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楼主: Jennifer

[经验方法] 連載《天声人語》想看中文版请去看1590楼最新公告

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发表于 2007-9-3 08:36:50 | 显示全部楼层
2007年09月02日(日曜日)付% q" q" ^  ]/ _4 l; j6 s
山形県の温泉宿で夜明け前、雨に打たれながら露天ぶろにつかった。注ぎ込む湯と雨粒の音、谷からの虫の声が、湯気の中で混然一体となっている。黒い塊だった正面の森が刻々と緑を取り戻す。自他の生命を実感するひとときだ。) ?1 U& P4 ?- p; m/ ], O9 L# W- ]- ?! A
9 G; I; l9 y. B# W4 h1 S0 _
 生きていてよかったと思う瞬間が、誰にもある。温泉での小さな幸せとは比べようもないが、アフガニスタンで人質となっていた韓国人の場合は、故郷の土を踏むその時だろう。今朝にも全員が帰国する。
  T7 O* }6 |) A  `9 h
5 e0 a' i- b: l4 B7 Z: X, b 2人が殺され、韓国政府は犯罪集団との直接交渉を強いられた。解決の陰で身代金のうわさが絶えず、国内では自己責任を問う声があると聞く。だが、生きて帰ってこそ、感謝も反省もできる。2 @- x8 X1 v$ x4 a0 J
: @, n; V* Q# q0 n' c" v* Y+ m- s( ~& e
 豊かな人生は、生きていてよかったと思う瞬間を積み重ねる作業といえる。きょうを生きれば、明日いいことがあるかもしれない。人質生還の吉報に、この夏、いわれなく絶たれたいくつもの生が浮かんでくる。
* f% o# d+ T& D' f: S2 H
0 v2 `* G8 v2 U$ p. i ネットが結んだ男3人にさらわれ、惨殺された女性がいる。幼くして父を亡くし、お母さんと支え合って生きてきたという。母娘のささやかな日常と、いくつもの未来を引き裂いた獣の業には、憤りで総身が震える。
* R3 L9 j: O/ u4 L& D. u+ w$ l# S1 k2 C- |* R% F4 a
 東京本社版の声欄で、自分が生まれた時にたばこをやめた父をたたえる一文を見た。投稿者の女性(19)は「禁煙してくれたお陰で、一緒に過ごせる時間も増えたことになる」と親の健康を祝す。どんな命も、たくさんの愛情と善意に支えられている。とりわけ生にまつわる喜びと怒りには、まっすぐに向き合いたい。
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发表于 2007-9-3 08:37:31 | 显示全部楼层
2007年09月03日(月曜日)付# d& G2 q4 l4 u4 [3 _8 j6 d! }  N
. d& G* E) R0 X7 H# z7 V
「やれやれ、またドイツか」と思う主人公を乗せ、ジャンボ機はハンブルク空港に降りる。機内に小さく流れる音楽。「それはどこかのオーケストラが甘く演奏するビートルズの『ノルウェイの森』だった」4 W2 W; F% o- B& \) g1 B
) N: Q* |) Z  J! H
 この場面から始まる長編小説を村上春樹さんが出して、20年になる。作品名となったその曲は、針葉樹が香るメロディーの中にも東洋を感じさせる。インドの民族楽器、シタールが使われているせいだろう。
8 w7 a1 L- R) x2 C" y6 ~4 o) q$ b5 f# L% S! m
 もちろん、民族楽器はノルウェーにもある。母国に根づいた楽器や民謡をこよなく愛し、旋律や和声に採り入れたのが19世紀後半の作曲家、グリーグだ。明日が没後100年にあたる。
4 ]4 T8 _  ]( K: u0 U  O$ ~; B. t( C+ C9 I+ V
 ハルダンゲルバイオリンという楽器がある。4本の弦の下に細い共鳴弦が張られ、バグパイプのように厚く重なった音が出る。日本で一人だけのプロ演奏家、山瀬理桜(りお)さんは「ノルウェー土着の音は、グリーグを通じてクラシック音楽全体に影響を与えています」と教えてくれた。/ b' \4 r; J5 k- p( l  ^$ D
, r# Z" K( Y4 H+ x! r* m# {0 b4 L
 代表作ペール・ギュント組曲の「朝」は、この楽器の共鳴弦を、高音から順につま弾いた旋律で始まる。イプセンの戯曲にグリーグが音楽をつけ、後にムンクが劇場ポスターを描いたと聞けば、この国の文化の集大成のようでもある。
2 [* }: O$ P1 U% @( A0 f$ o4 A" o. h+ ]1 @! A0 H9 U# S
 民族音楽に楽譜はなく、耳から耳へ伝承されるという。だから奥行きと味わいがある。「人生は民族音楽に似ている。それが短調なのか長調なのか、誰にも分からない」。ノルウェー王国の公式サイトが掲げるグリーグの名言だ。北国の「文化の森」は深い。
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发表于 2007-9-4 08:31:34 | 显示全部楼层
2007年09月04日(火曜日)付! {- |! S$ l( Q7 W* |
7 T# L! r+ v8 r. v0 a
細部はともかく、童話「3匹の子豚」の大筋は揺るがない。うかつな長兄と次兄がひどい目に遭い、賢い3番目が仕返しをする。60年代にNHKが放送した「ブーフーウー」も上から、いばりん坊、くたびれ屋、しっかり者だ。
8 l: J% u, ^2 h" S; e/ ^( W
- a5 R/ j4 r2 v: B' \* i) F さてさて、物語を締めるべきウーが、ブーやフー以上の早さでこける間の抜けた展開である。遠藤農水相の辞任劇だ。わらと木の家が世論に吹き飛ばされた後、衆目の中で築かれた家はれんがではなく、わらより軽い紙造りだった。
2 Z" w9 R1 C7 O/ W7 b* {; Y
) m1 h& e" f' D. |9 N8 Y 松岡氏、赤城氏に続く「ジ・エンド」。悲劇も喜劇もなんと短いことよ。鬼門ゆえの「身体検査」だったのに、体温計で血圧を測るたぐいの見当違いをしていたのか。/ H* M# `- y1 s

