは、さんざん考え、そして見回したあげく、朝、トットちゃんの次に教室に入ってきた女の子の隣に座ることに決めた。なぜなら、この子が、長い耳をした兎の絵のついた、ジャンパー・スカートをはいていたからだった。
 でも、なによりも“かわっていた”のは、この学校の、授業のやりかただった。
 普通の学校は、一時間目が国語なら、国語をやって、二時間目が算数なら、算数、という風に、時間割の通りの順番なのだけど、この学校は、まるっきり違っていた。
何しろ、一時間目が始まるときに、その日、一日やる時間割の、全部の科目の問題を、女の先生が、黒板にいっぱいに書いちゃって、\
「さあ、どれでも好きなのから、始めてください」
といったんだ。だから生徒は、国語であろうと、算数であろうと、自分の好きなのから始めていっこうに、かまわないのだった。だから、作文の好きな子が、作文を書いていると、後ろでは、物理の好きな子が、アルコール・ランプに火をつけて、フラスコをブクブクやったり、何かを爆発させてる、なんていう光景は、どの教室でもみれらることだった。この授業のやり方は、上級になるにしたがって、その子供の興味を持っているもの、興味の持ち方、物の考え方、そして、個性、といったものが、先生に、はっきり分かってくるから、先生にとって、生徒を知る上で、何よりの勉強法だった。
また、生徒にとっても、好きな学科からやっていい、というのは、嬉しいことだったし、嫌いな学科にしても、学校が終わる時間までに、やればいいのだから、何とか、やりくり出来た。従って、自習の形式が多く、いよいよ、分からなくなってくると、先生のところに聞きに行くか、自分の席に先生に来ていただいて、納得の行くまで、教えてもらう。そして、例題をもらって、また自習に入る。これは本当の勉強だった。だから、先生の話や説明を、ボンヤリ聞く、といった事は、無いにひとしかった。
トットちゃん達、一年生は、まだ自習をするほどの勉強を始めていなかったけど、それでも、自分の好きな科目から勉強する、ということには、かわりなかった。
カタカナを書く子、絵を描く子。本を読んでる子。中には、体操をしている子もいた。トットちゃんの隣の女の子は、もう、ひらがなが書けるらしく、ノートに写していた。トットちゃんは、何もかもが珍しくて、ワクワクしちゃって、みんなみたいに、すぐ勉強、というわけにはいかなかった。
そんな時、トットちゃんの後ろの机の男の子が立ち上がって、黒板のほうに歩き出した。ノートを持って。黒板の横の机で、他の子に何かを教えている先生のところに行くらしかった。その子の歩くのを、後ろから見たトットちゃんは、それまでキョロキョロしてた動作をピタリと止めて、頬杖をつき、ジーっと、その子を見つめた。その子は、歩くとき、足を引きずっていた。とっても、歩くとき、体が揺れた。始めは、わざとしているのか、と思ったくらいだった。でも、やっぱり、わざとじゃなくて、そういう風になっちゃうんだ、と、しばらく見ていたトットちゃんに分かった。
その子が、自分の机に戻ってくるのを、トットちゃんは、さっきの、頬杖のまま、見た。目と目が合った。その男の子は、トットちゃんを見ると、ニコリと笑った。トットちゃんも、あわてて、ニコリとした。その子が、後ろの席に座ると、――座るのも、他の子より、時間がかかったんだけど――トットちゃんは、クルリと振り向いて、その子に聞いた。
「どうして、そんな風に歩くの?」
その子は、優しい声で静かに答えた。とても利口そうな声だった。
「僕、小児麻痺なんだ」
「しょうにまひ?」
トットちゃんは、それまで、そういう言葉を聴いたことが無かったから、聞き返した。その子は、少し小さい声でいった。
「そう、小児麻痺。足だけじゃないよ。手だって……」
そういうと、その子は、長い指と指が、くっついて、曲がったみたいになった手を出した。トットちゃんは、その左手を見ながら、
「直らないの?」
と心配になって聞いた。その子は、黙っていた。トットちゃんは、悪いことを聞いたのかと悲しくなった。すると、その子は、明るい声で言った。
「僕の名前は、やまもとやすあき。君は?」
トットちゃんは、その子が元気な声を出したので、嬉しくなって、大きな声で言った。
「トットちゃんよ」
こうして、山本泰明ちゃんと、トットちゃんのお友達づきあいが始まった。
電車の中は、暖かい日差しで、暑いくらいだった。誰かが、窓を開けた。新しい春の風が、電車の中を通り抜け、子供たちの髪の毛が歌っているように、とびはねた。
トットちゃんの、トモエでの第一目は、こんな風に始まったのだった。
回复 支持 反对

