23.「~(よ)う」
1)「~(よ)う」の意味
「意向形」とも-(y)oo form、volitional formとも呼ばれます。丁寧形は「~ましょう」で、次の
ように話し手一人だけの意志を表す場合(1)と、話し手を含めた複数人の意志を表す場合(2)があります。
(1)(独り言として)「今年はだめだったけど、来年はがんばろう。」
(2)さあ、あと少しで終わるから、みんながんばろう。
学習者はLet’s~と結び付けやすいためか(2)はすぐ使えますが、(1)は主に、独り言に使われるので、なかなか理解しにくいようです。
(2)は、話し手たちの意志を表しますが、当人同士への誘い・勧誘、促しを表しています。
2)「~(よ)う」意向形の作り方
「意向形」、つまり意志を表す形(「しよう」「食べよう」など)が作れるのは、意志動詞だけです。無意志動詞(「つく」「あく」「しまる」など)は意向形
(「?つこう」「?あこう」「?しまろう」)が作れないので、→作れません。
意志動詞・無意志動詞の区別がつきにくい学習者には意志動詞を意向形にするように注意させてください。(→指導法になっています。「~が作れません。」でとどめておいていいのではないでしょうか。)
我々ネイティブは、ある動詞が意志動詞か無意志動詞かを区別したいとき、動詞を「意向形」にして判断することが多いです。(→これはないほうが、ポイントがはっきりすると思います。)
ところで、学習者にとって、「意向形」の作り方は難しいようです。
動詞のグループごとに活用の規則が異なる上、他の活用形(特に命令形)との混乱が起こります。次に、「意向形」を示します。
Ⅰグループ(五段)動詞 |
Ⅱグループ(一段)動詞 |
Ⅲグループ(不規則)動詞 |
行く 行こう |
食べる 食べよう |
くる こよう |
急ぐ 急ごう |
見る 見よう |
する しよう |
飲む 飲もう |
いる いよう |
|
遊ぶ 遊ぼう |
| |
とる とろう | ||
会う 会おう | ||
話す 話そう |
●~(よ)うと思う
「~(よ)う」だけでは、(1)のように独り言になってしまうので、相手に意志を伝えるときは
(3)のように「~(よ)う」に「と思う/思います」をつける必要があります。
(3)A:帰りませんか。
B:いや、もう少し残って仕事をしようと思います。
「意向形+と思う」は話し手自身の現時点の意志を聞き手に伝える表現です。「と思う」が付い
ているので、I think~と考えがちですが、むしろ、「~(よ)うと思う」全体で話し手の意志や
希望を表すと考えてください。
学習者は自分の意思表示に対して、「私はあした東京へ行くと思います。」と「辞書形+と思う」を使いたがることがあるので、注意させてください。
話し手の意志を聞き手に伝えるときには「辞書形+思う」(すると思う)ではなく、「意向形+と思う」((よ)うと思う)の形をとらなければなりません。
「~しよう」も「~しようと思う」も現時点での話し手の意志の表明なので、もっぱら肯定の形で用いられます。
否定の意志を表すためには、次のように少し複雑な表現をしなければなりません。
(4)A:出かけませんか。
B:ちょっと風邪気味なので、きょうは出かけないでおこうと思います。
「~(よ)うと思う/思います」の他に、「~(よ)うと思っている/思っています」という言い方があります。
「と思う」はその場で下した判断を表し、「と思っている」は一定期間思考が継続していることを表します。しかし、「~(よ)う」「~(し)たい」のような意志や希望がどの程度の時間幅を
持つかは、個人の主観によるところが大きいので、個人の判断によってどちらを使ってもいいと
いうことになります。
●「~(よ)うと思う」の指導法
「意向形」と「命令形」の混同はⅡグループ動詞に多く見られます。「食べよう」が「食べろう」、「寝よう」が「寝ろう」、「見よう」が「見ろう」になります。Ⅰグループでは、「帰ろう」が「帰よう」「帰ろ」になります。多くの学習者には短母音(ろ)と長母音(ろう)の聞き分けが難しいために、「帰ろ」と「帰ろう」の区別がつきません。
また、「ろう」と「よう」も似た音であるために混同してしまいます。一回きりにしてしまわないで、授業で何度も取り上げ、聞き分けの練習をしてください。意向形の指導に坂本九の「上を向いて歩こう」を教えるのもいい方法です。多くの学習者はメロディを知っているので、楽しく覚えられると思います。
ところで、意志を表す表現として、意志表現の意向形や「意向形+と思う」を覚えさせようと、それだけを練習させていませんか。意志を表す表現には他にもいくつかあることを、練習を通してわからせてください。
「沖縄へ行く」を取り上げてみましょう。
(質問)A:今度の連休はどちらかお出かけですか。
B:ええ、沖縄へ行きます。
沖縄へ行こうと思っています。
沖縄へ行きたいと思っています。
沖縄へ行く予定です。
沖縄へ行くつもりです。
このように、すでに習った表現を織り交ぜて、練習させてください。
また、上の例の場合、どこへも行かないときはどう答えればいいでしょうか。
(質問)A:今度の連休はどちらかお出かけですか。
B:いえ、どこへも行きません。
いや、特に予定はありません。
いや、まだ考えていません。
いえ、うちにいようと思っています。