9 C) x0 i% M  w; F; x 国の補助金をかすめ取り、昨日まで返さずにいた農業団体。そこの組合長が、8日間とはいえ監督官庁の大臣を兼ねた。ご本人も「ここだけは」と尻込みしたようだが、国益を損ねる失敗人事である。2 w- K( w& @5 Q: D
& @+ z* C) A3 K( @! {) [% t* Q3 V
 参院で与野党が逆転し、国会は緊張感に満ちている。閣僚に求められる「清潔偏差値」は上がり、与党は即断を迫られた。攻勢にわく野党も心するがいい。カネ、素行、交友関係。政治家は「身ぎれいな大物」をよしとする時代になった。7 J& G8 n% [: ?
4 m$ O8 o5 y! f0 K0 D' n; \5 B
 他の閣僚の辞任を勘定に入れれば、安倍政権は「7匹の子ヤギ」状態だ。あの子もこの子も、産んだ端から醜聞というオオカミの腹に消えた。配役をいじれば、興行主も青くなる三文劇が勝手に幕を開け、客席は失笑と「金返せ」の渦。大根ばかりを責められない。これでは、お代は総選挙で戻すことになる。
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发表于 2007-9-5 09:47:44 | 显示全部楼层
2007年09月05日(水曜日)付
" {/ h+ w( |; Y0 kローマの観光名所トレビの泉で、怪しい男を詰問したことがある。磁石つきの棒を水中に差し入れ、底の硬貨をすくい取っていた。「盗(と)れびの泉」である。男は「捨てたものを拾っているだけさ」と首をすくめた。この道30年だという。
% T( K: \; p4 r5 u* X" U& r7 ~4 ?9 A: Q9 ]. _, T
 道ばたの1000円札は、他人の机上の10円玉よりつまみやすい。誰のものか分からないから、罪悪感のかんぬきが外れる。年金の泉にある金は本来、具体的な氏名と結びついた、つまみにくい金である。それが抜かれ続けていた。5 f% C, B( R# I# P
6 }: Y+ }/ u) [) a
 社会保険庁の発足以来、職員が横領した保険料や給付金が1億4000万円を超すと発表された。収納を担った市区町村の職員も、別に約2億円をくすねていた。泉の周囲でザルを構える密漁者の姿が浮かぶ。
7 k+ A# C- f# ~9 {& w5 }# n. T0 Z: p
 不良職員の懐に「消えた年金」である。中には数千万円かすめた者もいる。架空の人物の記録を何十年分も作る。被害者に未納の催促がいかないよう細工する。お役所仕事らしからぬ熱意にあきれた。しかも、これがすべてとは限らない。% C/ j" n8 J1 Q; l# e/ @
) u1 v- U# f' W* H! q9 `
 お金が個人から役所に移ると持ち主の輪郭は曇る。匿名の魔力は、罪悪感を道ばたに転がす。だがその金は、肩越しに放ったコインではなく、国民が将来に託した「私金」だ。1円に至るまで、見えない糸で誰かとつながっている。糸を引きちぎり、とがめもなく退職した悪人がいる。
( O" T( ?1 e7 w( \& p: @. z; x1 {
 トレビの金は大掃除で集められ、慈善団体に渡る。2年前、泉の清掃員らが大量の硬貨を盗んで捕まった。年金ちょろまかしは、当事者の背信という醜さで、磁石男よりこちらに近い。
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 楼主| 发表于 2007-9-11 11:29:58 | 显示全部楼层
2007年09月06日(木曜日)付
( d0 R8 ]7 [6 J8 ~
* v+ [- _5 L% l) H
8 W/ z: ]  e  c- ^夏休みが終わる頃、徳島市の動物園で人気者のキリンが死んだ。あまりの暑さに水を飲みすぎたらしい。アフリカ原産でこれだから、ペンギンやシロクマにはひときわ難儀な夏だったろう。ご苦労様でした。8 Z2 y* L  W. D
% X. Y3 ^0 }" g; N1 S. C+ A! O
 「場違い」な境遇で懸命に生きる動物には、哀れが漂う。このほど目にした「南極の豚」の写真に、その思いを強くした。1959年秋に日本を出発した第4次観測隊の逸話である。6 M% u, G* G5 t2 S  `8 F0 m

