56.「~なら」
●「~なら」の非過去の意味用法
条件節「~なら」は、「~たら」「~と」「~ば」と意味用法が大きく異なり、もっぱら非過去で用いられます。
1.非過去の中の「~なら」
「~なら」の非過去の文での用法は次の通りです。
1)主題トピック(=は)
(1)サッカーなら、ブラジルが一番強い。
(2)ビールなら、高原ビール。
2)仮定条件
(3)田中さんが来るなら、会は盛り上がるだろう。
3)確定していることや相手のことばを受けて
(4)A:これ、もう要らない。
B:要らないのなら、私にちょうだい。
(5)(子供が勉強しないのを見て)
母親:勉強しないのなら、テレビゲームもだめよ。
4)自然に、あるいは当然起こる表現では使われない。
(6)?このあたりは雨が降るなら、山崩れが起きる。
(7)?夜になるなら、暗くなる。
●「~なら」の特徴
条件文「~なら、~」の特徴は次のようにまとめられます。
1)書きことばにも話しことばにも使われるが、どちらかと言えば、話し
ことば的。
2)「~たら」「~と」「~ば」と異なり、前文と後文の間に時間的前後関係を
必要としない。
(8)
北海道へ行く(の)なら、スキーができる。(9)
北海道へ行く(の)なら、飛行機が一番安上がりだ。
(8)は前文(従属節)と後文(主節)の間に時間の前後関係があるが、
(9)はない。このように、「~なら」はどちらにも用いることができる。
3)意志表現をとることができる。とり方は「~たら」と同じ。
(10)
北海道へ行く(の)なら、いっしょにスキーをしよう。(11)郵便局へ行く(の)なら、これも出しといてください。
4)「~なら」は過去(確定条件)には使われない。
(12)?子供時代はみんなが集まるなら、いたずらばかりしていた。
主語については、他の従属節と同じく「が」をとります。
(13)あなたが行くなら、私も行きます。
●「~なら」の作り方
動詞 | い形容詞 |
行く +(の)なら 行かない | 痛い +(の)なら 痛くない |
な形容詞・名詞+ | |
元気/休み +なら 元気/休みじゃ/でない +(の)なら |
●「~なら」と「~のなら」
「~の(ん)だ」のところで、「~の(ん)だ」の本来的な用法は、ある前提・状況があって「説明を求める」「確認をする」と述べました。
「~のなら」の「の」は「の(ん)だ」と同じ意味合いを持ちます。
(14) a.郵便局へ行くなら、これも出しといてください。
b.郵便局へ行くのなら、これも出しといてください。
(14)aは単に「あなたが郵便局へ行くときがあれば」というほどの意味
ですが、bは相手が郵便局へ行くと言っている、または、行きそうな様子であるといった状況や前提があります。前述の (10)(11)の例も、状況・前提があるので、「~のなら」が使われています。