今から千七百年ほど前のこと。 |
船で長江を上り、蜀へ攻め込もうとする軍隊があった。 |
川の両岸には切り立った山々が連なっている。 |
そこで、兵士の一人が小猿を捕まえた。鳴き声に気づいた母猿が一目散に駆けたが、小猿はすでに船の中であった。母猿はあきらめない、岸をつたってどこまでも追っていく。悲しげに叫ぶ |
母猿の声は山々にこだました。まるで、子を案じ号泣する母の姿、そのものである。百里余りも追いかけ、母猿はついに船へ跳び込んだが、そのまま息が絶えてしまった。 |
兵士たちが母猿の腹を裂いてみると、腸がズタズタにちぎれていたという。どれほど子供がかわいかったことか・・・ |
軍を指揮していた武将・恒温はこの話を聞いて怒り、その男を罷免したという。 |
「はらわたがちぎれるほどの悲しい思い」を「断腸の思い」というようになったのは、ここからといわれる。 |
Powered by Discuz! X3.4
© 2001-2017 Comsenz Inc.