热度 18|
長い出張を終え、中山に戻るのにはや一週間後だった。行きも帰りも慌しければ、すれ違いもまた赤の他人ばっかり。
飛行機乗りに、バスのり、そして地下鉄に潜っても、街を歩いても、見知らぬ人の顔だけが移り変わる。
私は、単身赴任!出張と言っても、見送りもいなければ、出迎えもいない。
なれれば、それは又それほど悪くない。少なくとも、自由自在は私の友だ。
そう達観したものの、旅の最後の最後に、感無量に襲われた。
それは、中山ゆきのばすが最後の角を曲がるときの事であった。
それまでうたた寝している乗客は、一斉に騒ぎ出し、電話を掛け始めた、
何処何処に着き、何処何処に待ち合わせ、
家族が、恋人が、友達が、ビジネス相手がと、待つ人いろいろ。
おみやげを申告するのもいれば、晩飯のリクエストをし始めるのもいる。
若いのはバスが止まる前に荷物を下ろし始める。
子供はリュックを背負って大人の手を懸命に振り払う。
あっという間にバスが市場に様変わりする。
私はたった一人
傍からこの光景を斜めに見つめている。
ひとつだけ皆と同じ接待を受けたのはある、白タクのお兄さんからの客引きだっだ。
やっぱり、帰りを待ってくれる人がいるのもひとつの贅沢なのだ、
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