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日志

日本語(第八冊)^^八

已有 931 次阅读2008-7-3 22:42 |个人分类:日语学习|

鉴于《第七课》不考,就不传上来了。
 
 

 

第八課 断腸亭日乗

 

二月廿五日 日曜日。朝十一時半、起きいづるに三日前のごとくこまかき雪ふりゐたり。飯たかむとする時隣人雪を踏んで来たり、午後一時半米国飛行機何台とやら襲来するはずなれば用心せよ、と告げて去れり。心何となく落ちつかねば、食後秘蔵せし珈琲をわかし砂糖惜し気なく入れ、パイプにこれも秘蔵の西洋(たばこ)をつめ徐に煙を喫す。若しもの場合にもこの世に思ひ残すこと無からしめむとてなり。とかくするほどに、隣家のラジオにつゞいて砲声起こり硝子(ガラス)戸をゆすりしが、雪ふる中に戸外の穴には入るべくもあらず、夜具棚の下に入りてさまざまのこと思ふともなく思ひつゞくるうち、門巷(もんかう)やうやく静かになり、やがて警戒解除と呼ぶ人の声す。時計を見るに午後四時にて屋内既に暗し。窓外も雲低く空をおほひ音もなく雪のふるさま、常に見るものとは異なり物凄さ限りなし。平和の世に雪を見ればおのづから芭蕉の句など想起し、又曾遊のむかしを思ひ返すが常なるに、今日ばかりは世の終はりまた身の終はりの迫り来れるを感ずるのみ。再び台所に行き今朝炊(かし)ぎし飯の残りをあたゝめ、人よりもらひし麩を煮て夕餉(ゆうげ)を食す。燈下読み残しの巴里の古雑誌をひらきよむほどに、十時ごろまたもや警報ありしがこの度は砲声を聞かず。風吹きいで庭樹(にはき)の梢より雪の落つる響きして夜は沈々とふけゆきぬ。

 

三月九日 天気快晴、夜半空襲あり、翌暁(よくぎょう)四時わが偏奇焼亡す。火は初め長垂坂(なだれざか)中ほどより起こり、西北の風にあふられたちまち市兵衛町二丁目表通りに延焼す。余は枕元の窓、火光を受けてあかるくなり隣人の叫ぶ声のたゞならぬに驚き、日誌及び草稿を入れたる手革包(かばん)を提げて庭にいでたり。谷町辺にも火の手の上がるを見る。又遠く北方の空にも火光の反映するあり、火星は烈風に舞ひ紛紛として庭上に落つ。余は四方を顧望し、たうてい禍ひを免(まぬがる)るゝことあたはざるべきを思ひ、早くも立ち迷ふ煙の中を表通りに走りいで、木戸氏が三田聖坂(みたひじりざか)の邸(やしき)に行かむと角の交番にて我善坊より飯倉(いひくら)へ出る道の通行しうへきや否やを問ふに、仙石山神谷町(せんごくやまがみやちやう)辺焼けつゝあれば行くこと難かるべしと言ふ。道を転じて永坂にいたらむとするも途中火ありて行きがたき様子なり。時に七、八歳なる女の子老人の手を引き道に迷へるを見、余はその人々を導き、住友邸の傍らより道源寺(だうげんじ)坂を下り谷町電車通りにいで溜池の方へと逃しやりぬ。余は山谷町(さんやちやう)の横町より霊南坂(れいなんざか)上にいで西班牙公使館側の空地に憩ふ。下弦の織月凄然として愛宕(あたご)山の方に昇るを見る。荷物を背負ひて逃げ来る人々の中に平生顔を見知りたる近隣の人も多くうちまじりたり。余は風の方向と火の手とを見計り、逃ぐべき路の方角をもやや知ることを得たれば、麻布(あさぶ)の地を去るに臨み、二十六年住み馴れし偏奇館の焼け倒るるさまを心のゆくかぎりながめ飽かさむものと、再び田中氏邸の門前に歩みもどりぬ。巡査兵卒宮家の門を警(いま)しめ道行く者をさへぎり止むるゆゑ、余は電信柱または立ち木の幹に身をかくし、小径のはづれに立ち、わが家の方をながむる時、隣家のフロイドル=スペルグル氏褞袍(どてら)にスリッパをはき帽子もかぶらず逃げ来るに逢ふ。崖下より飛び来たりし火にあふられその家今まさに焼けつゝあり、君の家も類焼を免れまじと言ふうち、わが門前の田島氏そのとなりの植木屋もつゞいて来たり、先生のところへ火がうつりしゆゑもうだめだと思ひ各その住家を捨てゝ逃げ来たりし由を告ぐ。余は五、六歩横町に進み入りしが、洋人の家の樫(かし)の木と余が庭の椎(しひ)の大木炎々として燃え上がり黒煙風に渦巻き吹きつけ来るに辟易(へきえき)し、近づきて家屋の焼け倒るゝを見定むることあたはず、ただ火焔の更にいちだん烈しく空に上がるを見たるのみ、これ偏奇館楼上少なからぬ蔵書の一時に燃ゆるがためと知られたり。火はしだいにこの勢ひに乗じ表通りへ焼け抜け、住友、田中両氏の邸宅も危ふく見えしが、兵卒出勤し宮様門内の家屋を守り防火につとめたり。蒸気ポンプ二、三台来たりしはやうやくこの時にて、発火の時より三時間ほどを経たり。消防夫路傍の防火用水道口を開きしが、水切れにて水いでず、火は表通り曲がり角まで燃えひろがり人家なきためこゝにて鎮まりし時は、空既に明るく夜は明け放れたり。

