2007年12月30日(日曜日)付
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2 \7 L; D" s9 w SF作家の星新一が亡くなって10年になる。短い行数で読者を別世界に引き込み、最後にすとんと落としてくれる技はなお新鮮だ。新聞紙上でも、短い文字列が日々現実を切り取る。12月の言葉から▼佐世保市の乱射事件で殺害された倉本舞衣さん(26)の父潤一さん。葬儀で「舞衣は大好きな子どもたちを守って亡くなりました。だから無念だとは思わないで下さい」。気丈さが不条理を際立たせる▼北の店頭に戻った「白い恋人」は売り切れ相次ぐ人気に。国際大学研究員の鈴木謙介さんは「消費者の反応はメディアが大きく取り上げた時に偏る。偽装を問題視するのも、販売再開で購買に走るのも一時的な現象ではないか」▼政界に降ってわいた未確認飛行物体(UFO)論議で、福田首相は「私はまだ確認していません」と素っ気なし。年金の不手際では「公約違反というほど大げさなものかどうかね」と世論を逆なで。有事に冷め、平時には熱く説くべき指導者の、妙な「ぬるさ」が支持率を押し下げた▼ジャズピアニストの巨星オスカー・ピーターソン(82)逝く。「うまいピアニストは多いが、彼は聴く人を無条件で幸せにしてくれた」と同業の小曽根真さん▼『星新一 一〇〇一話をつくった人』(新潮社)で大佛次郎賞などを受けた最相葉月さんが、取材を振り返る。「遺品にふれていると、子供が読むものと決めつけられた苦しみ、文壇で認められない怒りが伝わってきた」。自分の力が及ばない現実を含め、良いこと悪いこと、山積みにして年がゆく。 |