27.「~ようだ」
根拠にもとづいて話し手が判断し、想像する言い方には前回取り上げた、様態「~そうだ」のほかに、「~ようだ」「~らしい」「~そうだ(伝聞)」などがあります。今回は、推量を表す「~ようだ」を取り上げます。また、話しことばで使われる「~みたいだ」についても少し触れたいと思います。
●「~ようだ」の作り方
「~ようだ」はその前に「動詞」「い形容詞」「な形容詞」「名詞(+だ)」の普通形をとります。ただし、「な形容詞」と「名詞(+だ)」の非過去・肯定での接続の形に注意が必要です。
動詞 |
い形容詞 |
行く 行かない +ようだ 行った 行かなかった |
痛い 痛くない +ようだ 痛かった 痛くなかった |
な形容詞 |
名詞+だ |
元気な 元気じゃ/ではない +ようだ 元気だった 元気じゃなかった |
休みの 休みじゃ/ではない +ようだ 休みだった 休みじゃなかった |
●「~ようだ」の意味用法
「~ようだ」は日本語で比較的よく使われる形式です。一般には、ある根拠にもとづく想像を表すと言われていますが、他にもいくつかの用法があり、ここでは大きく「推量」「例示」「比喩」に分けて見ていきます。
●推量「~ようだ」
約束の時間がとっくに過ぎたのに田中さんがまだ来ないとします。「時間がとっくに過ぎた」、「こんなに遅いのだから」という根拠にもとづいて、「もう来ない」という推測ができます。
また、田中さんの来るべき方角を見ても、道路を見ても、人の来る気配が全くないとします。そうすると、そのような情報が根拠になって、「もう来ない」という推測もできます。
そして、次のような発話が出てきます。
(1)田中さんは今日は来ないようだ。
このように「~ようだ」は体験的・経験的判断に基づいた話し手の推量を表します。
(2)は過去の事柄に対する話し手の推量を表しています。
(2)田中さんはゆうべ家に帰らなかったようだ。
また、第3者の考えや気持ち、行動を伝えるときは、文末に「~ようだ」「~らしい」などを付ける必要があります。
(3)a.?彼は合格してうれしい。
b.彼は合格してうれしいようです。
「~ようだ」は、現実の状況をはっきり断定せず、話し手自身の感覚を表すため、はっきり断定するのがためらわれる場合や、失礼を避けるためによく使われます。
●例示「~ようだ」
例を示す例示の用法には次のようなものがあります。
(4)私が言うようにしてください。
(5)前にも話しましたように、今年は生産量を増やしたいと思っています。
(6)結果をグラフにすると、次のようになる。
(7)あなたのような人は、もう嫌いです。
「~ようだ」の前には(4)のように普通形が来る場合と、(5)のように丁寧形が来る場合があります。
また、例示の「~ようだ」、また、次に述べる比喩の「~ようだ」には、「~ような+名詞」の形(連体修飾用法)や、「~ように+動詞」の形(連用修飾用法)を作ることができます。上の(4)~(6)は連用修飾の、(7)は連体修飾の例です。
しかし、推量の「~ようだ」にはこのような連体・連用修飾の用法はありません。
●比喩「~ようだ」
文法で、他のものにたとえて言う言い方を比喩と言います。「~ようだ」「~みたいだ」を付けて表します。名詞に付く場合は「~のようだ」に、また、動詞につく場合は(8) (9)のように「普通形+ようだ」、または、(10)のように「普通形+かのようだ」となります。
(8)あなたに会えるなんて、まるで夢のようだ。
(9)彼女は死んだように眠り続けた。
(10) 彼はその場にいたかのように事件について話していた。
● 「~みたいだ」
「~ようだ」の口語体として「~みたいだ」が使われます。意味用法は「~ようだ」と同じですが、改まった場や書きことばでは、「~みたいだ」を使うとくだけた印象を与えるので、注意が必要です。
次の(11)(12)の「~みたいだ」は推量を、(13)(14)は例示を、(15)~(17)は比喩を表します。
(11)彼は今日は来ないみたいだ。
(12) 彼女はもう出かけちゃったみたいです。
(13) あなたみたいな人は大嫌い!
(14) あなたみたいに文句ばかり言っていると、嫌われるよ。
(15) この方は私の、日本でのお母さんみたいな人です。
(16)(星を見て)あー、ダイヤモンドみたい。
(17) 彼女は子供みたいに泣きじゃくった。