使用道具 举报

头像被屏蔽
 楼主| 发表于 2006-4-4 18:35:23 | 显示全部楼层
海のものと山のもの 
さて、トットちゃんが待ちに待った『海のものと山のもの』のお弁当の時間が来た。この『海のものと山のもの』って、何か、といえば、それは、校長先生が考えた、お弁当のおかずのことだった。普通なら、お弁当のおかずについて、「子供が好き嫌いをしないように、工夫してください」とか、「栄養が、片寄らないようにお願いします」とか、言うところだけど、校長先生はひとこと、
 「海のものと山のものを持たせてください」
と、子供たちの家の人に、頼んだ、というわけだった。
 山は……例えば、お野菜とか、お肉とか(お肉は山で取れるってわけじゃないけど、大きく分けると、牛とか豚とかニワトリとかは、陸に住んでいるのだから、山のほうに入るって考え)、海は、お魚とか、佃煮とか。この二種類を、必ずお弁当のおかずに入れてほしい、というのだった。
(こんなに簡単に、必要なことを表現できる大人は、校長先生のほかには、そういない)とトットちゃんのママは、ひどく感心していた。しかも、ママにとっても、海と山とに、分けてもらっただけで、おかずを考えるのが、とても面倒なことじゃなく思えてきたから、不思議だった。それに校長先生は、海と山といっても、“無理しないこと”“贅沢しないこと”といってくださったから、山は“キンピラゴボウと玉子焼”で海は“おかか”という風でよかったし、もっと簡単な海と山を例にすれば、“お海苔と梅干”でよかったのだ。
 そして子供たちは、トットちゃんが始めてみたときに、とっても、うらやましく思ったように、お弁当の時間に、校長先生が、自分たちのお弁当箱の中をのぞいて、
「海のものと、山のものは、あるかい?」
と、ひとりずつ確かめてくださるのが、嬉しかったし、それから、自分たちも、どれが海で、どれが山かを発見するのも、ものすごいスリルだった。
でも、たまには、母親が忙しかったり、あれこれ手が回らなくて、山だけだったり、海だけという子もいた。そういう時は、どうなるのか、といえば、その子は心配しないでいいのだった。なぜなら、お弁当の中をのぞいて歩く校長先生の後ろから、白い、割烹前掛けをかけた、校長先生の奥さんが、両手に、おなべをひとつずつ持って、ついて歩いていた。そして先生がどっちか足りないこの前で、
「海!」
というと、奥さんは、海のおなべから、ちくわの煮たのを、二個くらい、お弁当箱のふたに、乗せてくださったし、先生が、\
「山!」
といえば、もう片方の、山のおなべから、おいもの煮ころがしが、飛び出す、という風だったから。
こんなわけだったので、どの子供たちも「ちくわが嫌い」なんて、そんなことは、言わなかったし、(誰のおかずが上等で、誰のおかずが、いつも、みっともない)なんて思わなくて、海と山とが揃った、ということが、嬉しくて、お互いに笑いあったり、叫んだりするのだった。
トットちゃんにも、やっと『海のものと山のもの』が、なんだか分かった。阻止寺、(ママが、今朝、大急行で作ってくれたお弁当は、大丈夫かな?)と少し心配になった。でも、ふたを取ったとき、トットちゃんが、
「わあーい」
といいそうになって、口お押さえたくらい、それは、それは、ステキなお弁当だった。黄色のいり卵、グリンピース、茶色のデンブ、ピンク色の、タラコをパラパラに炒ったの、そんな、いろんな色が、お花畑みたいな模様になっていたのだもの。
校長先生は、トットちゃんのを、のぞきこむと、
「きれいだね」
といった。トットちゃんは、嬉しくなって、
「ママは、とっても、おかず上手なの」
といった。校長先生は、
「そうかい」
といってから、茶色のデンブをさして、トットちゃんに、
「これは、海かい?山かい?」
と聞いた、トットちゃんは、デンブを、ジーっと見て、
「これは、どっちだろう」
と考えた。(色からすると、山みたいだけど、だって、土みたいな色だからさ。でも……わかんない)そう思ったので、
「わかりません」
と答えた。すると、校長先生は、大きな声で、
「デンブは、海と山と、どっちだい?」
と、みんなに聞いた。ちょっと考える間があって、みんな一斉に、「山!」とか、『海!』とか叫んで、どっちとも決まらなかった。みんなが叫び終わると、校長先生は、いった。
「いいかい、デンブは、海だよ」
「なんで」
と、肥った男の子が聞いた。校長先生は、机の輪の真ん中に立つと、
「デンブは、魚の身をほぐして、細かくして、炒って作ったものだからさ」
と説明した。
「ふーん」
と、みんなは、感心した声を出した。そのとき誰かが、
「先生、トットちゃんのデンブ、見てもいい?」
と聞いた。校長先生が、
「いいよ」
というと、学校中の子が、ゾロゾロ立ってきて、トットちゃんのデンブを見た。デンブは知ってて、食べたことはあっても、今の話で、急に興味が出てきた子も、また、自分の家のデンブと、トットちゃんのと、少し、かわっているのかな?と思って、見たい子もいるに違いなかった。デンブを見にきた子の中には、においをかぐ子もいたので、トットちゃんは、鼻息で、デンブが飛ばないか、と心配になったくらいだった。
でも、初めてのお弁当の時間は、少しドキドキはしたけど、楽しくて、『海のものと山のもの』を考えるのも面白いし、デンブがお魚って分かったし、ママは、『海のものと山のもの』を、ちゃんと入れてくれたし、トットちゃんは、(ぜんぶ、よかったな)と、嬉しくなった。そして、次に、嬉しいのは、ママの弁当は、食べると、おいしいことだった。
回复 支持 反对