! {! e) E7 y2 E' x% N% e# j 寄港地のケープタウンで生後1カ月の子豚を2匹買った。つがいを昭和基地で繁殖させ、新鮮な食肉を得るつもりが、手違いで2匹とも雌。残飯で育てるうちに情が移り、誰もトンカツにしようとは思わなくなる。雪嵐の4月に1匹が凍死、翌日、連れが後を追った。& a# V# j* ?) S" V! Z) x
) P7 ?4 h3 T9 p4 h# ], z9 f  Y
 南極で越冬した同僚によると、生鮮食品は今も貴重だ。電灯光で育てたキュウリは1本を40人分に切り、プチトマトは4等分したという。失敗した豚の飼育計画は、越冬報告で遠慮がちに触れられた。あとは、雪まじりの岩場を「散歩」する2匹の白黒写真が残るだけだ。9 m: v/ v$ k. n0 e+ S4 C7 Y' p% J
" A7 \5 |+ z5 G
 極地の環境を守る国際ルールにより、南極には動植物を持ち込めなくなった。極地ならずとも、人の手で海を越える生物は生態系を乱す。日本の山川では、アライグマやブラックバスなど生命力の強い外来種が幅を利かせている。
5 P: B3 ^9 f1 c- k9 |6 F7 r( j
6 Z9 i' f  E- o 最強のヒトはどうだろう。科学の力であらゆる自然環境に適応し、地球のどこにでも住める。だが動物にはない文化の壁ゆえに、強いだけでは異郷になじみ難い。里帰りの多い横綱が、身をもって示した通りである。
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 楼主| 发表于 2007-9-11 11:30:51 | 显示全部楼层
2007年09月07日(金曜日)付
0 v4 _( p6 u, ^, M$ H  c
, M# {& L9 {/ R0 L; H- z; @2 o( j$ ~. P2 q
『土佐日記』の紀貫之(きの・つらゆき)は冒頭から女性になりきり、カナで書き進む。「男もすなる日記といふものを女もしてみむとてするなり」。女装の文章は、男は漢文という表現の掟(おきて)をすり抜け、女流文芸の隆盛に一役買った。高い垣根が男女を隔てていた時代の奇手である。- `& h$ E9 z! M* n& e0 O+ T

