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柳美里 作 5 U9 i5 e. |- \ ]0 s
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O君は七才のころから2DKのマンションに母亲をふたりで暮らしている。
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7 p. u' o( x }0 m; D ときどき、母亲の恋人であるD氏が泊まる。彼はいつも旅行鞄をふらさげてやってくる。妻に「出张に行く」と嘘をついているからだ。
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D氏はまず寝室に行き、着ているものを全部脱いで母亲が买った豹柄のビキニパンツを穿き、七三に分けた发に指を入れてばらばらにする。
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O君はD氏とふたりきりになったことがある。
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7 V! [# |4 L* J" h' {; e 「ねえ、おじさんの奥さんって血液型何型?」O君はなぜかひそひそ声で訊いた。
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6 U6 ]- Z' w! s8 g- M5 R 「A型だよ。结婚するならA型の女がいいぞ」D氏はのんびりした声でいった。
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; x7 g" j' h& {+ i/ o0 { O君の母亲はB型である。血液型の性格分析の本を信じるわけではないが、母亲は家事が苦手で、冷藏库のなかの食べ物を腐らせたり、洗濯机のなかに洗濯物を何日も入れっぱなしにしたりする。
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; E* c0 U+ b! q. t! { 母亲はままごとのあとしまつをするように、テ-ブルの上の食器を重ねながら、「Dは双子でね、若いとき、その双子のお兄さんが交通事故で死んだんだって。お兄さんには奥さんと子どもがひとりいてね、その奥さんが寝たきりのDのお父さんの面倒を见てたから、Dは仕方なくお兄さんの奥さんと子どもを自分の籍に入れたの。ねえ、映画みたいな话でしょ。」
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) P# K+ c, O3 J, x: l/ p O君はおそらくD氏の作り话だろうと思ったけれど、默っていた。
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D氏の嘘は一年でばれた。
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9 p4 x. b E" m L 寝たきりのはずのD氏の父亲が突然访ねてきたからだ。 ! g2 ` u2 p3 E/ `3 I
6 A# }( n( U) B6 ^+ ~9 i- f7 T( o 母亲はD氏が一人っ子であること、高校时代の同级生と恋爱结婚をして三人の子どもがいることをはじめて知った。D氏の父亲の唇から、绘の具チュ-ブを绞り出すように母亲への非难の言叶が流れ出す。母亲はDの唇とそっくりなその老人の唇をじっと见つみていた。
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- Q0 N% D/ O5 S3 T* j, J, z# L 「息子と别れてください」といわれたとき、まるでつかみかかられでもしたかのように母亲は立ち上がった。O君もつられて立ち上がった。
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その日の夜、いつものように背广を脱ぐD氏の目のまえで母亲はダブルベッドに灯油を撒いた。そして、「なにするんだ!」と怒鸣るD氏めがけて灯油をぶちまけた。鞭打つような激しい言叶を投げつけながら。母亲が镜台の引き出しに入っているライタ-を手にしたとき、D氏はすでに外に逃げていた。 L7 e: l* W; h3 M
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翌日、D氏の妻がきて灯油くさいD氏の背广を持って归った。 3 d/ b$ C& N' r# M
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それから一周间して、もう二度と戻ってこないだろうと思っていたD氏が、何ごともなかったような顔をして玄关のチャイムを鸣らした。 7 X# A2 U$ u- t# N+ L5 x' W5 K
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D氏は今、母亲に爪を切ってもらっている。彼の爪はきれいにやすりをかけられていて、母亲が切る余地はない。深爪をしたひとさし指の先に血が渗んだが、彼はひと言も「痛い」といわなかった。 |