2007年07月30日(月曜日)付
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, K9 t' w0 o- D5 L古代ギリシャの哲学者タレスは天文学にもたけていた。ある夜、星の観測に熱中するあまり、井戸に気づかずに落ちてしまった。使用人が冷やかした。「あなたは天上のことは知ろうとするが、足元のことはお気づきにならない」* O! q% u4 j. _. z3 c( ^
( C, q% N, t) x+ x; q よく知られた逸話に、安倍自民党の大敗が重なる。首相になってからの安倍さんには、望遠鏡で遠くの空ばかり眺めていた印象が強い。いわく「美しい国」「憲法改正」「戦後レジーム(体制)からの脱却」……。大構えなテーマは、彼の思い描く夜空に、星座となってきらめいていたのだろう。
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だが足元には疎かったようだ。暮らしを脅かす格差に無頓着だった。政治とカネの醜聞につまずき、年金問題という井戸に落ちた。それからが正念場だったはずだが、腹を据えて空を仰ぎ続けるでもなく、取り繕いに追われた。
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; c% A8 G1 c8 ]9 K 「政治家は次の時代を考え、政治屋は次の選挙を考える」という。首相就任時には、安倍さんは政治家だったかもしれない。だが井戸に落ちてからは、動揺したのかすっかり政治屋になってしまった。脆(もろ)さに失望した人は、自民支持層にも少なくなかっただろう。9 A7 h4 M' ] i. h3 X1 x
+ Y2 i' R- i a4 M) z タレスは、万物は水から生まれ、水に還(かえ)ると、宇宙の原理を説いた。その水を庶民に、為政者を舟になぞらえたのは、中国の思想家の荀子だ。「水はすなわち舟を載せ、水はすなわち舟を覆す」
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民衆は政権を支えもするが、不満ならひっくり返す。それが一票の力だろう。舟が覆ってなお、首相は泳ぎ続けるそうだ。民意の波は相当荒いのだけれど。 |