6 N2 e" R- h' Y6 R% X4 | 千余年を経て、垣根は消えつつある。女装も男装もすることなく、大抵のことは「男女がすなる」だ。女の子の柔道や剣道、男の子が踊る姿は当たり前になった。
( s8 I' |2 C7 G% o& i# v. `4 l8 D6 Y
 中学校の体育で武道とダンスが男女とも必修になるという。学習指導要領の見直しが固まり、早ければ11年度から2年生まで全員が両方を習うことになる。武道の重視は、改正教育基本法の「伝統と文化の尊重」を受けたものだ。
( U. S# F% r# C. ?4 R/ k3 m1 H) S
 日本武道館が先ごろ編んだ『日本の武道』の中で、早大教授の菅野純さん(臨床心理学)が「武道の教育力」を並べている。偽りのない自分に出会う、相手や場の空気を読む力がつく、けじめや節度を覚える……。確かに、武道は礼節の教科書には違いない。
8 Q! p3 w# ?. V' w! Q9 E; Y% B5 J$ O% p3 q( N
 だが、暗い過去もある。戦中の武道教育は「攻撃精神」「必勝の信念」「没我献身」などの言葉で語られた。『日本の武道』は「本来の学校武道の良さが見失われてしまったことは極めて憂慮すべきことであった」と悔やむ。% D/ R" }7 B& M+ i4 u/ A5 F4 W
7 b/ n& G* e) o# n
 ことさら国家や精神性と結びつけるのは、武道にも不幸だ。国の号令で習わせて礼節や公徳心が身につくものでもない。多くの「道」から選び取られてこそ、武道も輝きを増す。男女が何にでも挑戦できる時代に、必修は似合わない。
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 楼主| 发表于 2007-9-11 11:31:47 | 显示全部楼层
2007年09月08日(土曜日)付
3 l9 M" w' ~. u* ]
+ y3 u$ [+ ^% {$ i" h, c9 h. t
/ }0 ]  k& N" b5 L, ?; Z  I3 v$ ^/ Cきのうの朝、風雨激しい住宅街を歩いた。道に色々と落ちている。ちぎれ飛んだ緑の葉に、サルスベリが散らした薄紅の花。ひしゃげて裏返ったビニール傘は、持ち主を送り届けて、あるいは道半ばで力尽きたのか。30本まで数えてやめた。2 `  q3 G6 J4 n: Q4 m# k- @$ T) G5 O

) D2 B! e& b& L- M/ _0 u: {7 V% d 台風9号は、朝夕のラッシュ時に首都圏を直撃した。ニュースの映像では、透明な傘が風雨と苦闘していた。大荒れになると分かっている日こそ、使い捨て覚悟のビニール傘が重宝がられるのだろう。テレビの気象予報士も1本握りしめていた。8 b  `4 ]/ [9 u% O. ~- q9 W

* O6 K* M/ D  Z% l 上や横から来るものは安い傘でもしのげるが、足元から忍び寄る水は厄介だ。東京では多摩川が危険水位を超え、世田谷区の740世帯に避難勧告が出た。: \" m& H( }3 ^8 H1 o# K

