暑い日が続く中、一番やりたいことは海へ飛び込むしかないだろう。会社の福利厚生施設の中のひとつ、和歌山の白浜に無料で泊まれるマンションを設けている。白浜方面では、アドベンチャーワールド、白良浜ビーチなど、いろんな観光地があるので、毎年行く人いっぱいだった。特に8月に、申し込みの人があまりにも多すぎるため、フェアな決め方として、くじ引きをすることになる。今年も予想通り、マンションを利用したい人が多すぎて、結局また阿弥陀くじで決めるかなかった。くじ引きに弱い私はもちろん自分があたるとは望んでなかった。。結果、やはりハズレだった。あたったのは同じグループのFTさんだった。FTさんは50歳ぐらいの優しいおばちゃんで、旦那さんは10年ほど前、癌で亡くなられ、今はIT関係の仕事をされてる息子さんと二人暮らしをしている。息子は自分の命よりも大切な宝物。休みの日は、殆ど息子と一緒に過ごす。息子が付き合いで外出した時は、家で一人で息子の帰りを待つ。彼女ができるまでに息子といろんなところへ遊んでいきたい、そしていろんな美味しいものを食べて、思い出をいっぱい作りたいとよく私に言ってくれた。それを聞いた私が、毎日ニコニコして、悩み事なんか一切なさそうなFTさんは、実はこんなに寂しい人だったことが初めてわかった。
あっ、話が遠くなっちゃった本題に戻りましょう。あれっ!?どこまで話したっけ。。くじ引きだね。。
くじに当たったFTさんは超~~嬉しくて、すぐに電話で息子に知らせた。5分後、FTさんが席に戻ってきた。相変わらず、爽やかな仕事ぶりだった。
"いいですね、また息子さんとデートができて、嬉しいでしょう”と私はFTさんに冗談で言った。
"ええ、一緒に☆#%$&。。いいですね!”とFTが独り言みたいな声だった。
五時、仕事を終え、帰る用意をしている私にFTさんが寄ってきた"ねぇ、来週の予定はあるの?”
"いえ、今のところは特にないんですけど。”
"よかった、じゃあ、彼氏と一緒に白浜でも行かない?”
"え!マジで!譲ってもらえるの?”と喜びを隠せなかった私がついタメ口だった。。ずっと海へ行きたかったの(100%の金槌だけど)念願のついに。。。
"もちろんよ、彼氏といって頂戴!”
"ありがと~~おかあちゃん大好き!”ふっと考えてみると、くじをあたった当時のFTさんは超~嬉しかったのに、どうして譲ってくれるの
FTさんも私の配慮を気づいてくれたみたい"大丈夫よ、行ってください、息子は来週ゴウコンの予定があるから、いけないの。私は息子じゃないと絶対行きたくないから。だから、海を楽しんできて頂戴ね。”
それを聞いた私は何も言えなかった。あんなに楽しみにしていたのに、今はきっとすごく落ち込んでるだろう。何かを言ってあげたい気持ちがいっぱいだったけど、慰め下手な私はただありがとうありがとうしか言えなかった。
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