53.「~たら」
8課と9課で「~と・~ば・~たら・~なら」についてのご質問を取り上げました。
今回からしばらく、それぞれについていっしょに考えていきたいと思います。
●条件文について
前文が何らかの要因・きっかけとなって後文を制約する文を条件文と呼びます。条件を表すものには次の「たら」「と」「ば」「なら」があります。
たら、
前文 と、 後文 (文末)
条件を表す従属節 ば、 主節
(条件節) なら、
条件文について考えるとき、まず、非過去か過去かに分けることが大切です。非過去か過去かというのは、その事態が過去に起こったか否かということです。
非過去:(1)宝くじに当たったら、何でも買ってやるよ。
(2)時間があれば、よくドライブに行く。
(3)ボタンを押すと、ベルが鳴る。
過去:(4)ジムに行ったら、山田さんに会った。
(5)時間があれば、よくドライブに行った(ものだ)。
(6)ボタンを押すと、ベルが鳴った。
非過去のうち、(1)のように、事態が実際に起こるか起こらないかはわからない条件を仮定条件、(2)(3)のように、いつもその事態が起こる条件文を一般条件と言います。また、(4)~(6)のように、もう事態が起こった条件文を確定条件と言います。
●「~たら」の意味用法
1.非過去の場合
「~たら」の非過去の用法は次の通りです。
1)仮定条件(実際に起こるかどうかわからないこと)を表す。
(7)100万円あったら、豪華船で世界一周したい。
(8) 雨が降ったら、行きません。
2)ほぼ決まっている条件を表す。(「それをきっかけとして」「その場合には」の意味を表す)
(9)ご飯を食べたら、私の部屋に来てください。
(10)仕事が終わったら、プールへ泳ぎに行こう。
3)終助詞的に用いられる。
(11)A:どうしようかな。
B:ともかくやってみたら。
2.「過去」の場合
「~たら」が過去(確定条件)の場合は、「一回きり、偶然、発見、きっかけ」といった意味を表します。
(12) 宝くじを買ったら、一等に当たった。(一回きり、偶然)
(13) 町を歩いていたら、前田先生を見かけた。(偶然、発見)
(14) なかなか動かなかったが、このボタンを押したら、急に動き出した。(きっかけ)
● 「~たら」形の作り方
「~たら」は動詞・形容詞などのタ形に「ら」の付いたものです。
動詞 | い形容詞 | な形容詞・名詞+だ |
行ったら 行かなかったら | 忙しかったら 忙しくなかったら | 元気/休みだったら 元気/休みじゃ/でなかったら |
●「~たら」の特徴
条件文「~たら、~」の特徴は次のようにまとめられます。
1)話しことば的であること、したがって、論文などの書きことばでは使われない。
2)「ば」「と」と同じく、前文と後文に時間的前後関係を必要とする。
(15)
北海道へ行ったら、ラーメンが食べたい。(
北海道へ行ってから、ラーメンを食べる。つまり前文が起こってから後文が起きる。)
(16)?
北海道へ行ったら、飛行機が一番安上がりだ。(
北海道へ行くこと(前文)と飛行機が安上がりなこと(後文)の間には時間的前後関係がない。)
3)文末に意志表現をとることができる。質問文も来ることができる。
(17) 子供が寝たら、出かけよう。
(18) 雨が降ったら、試合は中止ですか。
4)仮定条件で使われるが、一般条件ではあまり使われない。
(19) 春が来たら、山に行こう。(仮定条件)
(20)?春が来たら、花が咲く。(一般条件)
5)「~たら」文では、前文で切れ目ができ、後文に注目の事柄が来る。
(21) A:このボタンを押したらどうなるかしら。
B:このボタンを押したら、・・・・爆発するかもしれない。
条件節「~たら」の主語は他の従属節と同じく、「が」をとります。
(22) アンさんが帰ってきたら、夕食にしよう。