! c- V2 q2 G! Q+ _9 j- ~& | そのころから、堤防の内側では30人以上が河川敷などに次々と取り残され、何人かは濁流に消えた。増水する川で、いったい何をしていたのか。実はそこが住所だった。河川敷には路上生活者のテントがたくさんあり、ビラや拡声機で避難を促したが一部が逃げ遅れたらしい。
! Z% U: t( N7 }4 x) Z4 A' {3 {7 O
: ^9 Z! F5 e  h 格差が広がる大都市の底に、情報の海から孤立して暮らす人々がいる。約600人とされる多摩川の民もそうだ。彼らの「家」は、流されても被害統計には載らない。社会の最も弱い所を天災は正確に突いてくる。
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 楼主| 发表于 2007-9-11 11:32:35 | 显示全部楼层
2007年09月09日(日曜日)付
. Z1 ]& [6 Y  Q& ~8 F6 S, r3 w/ e, H3 y0 F" B
  ^+ K( c2 c4 ^' Q9 l' F
徳川300年の太平の眠りを破ったのは黒船だった。そんなに仰々しくはないけれど、太平楽な眠りを1匹の蚊に破られるのも、天下の不愉快事の一つだろう。私見だが、蚊が出るのは暑さの盛りよりも、一段落した今ごろの方が多いのではないか。! j# R% M' Y* G5 v2 c! K
, V/ X1 g* }4 W- U+ ]" N
 「蚊の鳴くような」その声も、浅い眠りの耳元には十分大きい。羽音をもうろうと聞き、見当をつけて頬(ほお)のあたりをひっぱたく。何度かしくじれば、呪いの言葉を吐いて布団をひっかぶるしかない。だがすぐに暑くなるから、はねのけて、また迎撃の仕儀となる。! y1 @5 ^* l' `9 Y# X6 L5 c

, M- X6 X  M. e! K& H1 b 不愉快は古来不変らしく、遠く鎌倉初期にも恨み節が残る。〈夏の夜は枕を渡る蚊の声の僅かにだにも寝こそ寝られね 藤原良経〉。明治の文人正岡子規も蚊を「刺客」と呼んで憎んだと、文芸評論家樋口覚さんの『短歌博物誌』(文春新書)に教わった。
  A0 U; V2 v, _* K( }( m
2 p: J. p# Z* h2 S/ M3 B! n5 Q 「田舎の蚊々、汝(なんじ)竹藪(たけやぶ)の奥に生れて、其(そ)の親も知らず、昼は雪隠(せっちん)にひそみて伏兵となり、夜は臥床(がしょう)をくぐりて刺客となる……」。滑稽(こっけい)味を添えつつも「汝の一身は総(すべ)てこれ罪」と難じ、恨みは深そうだ。
; ?5 u( g- I# ^0 r+ ~' l9 ^0 C1 s* u
+ }6 N+ a- z9 M- c9 J0 @2 J1 I 「蚊」とひとくくりにされるが、国内には100種類ほどいる。温暖化で生息域が北上しているものもあるようだ。媒介する病気の危険地域が広がる、と心配する専門家もいる。
' G* z; i" ]& W8 L
  n  ?9 V; f+ \" D, k  p 太平の世、蚊が実は怖い虫だと、つい忘れがちだ。せんだっても、米国をパニックに陥れた西ナイル熱の病原体を、日本の蚊も媒介すると分かった。しつこさに根負けし、ままよと刺されるのは、避けた方がよさそうである。
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 楼主| 发表于 2007-9-11 11:36:21 | 显示全部楼层
2007年09月11日(火曜日)付
" D; M( S6 Y- W: k) K/ l! F& r/ b* k5 q5 v
+ ]' O. a/ J1 ]- a: `) c
防衛大学校の初の卒業生に、生みの親の吉田茂元首相は異例のエールを送った。「君たちが日陰者である時の方が、国民や日本は幸せなのだ。どうか耐えてもらいたい」。吉田の安保論には様々な評価があるが、理と情がこもる直言は半世紀を経て語り継がれる。
/ ]% w/ g. P: k! a% i7 t) O- y5 a& X7 X! o5 Y% |2 d/ f. F6 n& _
 政治家には、相手の心の奥底に言葉を投げ込む能力が必要だ。何としても伝えるという情熱と、鍛えた話術が、内なる思いを大きく飛翔(ひしょう)させる。どれが欠けても言葉は届かない。
: h- y4 W& y/ O, _; I$ D, w& b/ E6 O$ E
 安倍首相は昨日の所信表明で、戦後レジームからの脱却が必要だから続投なのだと語った。だが前日には、インド洋で自衛隊が活動できないなら辞めるような発言もした。職にとどまる根拠が怪しくては、どんな言葉も飛んでいかない。# K! q! A1 k: ^
4 q3 t  b: Q# Z4 H, W
 「論座」10月号で、東大の石田英敬教授(情報記号論)が首相の話し方を診断している。興奮すると舌が回らず、せき込むような早口になるそうだ。これでは心がこもらず自信なげだから、「しっかりと」を連発して深みにはまると容赦ない。
- h3 m( L) ~3 d+ J1 G- j+ z7 s: {+ s
% B/ ?, r% |1 G( } 弁舌の技量はさておき、首相の地位がおのずと与えるはずの重みが、何とも感じられない。おやじの小言と似たような話でも、高僧の説法は響くものだ。ところが、参院選の大敗で政権の正統性が揺らぎ、安倍氏が賭すべき職は軽くなった。  o! f) ?* h* U% g, V7 V9 t
* s6 R, p3 F9 Q* H7 d6 Q/ u
 政治家、それも首相の言葉が翼を欠く窮地である。それでも弁舌を業とする者の定めで、語れば採点され、黙せば減点される。せめて明日からの国会論議では、国民の心に届く言葉を、一つでも投げ込んでほしい。
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发表于 2007-9-11 19:58:59 | 显示全部楼层
天声人語が大好きだ。^^( o5 Y8 X% a/ T% L; o
だが、■《天声人語》      02月08日付% X" z: e* d) _( X/ h7 S
の資料の一部は文字化けになっちゃったそうです。  u1 c; T3 ?/ T* _( G
ご確認を。
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发表于 2007-9-13 08:28:14 | 显示全部楼层
2007年09月12日(水曜日)付& Y0 h; H3 S5 h" u4 @( t
首相の「職を賭す」発言を伝える新聞で、久しぶりの表現に出合った。政府高官のコメント「首相はルビコン川を渡った」である。過去の記事を調べたら意外に多くて、年に3、4回は紙面に登場している。" S- H2 j0 L# t+ l- `. p

