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東京都内の日本語学校を実質的に経営する会社役員が、実態のないペーパーカンパニー十数社などを「就労先」や「就学先」とした虚偽の証明書などを次々と作成し、8年間に計約8000人の中国人を不法入国させていたことが13日、警察当局の調べで分かった。
入国した中国人の大半は、本国の約70に上るあっせん業者が送り出しており、会社役員は、総額数億円の手数料を受け取っていた。書類さえ整っていれば在留資格を認める日本の入国審査の盲点を突いた犯行で、警察当局は「過去最大の不法入国事件」として、捜査員を現地に派遣し、中国当局と合同で捜査を進めている。
法務・入管当局はこの事件を受け、書類確認だけで済ませていた入国審査の一部に、新年度から、受け入れ企業や就学先の日本語学校などの実態を調べる制度を導入する。
警察当局によると、問題の会社役員は、東京・新宿の日本語学校「新東京語学院」を実質的に経営する吉田勝則被告(56)(偽造有印公文書行使罪などで起訴済み)。
吉田被告は昨年11月、都内の中国人男性(54)が在留資格を更新する際、中華料理店の調理師として働いているように見せかけるため、料理店の偽の営業許可書を東京入国管理局に提出したとして逮捕された。
その際、同学院の別棟から、約800人分の印鑑のほか、国内に不法滞在しているとみられる中国人の氏名や連絡先を記した数十冊の大学ノートが押収された。
警察当局はこの時に、北京や上海、o江省など現地の約70のあっせん業者との契約書なども発見。裏付け捜査を進め、少なくとも約8000人が、1996年から昨年秋までの間に、吉田被告の仲介で日本に入国していたことが判明した。
こうした中国人の大半は、吉田被告が設立したペーパーカンパニー十数社の「通訳」や「役員」に就任するという虚偽の証明書を入国審査の際に提出し、「投資・経営」や「人文知識・国際業務」の在留資格を取得していた。
また、10―20歳代の場合は、吉田被告が実質経営する日本語学校のほか、同被告の知人らが経営する日本語学校数校から入学許可書の交付を受け、「就学」の資格を取得するケースが多かった。これらの学校には正規の学生も在籍していたが、ノートに名前のあった中国人の多くは、学生を装って入国し、飲食店員や清掃員などのアルバイトで稼いだ収入を本国に送金するのが目的だった。
このほか、中国の「調理技術等級証明書」を偽造してコックとして働くことを装い、「技能」の在留資格を得て入国していた中国人も少なくなく、吉田被告は書類上の受け入れ先として、約30の中華料理店に協力を依頼していた。不法入国の手数料は1人平均350万円で、警察当局は、協力者の取り分などを除くと、吉田被告は数億円の利益を得ていたとみている。
新東京語学院を経営する企業の社長(84)は「私は、名前を貸しただけで、学生の募集にかかわったことは一度もない」と話している。 |
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