47.「~が・~けれども」
「~が・~けれども」は次のような文の形をとります。
が、
前文 けれども、 後文 (文末)
「~が」と「~けれども」は置き換え可能な場合が多いですが、「~が」は
やや改まった硬い言い方で、書きことばに用いられます。話しことばの場合、普通体に
「が」を用いると、男性の言葉遣いになります。
一方、「~けれども」は普通体で用いられると「~が」より、話しことば的でくだけた
感じになりますが、丁寧体の中で用いられると、くだけた感じは
なくなります。「~けれども」が短縮した「~けれど」「~けど」は、より
話しことば的になります。
「~が・~けれども」は2文を接続する形で、逆接や対比を表しますが、
そのほかに、前置きとして話題を持ち出す役割をしたり、発話の終わりで
ことばを濁すことに使われたりします。
●2文接続の「~が・~けれども」
1)逆節を表す「~が・~けれども」
次の(1) (2)のように、前文から予測されることとは違った結果が後文に
表されることを逆接の関係にあると言います。
(1)図書館で調べたが、わからなかった。
(2)野菜は嫌いですけれども、がんばって食べています。
「~が・~けれども」の文は(3)(4)のように「丁寧体+が/けれども、丁寧体」」「普通体+が/けれども、普通体」の形で用いられます。
(3) 図書館で調べましたが、わかりませんでした。
(4) 野菜は嫌いだけれど、がんばって食べている。
2)対比を表す「~が・~けれども」
逆接と対比の区別は難しいですが、対比は前文と後文で反対のことが述べ
られてはいても、特に因果関係(原因・理由と結果の関係)がありません。次の例を見てください。
(5)とり肉は食べるが、牛肉は食べない。
(6)ひらがなはやさしいけど、カタカナは難しい。
対比を表す場合、対比されるもの(「とり肉」と「牛肉」、「ひらがな」と
「かたかな」)は、取り立て助詞「は」をとることが多いです。
次の(7)の「おもしろくて難しい」(並列関係)と「おもしろいが難しい」(対比関係)の混乱も、対比と関わるものです。
(7)A:日本語はどうですか。
B:a.おもしろくて、難しいです。
b.おもしろいですが、難しいです。
(7)Bのaもbも間違いではありません。しかし、人の評価・判断から見たとき、
「おもしろい」がプラス評価であるのに対し、「難しい」はマイナス評価です。日本語
ではプラス・プラス評価、または、マイナス・マイナス評価のときは並列表現(「~て」「~し」など)で、プラス・マイナス評価、または、マイナス・プラス評価のときは対比表現「~が・~けれども」「~のに」など)で表すことが普通です。
(8)a.日本語はやさしくて、おもしろいです。
+ +
b.日本語は難しくて、複雑です。
- -
(9)a.日本語はおもしろいですが、難しいです。
+ ―
b.日本語は難しいですが、おもしろいです。
- +
3)前置きを表す「~が・~けれども」
次の例のように、話の切り出しに「~が・~けれども」が使われます。
これによって1つの話題が会話の中に導入されることになります。
(10)A:午後の会議のことなんですけど。
B:はい、何ですか。
A:10分ばかり遅れますけど、よろしいでしょうか。
(11)(ディスカッションで)
A:さっきBさんが出された意見についてなんですが、反対意見を述べたいと思います。
B:はい、どうぞ。
前置きとして、話題を持ち出す「~が・~けれども(「けど」となることが
多い)」は「の(ん)だ」と結び付いて、(10)(11)のように「~(な)ん
ですが(けど)」として用いられることが多いです。
4)終助詞的な「~が・~けれども」
多くは文の終わりに付けて、ことばを濁したり、言いよどんだりするときに用いられ
ます。
(12)(電話で)もしもし、小林と申しますが。
(13)A:お金、お借りできますか。
B:そんなこと言われても困るんですけど。
ことばを濁す(終助詞的な)「~が・~けれども」は、話題を持ち出す場合と同じく、
「の(ん)だ」と結び付いて、「~(な)んですが(けど)」として用いられることが
多いです。