" `# s& Q& k8 V: j イタリアのルビコン川は、ローマに攻め上るシーザーが元老院令を犯して渡った史跡。転じて「後戻りできない決断や言動」の例えに使うが、日常会話にはまず出てこない。" I% ?/ p( I/ s( S* X4 T, B
- p( a& ]4 u  q: s
 文化庁の国語世論調査によると「そうは問屋が許さない」を使っている人が24%いた。そもそも、問屋の役割を知る人が減っているのだろう。正しくは「卸さない」だが、流通革命で問屋の立場は弱まり、卸さねば小売業者はメーカーや産地と直取引を試みるだけだ。" g$ j, P0 x& {. f* j. Q/ D9 J# K
# q: t5 v1 A# x5 r& S# F8 l6 L- u
 「出る釘(くぎ)は打たれる」は19%が使っていた。本来は杭(くい)だが、打たれる杭を見た人がどれだけいるか。元の史実や事物の通りが悪くなると、故事や慣用句は使いづらい。存亡の危機。どんな言葉も、誤用を含め、ちまたの会話に登場してこその命といえる。「使っている鍬(くわ)は光る」ともいう。
# m% Y# \' }2 O- y
6 i8 L  N- z. `2 e$ {' c2 I6 ] 同じ調査で、書けない漢字を調べる手段を聞いた。「紙の辞書」に次ぐのは「携帯電話の漢字変換」だ。30代以下は携帯が首位、20代では8割を占める。慣用句に疎くても、機械と組んで「憂鬱(ゆううつ)」や「薔薇(ばら)」を平気で使う時代がきた。これで難字も生き残る。
( h7 [8 r- C& g) }: ]: p- |2 ^
4 I- E: |" [% R* p7 ` 作家の出久根達郎さんは「漢字を正しく書けることは、それほど重要でなくなるかもしれない」と語る。書くから打つへ、日本の手書き文化は、もうルビコンの向こう岸に近い。
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发表于 2007-9-13 08:29:05 | 显示全部楼层
2007年09月13日(木曜日)付7 ?1 }) l, Z( \' R4 |9 P  h

