●時間関係を表す「~とき」
一つの出来事の時間と、もう一つの出来事の時間の関連を表す従属節の代表的なものが、
ここで取り上げる「~とき」です。
とき、
前文 後文 (文末)
時間関係を表す従属節 主節
「~とき」は「ある時点」を表しますが、次のように時間の前後関係や一定の時間・期間を
表すこともあります。
(1)食べるとき、くちゃくちゃ音を立てるな。(その時点、そのとき)
(2)食べるとき、お祈りする。(=食べる(直)前に)
(3)食べたとき、お祈りする。(=食べたあとで(直後))
(4)食べているとき、テレビを見る。(=食べている間・最中)
主語については、他の従属節と同じく、基本的には「が」をとります。
(5)父が帰ってきたとき、母はいなかった。
●「~とき」の特徴
「~とき」で問題になるのは、「~とき」の前に来る動詞や形容詞の形、「~とき」の前と
主節文末のテンス・アスペクトの関係、それに、「~とき」のうしろに「に」「は」などの
助詞が来るときの意味の違いです。
1)「~とき」の前に来る語の形
「とき」は(形式)名詞なので、前に来る動詞・形容詞などは連体修飾の形をとります。
動詞 | い形容詞 | な形容詞 | 名詞+だ |
行く 行かない +とき 行った 行かなかった | 忙しい 忙しくない +とき 忙しかった 忙しくなかった | 元気な 元気じゃ/ではない +とき 元気だった 元気じゃなかった | 休みの 休みじゃ/ではない +とき 休みだった 休みじゃなかった |
2)「~とき」の前と主節文末のテンス・アスペクトの関係
(6)
北海道へ行くとき、セーターを買った。(7)
北海道へ行ったとき、セーターを買った。
(6)(7)において、話し手はどこでセーターを買ったのでしょうか。
(6)は「行くとき」ですから、「
北海道へ行く」という行為がまだ完了していないときに、したがって「北海道へ行く前に」セーターを買ったことになります。一方、
(7)は、「行ったとき」ですから、「北海道へ行く」ことが完了した時点、つまり、
「北海道へ行ったあとで」セーターを買ったことになります。
これは、主節の文末が完了の「買った」ではなく未完了の「買う」でも同じことです。
(8)
北海道へ行くとき、セーターを買う。(9)
北海道へ行ったとき、セーターを買う。
話し手はまだセーターを買っていません。いつ買うかというと、(8)では「
北海道へ行くとき」、つまり、「北海道へ行く前」です。また、(9)では「北海道へ行った
とき」、つまり、「北海道へ行ったあとで」買うことになります。
このように「~とき」の前の動詞・形容詞のテンス・アスペクトは、主節の時間とは無関係に、
「~とき」の前の事柄が完了したか否かによって決まることになります。
3)「~とき」「~ときに」「~ときは」「~ときには」
(10)子供のときに、よく川でザリガニをとった。
(11)子供のときは、みんないたずらで楽しかった。
(10)の「~ときに」は何かをした、何かが起こったというように動作・変化が起こった
時点を表します。「1月1日に」「3時に」の「に」が「時間」の一点を表すのと同じ働き
です。
(11)の「~ときは」は「~ときには」とほぼ同じ意味用法を持ちます。
「~ときは」は取り立て助詞「は」の働きで、「~とき」が取り立てられて、その時のことが
主題(トピック)になったり、他の時と比べるという対比の意味が含まれたりします。
(11)では、「子供のとき」を思い出して(主題にして)、話し手の判断や気持ちを述べています。
(12)a.登り始めのときは明るかったのに、頂上に着いたときには、とっぷり日が暮れていた。
b.登り始めのときに明るかったのに、頂上に着いたときに、日が暮れ始めた。
(12)では「登り始め」と「頂上に着いたとき」を対比的に比べているので、「ときに」ではなく)「とき(に)は」が自然になります。
「~ときに」「~ときは」の代わりに、(13)のように「~とき」も使うことができます。
これは話しことばで用いられることが多いです。
(13)子供のとき、よく川でザリガニをとった。
みんないたずらで楽しかった。
「~とき」のうしろに「に」や「は」が来て、「~ときに」「~とき(に)は」になる場合を
取り上げましたが、「~とき」は名詞であるので、それ以外にもいろいろな助詞を伴います。
それは「~とき」節が文の中でどのような構成要素(目的語、主語など)になっているかに
よって決まります。
(14) 相手が油断したときが攻めるときだ。
(15) 今お金がないので、払うのは今度来たときでもいいですか。
(16) この間会ったときから、彼女のことが忘れられない。
(17) また会うときまで、お元気でお過ごしください。
(18) この間会ったときより、元気そうですね。
「~とき」を習いたてのときは、このような使い方は学習者には難しいですが、中級、上級に
行くにしたがって、固定された形でなく、句や節として文の中で自由に使う練習を取り入れたいものです。