 

 三月十日 町会の男来たり、罹災(りさい)のお方は焚きだしがありますから仲の町の国民学校にお集まりくださいと呼び歩む。行きて見るに、向かひ側なる歯科医師岩本氏及びその家人の在るに逢ふ。握り飯一個を食ひ茶を喫するほどに旭日輝きそめしが、寒風は昨夜に劣らず今日もまた肌を切るがごとし。余はひとまづ代々きなる杵屋(きねや)五叟(ごそう)の家にいたり身の処置を謀らんと三河台電車停留場に至りしが、電車の運転する様子もなし。六本木の交番にてきくに青山一丁目より渋谷駅までは電車ありとのことに、その言ふごとく渋谷に行きしが、省線の札売り場は雑沓(ざったふ)して近寄ることあたはず、寒風に吹きさらされ路上に立ってバスの来るを待つこと半時間あまり、午前十時過ぎやうやくにして五叟の家にたどりつきぬ。一同と共に昼飯を食す。飯後五叟は二児をつれ偏奇館焼け跡を見に行き、余はこたつに入りて一睡す。昨夜路上に立ちつゞけし後、革包を提げ青山一丁目まで歩みしなれば、筋骨痛み困憊はなはだし。嗚呼(ああ)余は着のみ着のまゝ家も蔵書もなき身とはなれるなり。余は偏奇館に隠棲し文筆に親しみしこと数ふれば二十六年の久しきに及べるなり。されどこの二、三年老いの迫るにつれて日ゝ掃塵(さうぢん)掃庭の労苦に堪へやらぬ心地するにいたりしが、戦争のため下女下男の雇はるゝ者なく、園丁は来たらず、過日雪のふり積もりし朝などこれを掃く人なきに困り果てし次第なれば、むしろ一思ひに蔵書を売り払ひ身軽(みがる)になりアパートの一室に死を待つにしかずと思ふこともあるやうになり居たりしなり。昨夜火に遭ひて無一物となりしはかへって老後安心の基なるやまた知るべからず。されど三十余年前欧米にて購(あがな)ひし詩集小説座右の書卷今や再びこれを手にすることあたはざるを思へば愛惜の情いかんともなしがたし。昏暮、五叟及びその二子帰り来たり、市中の見聞を語る、大略次のごとし。