  F- a) o+ e8 p' }まず浮かんだのは、復古的な国粋主義を唱えた政治家、平沼騏一郎だ。昭和14年に首相に就くも、国家の手本とするナチスドイツがソ連と不可侵条約を結んだ衝撃から、8カ月で政権を投げ出した。迷言「欧州の天地は複雑怪奇」は流行語になった。
3 m- R. W4 r8 ^5 @! |
) p! r" m/ n& U( C 安倍首相が突然、辞意を表明した。代表質問を受ける直前に、随分な職場放棄である。小沢さんに袖にされたから、はなかろう。同じ泣き言でも「疲れた。政治への気力がうせた」の方がまだ得心がいく。
& W8 q3 F- E8 |: p* e7 Q# N7 E  ]- n2 [+ B. G1 r" y5 K
 「我が国の将来のために続投を決意した」はずだ。インド洋の自衛隊に「職を賭す」のではなかったか。参院選の結果を見れば遅きに失し、最近の言辞からすれば早すぎる。ただの無責任にとどまらず、最後まで頃合いというものを心得ておられぬ。8 _$ p! I, f8 ^6 l' s

0 U" H) ]- j8 t% k; w# `, d 00年の九州沖縄サミットを思い出す。安倍氏は新米の官房副長官として、会議の中身を記者団に説明する役だった。「次代を担う」にしては口べたで、それゆえ誠実そうでもあり、線が細くも見えた。( L4 \7 f' v; B& @8 f2 `4 x' Q( o

$ b( M' b2 Y  n* v 辞意の裏には、健康不安もあったと聞く。心身ともに絆創膏(ばんそうこう)だらけだったのだろう。気の毒だが、それを隠すのは指導者の振る舞いではない。時宜を踏まえ、区切りよく辞める機会は何度かあったはずだ。
+ u2 [5 P6 j& I# _; l* m: F& z3 q  j8 f; c& F4 ]" i
 戦後レジームからの脱却、美しい国。浮遊する観念的な言の葉が、安倍氏の業績、ではなく思い出となる。広げたままの大風呂敷を残し、国民の心に届く言葉の一つもなく、不可解な退場に至った。主の気まぐれで右往左往の永田町。ここの天地も複雑怪奇である。
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发表于 2007-9-14 08:23:32 | 显示全部楼层
2007年09月14日(金曜日)付
9 z) u/ k! V. F6 W0 \! f+ D
" b+ E) r6 \# Z7 M6年で七曜をひと巡りし、今年の「9・11」は火曜日に戻ってきた。タワー2本が100分で消えたニューヨークのテロ現場は、雨になった。追悼式の遺族の輪に、山口県下関市の中村佑(たすく)さん、静美(きよみ)さん夫妻がいた。+ d  @+ i  [5 O: T  k% D

6 q% D0 q, H3 t' B; M+ p 次男の匠也(たくや)さんは地方銀行の駐在員だった。骨のかけらも見つからなかったが、最初の旅客機が突っ込んだ北棟102階に出勤していたはずだ。享年30。新婚の妻が残された。
. S3 Q( }  g3 I9 M" q7 o. y% Y! p7 v) H
8 F0 A* x% n, ]2 }' R 両親は絵を手向けた。米国に赴任した息子が、最後の母の日に贈ったバラ。庭で挿し木にしたものが根づき、毎年、薄赤の花が咲く。それを静美さんが和紙に描いた。「感情が乱されるから」と、夫妻は息子の名が読み上げられる前に式を後にした。
4 ]% k, D* s  ?5 D
) W- {# n. l( H& n& N/ c 佑さんは「あれから世界はウニのようにとげとげしくなるばかりです。日本も巻き込まれ、よからぬ方に傾いている」と語る。涙で見た景色は再開発で消えていくが、それで区切りがつくものでもない。実行犯への憎しみから、より大きな平和へと、遺族の心の旅は続く。
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) K  H1 w( o9 J; k# ^0 E 狂信者の身勝手で3000人が死に、狂信者を追う「聖戦」の中でその何十倍もの民が死ぬ。米大統領の対テロ戦争は、人類共栄の目的にかなうのか。理由なく殺される人を増やしただけではないか。
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 「9・11は国旗を振る日ではなく、和解を考える日にしたい」。遺族団体の創設者は武力に頼る政策を嘆いた。願いは式で歌われた「明日に架ける橋」の詞に重なる。〈暗闇が訪れ/痛みがあふれたら/荒れ狂う流れに架かる橋のように/僕がこの身をなげうつよ〉
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发表于 2007-9-15 08:24:25 | 显示全部楼层
2007年09月15日(土曜日)付( D% E  w- t9 ]4 g# `& I
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ツクツクボウシが季節を結ぶ独唱を終えつつある。ここ数日で、虫の声は樹上から草むらに移った。動いたのは自然の音源だけではない。取材のざわめきもまた、首相官邸や国会から自民党本部へと所を変えた。5 _; E' s; B8 T* F: z- y
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 自民党の総裁選が告示された。優位とされる福田康夫氏は戦後13人目の首相の長男、麻生太郎氏は同3人目の孫だ。「8人目の孫」が職を投げ出した後は、子と孫の争いらしい。政治の世襲化を煮詰めたような光景に、つい嘆息する。+ D7 p. S4 e0 K! O