使用道具 举报

舟行雨 该用户已被删除
发表于 2006-4-5 01:02:23 | 显示全部楼层
提示: 作者被禁止或删除 内容自动屏蔽
回复 支持 反对

使用道具 举报

头像被屏蔽
 楼主| 发表于 2006-4-5 18:45:49 | 显示全部楼层
よく噛めよ

 で、普通なら、これで、「いただきまーす」になるんだけど、このトモエ学園は、ここで、合唱が入るのが、また、変わっていた。校長先生は、音楽家でもあったから、『お弁当を食べる前に歌う歌』というのを作った。ただし、これは、作曲が、イギリス人で、歌詞だけが、校長先生だった。というより、本当は、もともとあった曲に、先生が替え歌をつけた、というのが、正しいのだけれど。もともとの曲は、あの有名な、『船をこげよ(Row Boat)』
 ロー ロー ロー ユアー ボート
 ジェントリー ダウン ザ ストゥリーム
 メリリー メリリー メリリー メリリー
 ライス イズ バット ア ドリーム
で、これに校長先生がつけた歌詞は、次のようだった。
 よーく 噛めよ
 たべものを
 噛めよ  噛めよ  噛めよ  噛めよ
 たべものを

そして、これを歌い終わると、初めて、「いただきまーす」になるのだった。
“ロー ロー ロー ユアー ボート”のメロディーに、“よく、噛めよ”は、ぴったりとあった。だから、この学校の卒業生は、ずいぶんと大きくなるまで、このメロディーは、お弁当の前の歌う歌だ、と信じていたくらいだった。校長先生は、自分の歯が抜けていたので、この歌を作ったのかもしれないけど、本当は、「よく噛めよ」というより、お食事は、時間をかけて、楽しく、いろんなお話しをしながら、ゆっくり食べるものだ、と、いつも生徒に話していたから、そのことを忘れないように、この歌を作ったのかもしれなかった。さて、みんなは、大きな声で、この歌を歌うと、「いただきまーす」といって、『海のものと山のもの』に、とりかかった。トットちゃんも、もちろん、同じようにした。
 講堂は一瞬だけ、静かになった。
回复 支持 反对

