日本で言う「名無しの権兵衛」を、米国では「ジョン・ドウ」と呼ぶ。氏名不詳者の代名詞で、女性なら「ジェーン・ドウ」となる。権兵衛さんと違い、公文書にもよく使われる表現だ▼「ジョン・ドウ起訴事業」なる試みが、数年前、性犯罪の多いニューヨークで始まった。容疑者が捕まらなくても、現場に残されたDNAに“人格”を与え、身代わりとして氏名不詳のまま起訴する。起訴によって時効の成立を防ぐのが、捜査側の狙いである▼容疑者の遺留物でも、足跡や凶器を裁判にかけることは出来まい。そこへいくと、遺伝をつかさどるDNAは生命の設計図ともいわれ、ある意味で当人そのものだ。「4兆7千億人に1人」の精度で個人を識別できると聞けば、身代わりにも説得力がある▼14年前、大阪のホテルで女性が殺された。現場に残されたDNAが、最近の事件の容疑者のものと一致した。日本にはDNAを身代わり起訴する制度はない。もう1年で時効が成立という、きわどい再逮捕となった▼「天網恢々(かいかい)疎にして漏らさず」の故事を思う。中国の老子が、自然や正義の厳正をさした言葉だ。「DNA鑑定の登場で時効は時代遅れになった。犯人は何十年たっても枕を高くして眠れない」とニューヨーク市長も言っている▼14年前の被害者は、名無しのDNAに名前がつくのを、あの世で待ち望んでいただろう。被害者遺族の心にも、時効はないという。最先端の生命科学が、目のつんだ「天の網」となって、人間世界の罪をにらんでいる。
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: e9 G* U. }0 }9 R; v/ } \[ 本帖最后由 藤堂真琴 于 2008-3-3 09:14 编辑 ] |