/ K( y8 @' r$ V, g 40歳まで会社員だった福田氏は、首相になった父上の秘書官として政界に入った。後継ぎで衆院選に出た時は「独立した一人の人間として見てほしい」と父離れを強調した。「あんな年寄りと比べないでよ」は初登院の弁だ。* T$ i. R' p" d  e7 Y: g

$ G  M" l: ~* f' Y& [# R- {  P- D 逆に「祖父は私の原点」と、近さを糧にしてきたのが麻生氏。22歳で米国に留学し、母親に車をねだった。「危ないから」と拒まれ、大磯に手紙を出す。吉田茂はたちまち説得してくれた。「孫にいい顔する祖父をかわいいと思った」と自著にある。& X5 \  T* G8 C8 E  X

5 r1 q7 N  `- a 血筋との距離のとり方は各様だ。親の仕事や地位は選べない。政治の家に生まれても、向き不向きがあろう。地盤だ看板だと担がれ、祭られ、重圧につぶれる人もいる。首相であれば国民の不幸だ。お二人が並の七光りでないことを願う。2 N! Y  Y7 A) M; g" T, i) E

; w" [0 P( e  G* ^  d: E# T8 z 虫なら、木で鳴くか草で鳴くのかは血が決める。ほかも選べただろうに、父や祖父と同じ木、同じ草で、まさに鳴かんとする両人。どちらの声になるにせよ、「有権者の血」しか引かない大多数の耳に届けばよいが。
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 楼主| 发表于 2007-9-17 11:06:20 | 显示全部楼层
2007年09月16日(日曜日)付
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近所の公園に、淡い紅色をした秋海棠(しゅうかいどう)の花がひっそり咲いている。日陰を好む花だという。木立の下の暗がりが、そこだけ明るいように、ぽっと色づいている。& y) x* _7 U' a( g- Z
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 またの名を断腸花と呼ぶのは、悲しみを誘うかのような風情のゆえらしい。作家の永井荷風は、この花を愛(め)でて庭に植えた。居宅を断腸亭と称し、名高い日記「断腸亭日乗(にちじょう)」を42年にわたって書き継いだ。戦前から戦中、戦後を自由な精神で貫く日記の筆を起こしたのが、90年前のきょうである。
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 〈九月十六日。秋雨連日さながら梅雨の如し〉。以来、死の前日まで、時勢に背を向け、それでいて確かな時代への目は変わらなかった。盛り場や色街を徘徊(はいかい)しながら、中国への侵略を「長期戦争に窮し果て、俄(にわか)に名目を変じて聖戦と称する無意味の語を用い出した」と見通していた。$ |" Z5 e# S+ l
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 別の日には〈米国よ。速(すみやか)に起(た)ってこの狂暴なる民族に改悛(かいしゅん)の機会を与えしめよ〉と激しい。玉音放送を知って、〈あたかも好し……祝宴を張り皆々酔うて寝に就きぬ〉。世捨て人ゆえに、目は覚めていた。
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, F; E$ F( @/ H4 ^+ F 荷風は日記を公表するつもりで書いたそうだ。今ならブログを開いただろうか。インターネット上の日記ともいえるブログの開設者は、国内で800万人を超す。閲覧者は4000万ともいう。誰もが表現者になれる半面、言葉による暴力といった負の面もある。
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 「断腸亭日乗」には、登場する人々へのあけすけな批評はほとんどない。言葉の達人はきっと、言葉の切っ先がいかに鋭く人を突くかを、よく知っていたのだろう。
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