守礼の那琉球に発達した空手道は今や正に世界の空手道として更に普及発展の途上にあること斯道を修練する同志として大変喜ばしいことであります。空手道が日本内地に導入されて約60余年という短期間の歴史の浅さにも拘らず驚異的な発展を遂げ得たことは、底辺の拡大という普及振興の大義名分下にスポーツとしての競技方式を採用したことが、その大きな要因であったことと考察されます。
しかしながらその背後には、長い歴史に培わて伝統の中に育くまれてきた武道としての沖縄空手道の技法が、正しく修練されているか否かや、特に空手道の主体である史実と伝統に培われてきた、正しい形の修練という本質的なものが見失なわれていくような一末の不安を感じさせられます。このような現況を決っして放置してはならない重要な時期に直面していることを憂慮するとともに、世界に誇れるべき日本人の心を伝える文化財的な国民武道としての本義さえも忘却されつつあることの潜在的要因を明確に洞察し、創意反省すべきことを痛感いたします。 |