 昨夜猛火はほとんど東京全市を灰になしたり。北は先住より南は芝田町に及べり。浅草観音堂、五重塔、公園六区見世物町焼亡、芝増上寺及び霊廟(れいべう)も烏有(ういう)に帰す、明治座に避難せしものことごとく焼死す。本所深川の町々、亀井戸天神、向嶋一帯すべて烏有となれりといふ。

 午前二時に至り寝に就く。灯を消し眼を閉づるに火星粉々として暗中に飛び、風声啾々として鳴りひゞくを聞きしが、やがてこの幻影もしだいに消え失せ、いつか眠りにおちぬ。

 

 六月初三 列車中の乗客われ人ともに列車進行中空襲の難に遭はむことを恐れしが、幸ひにもその厄なく午前六時過ぎ京都駅七条の停車場に安着す。夜来の雨もまた晴れ涼風習々たり。直ちに明石(あかし)行き電車に乗り換へ大坂、神戸の諸市を過ぎ明石に下車す。菅原君に導かれ歩みて大蔵町八丁目なるその邸に至り母堂に謁(えっ)す。邸内には既に罹災者の家族の来たり寓するもの多く空室なしとのことに、三、四丁隔たりたる真宗の一寺院西林寺といふに至り、当分こゝに宿泊することになれり。西林寺は海岸に櫛比(しっぴ)する漁家の間に在り、書院の緑先より淡路を望む、海波洋々マラルメがが『牧神の午後』の一詩を思ひ起こさしむ、港湾一帯の風景古来人の絶賞するところに背かず。殊に余の目をよろこばすものは西林寺の墓地の波打ち寄する石垣の上に在ることなり。墓地につゞき数頃の菜園崩れたる土墻(どしゃう)をめぐらしたるあり、蔬菜の青々と茂りたる間に夏菊、芥子の花の咲けるを見る。これまた海を背景となしたる好個の静物画ならずや。余明治四十四年湘南逗子(ずし)の別墅を人に譲りてより後三、四十年の間、一たびも風光明媚なる海辺に来たり遊ぶの機会を得ず。しかるに今図らずもこの明石に来たり、その静閑(せいかん)なること雨声のごとき濤声をきゝ、心耳を澄ますこと得たり。何らの至福ぞや。西林寺の主人は年四十あまりなる未亡人にして、言語快活、談話に巧みにして俗客の来たることを厭(いと)はざるがごとし。吾ら三人を客間に迎へ直ちに昼飯をつくり、夕刻にはまた晩食の後風呂を焚(た)き、余らをして一浴羇旅の疲労を洗ひ去らしむ。夜十二時菅原君夫婦と枕を並べて寝に就きぬ。

 

 

 

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雷人

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路过

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发表评论 评论 (4 个评论)

回复 jordan2007 2008-7-5 21:03
高级日语2中有几课不考啊?我怎么听有人说是第8课以后包括第8课都不考啊?你知道吗?
回复 qianqianli0912 2008-7-5 21:28
jordan2007: 高级日语2中有几课不考啊?我怎么听有人说是第8课以后包括第8课都不考啊?你知道吗?
第八课应该要考的吧~~不过这是两年前……あした、学校に行くから、誰かに聞いてみるわ。
回复 jordan2007 2008-7-14 07:56
どうもありがとうございました。
回复 shnhxswf 2009-9-15 14:05
ちょっとお願いことがあります。
下記の単語を中国で説明してもらえませんか。
★ 入るべくもあらず
★ かんしゃくに触る
★ 起きいづつに
★ なさきだに
★ なかるべからず
★ あきずしかみつく
★ 手におえない「棘手,没办法,管不了」
★ 家にたどりつきぬ

辞書を調べても適当な言葉が見つかりません。
よろしくお願いします。

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