使用道具 举报

头像被屏蔽
 楼主| 发表于 2006-4-6 18:29:01 | 显示全部楼层
散歩
 お弁当の後、みんなと校庭で走り回ったトットちゃんが、電車の教室に戻ると、女の先生が、
「皆さん、今日は、とてもよく勉強したから、午後は、何をしたい?」
と聞いた。トットちゃんが、(えーと、私のしたいこと、って言えば……)なんて考えるより前に、みんなが口々に
「散歩!」
といった。すると先生は、
 「じゃ、行きましょう」
といって立ち上がり、みんなも、電車のドアを開けて、靴を履いて、飛び出した。トットちゃんは、パパと犬のロッキーと、散歩に行ったことはあるけど、学校で、散歩に行く、って知らなかったから、ビックリした。でも、散歩は大好きだから、トットちゃんも、急いで靴を履いた。
あとで分かったことだけど、先生が朝の一時間目に、その日、一日やる時間割の問題を黒板に書いて、みんなが、頑張って、午前中に、全部やっちゃうと、午後は、たいがい散歩になるのだった。これは一年生でも、六年生でも同じだった。
学校の門を出ると、女の先生を、真ん中にして、九人の一年生は、小さい川に沿って歩き出した。川の両側には、ついこの間まで満開だった、桜の大きい木が、ずーっと並んでいた。そして、見渡す限り、菜の花畑だった。今では、川も埋め立てられ、団地やお店でギュウヅメの自由の丘も、この頃は、ほとんどが畑だった。
「お散歩は、九品仏よ」
と、兎の絵のジャンパー・スカートの、女の子がいった。この子は、“サッコちゃん”という名前だった。それからサッコちゃんは、
「九品仏の池のそばで、この前、蛇を見たわよ」とか、「九品仏のお寺の古い井戸の中に、流れ星が落ちてるんだって」
とか教えてくれた。みんなは、勝手に、おしゃべりしながら歩いていく。空は青く、蝶々が、いっぱい、あっちにも、こっちにも、ヒラヒラしていた。
十分くらい歩いたところで、女の先生は、足を止めた。そして、黄色い菜の花を指して、
「これは、菜の花ね。どうして、お花が咲くか、分かる?」
といった。そして、それから、メシベとオシベの話しをした。生徒は、みんな道にしゃがんで、菜の花を観察した。先生は、蝶々も、花を咲かせるお手伝いをしている、といった。本当に、蝶々は、お手伝いをしているらしく、忙しそうだった。
それから、また先生は歩き出したから、みんなも、観察はおしまいにして、立ち上がった。誰かが、
「オシベと、アカンベは違うよね」
とか、いった。トットちゃんは、(違うんじゃないかなあー!)と思ったけど、よく、わかんなかった。でも、オシベとメシベが大切、ってことは、みんなと同じように、よく分かった。
そして、また十分くらい歩くと、見たいもののほうに、キャアキャアいって走っていった。サッコちゃんが、
「流れ星の井戸を見に行かない?」
といったので、もちろん、トットちゃんは、
「うん」
といって、サッコちゃんの後について走った。井戸っていっても、石みたいので出来ていて、二人の胸のところくらいまであり、木のふたがしてあった、二人でふたを取って、下をのぞくと中は真っ暗で、よく見ると、コンクリートの固まりか、石の固まりみたいのが入っているだけで、トットちゃんが想像してたみたいな、キラキラ光る星は、どこにも見えなかった。長いこと、頭を井戸の中に突っ込んでいたトットちゃんは、頭を上げると、サッコちゃんに聞いた。
「お星さま、見た?」
サッコちゃんは、頭を振ると
「一度も、ないの」
といった。トットちゃんは、どうして光らないか、お考えた。そして、いった。
「お星さま、今、寝てるんじゃないの?」
サッコちゃんは、大きい目を、もっと大きくしていった。
「お星さまって、寝るの?」
トットちゃんは、あまり確信が無かったから、早口でいった。
「お星さまは、昼間、寝てて、夜、起きて、光るんじゃないか、って思うんだ」
それから、みんなで、仁王さまのお腹を見て笑ったり、薄暗いお堂の中の仏さまを、(少し、こわい)と思いながらも、のぞいたり、天狗さまの大きな足跡の残ってる石に、自分の足を乗せて比べてみたり、池の周りを回って、ボートに乗っている人に、「こんちは」といったり、お墓の周りの、黒いツルツルの、あぶら石を借りて、石蹴りをしたり、もう満足するぐらい、遊んだ。特に、初めてのトットちゃんは、もう興奮して、次から次と、何かを発見しては、叫び声を上げた。
春の日差しが、少し傾いた。先生は、
「帰りましょう」
といって、また、みんな、菜の花と桜の木の間も道を、並んで、学校に向かった。
子供たちにとって、自由で、お遊びの時間と見える、この『散歩』が、実は、貴重は、理科か、歴史か、生物の勉強になっているのだ、ということを、子供たちは気がついていなかった。
トットちゃんは、もう、すっかり、みんなと友達になっていて、前から、ずーっと一緒にいるような気になっていた。だから、帰り道に
「明日も、散歩にしよう!」
と、みんなに大きい声で言った。みんなは、とびはねながら、いった。
「そうしよう」
蝶々は、まだまだ忙しそうで、鳥の声が、近くや遠くに聞こえていた。
トットちゃんの胸は、なんか、うれしいもので、いっぱいだった。
回复 支持 反对

使用道具 举报

您需要登录后才可以回帖 登录 | 注~册

本版积分规则

小黑屋|手机版|咖啡日语

GMT+8, 2024-4-28 22:15

Powered by Discuz! X3.4

© 2001-2017 Comsenz Inc.

快速回复 返回顶部 返回列表