一、
かつて生産とは、一定の明確な目的を目指して効率的な組織をつくり、正確で勤勉な労働を求めれば成立したのであるが、しかし、この根本的な理念が今大きく揺らぎ始めている。技術的な研究はもちろん、新しい利便と意匠を持つ商品の開発、消費者の需要と対話を行う宣伝、調査、セールスといった仕事、要するに、生産の目的そのものを探求する、創造的で、効率を図りにくい仕事が重要になったのである。
一方、消費者側も同じことであって、現代の消費者は商品の選択と購入を通じて、まさに自分自身の欲望を探し求めている、と見ることができる。これまで、消費とは、すでに
分かっている基礎的な欲望を目的として、それをより安く効率的に達成する、目的指向
①
型の行動であった。( ② )、美しさや面白さが欲望の対象になると、これはあまりに
③
も多様で個別的であるから、あらかじめ行動の客観的な目的とはなりにくい。人は市場に出かけ、一つ一つの商品にまず出会い、それを魅力的だと感じたときに、逆に初めて、自分が何を欲していたかを知るのである。
このように見ると、現代の社会は、生産者と消費者が一つになって、人間の欲望と趣味を探し求めている巨大な実験室だ、といえるかもしれない。あたかも芸術家と鑑賞者がそうするように、生産者は時代の趣味を表現する商品を試案として提出し、消費者はそれを
評価することによって表現が適当であることを確定する。その時、芸術の鑑賞者と同じ
④
く、消費者もまた自分が何を好んでいたかに気づくのであって、そこには一種の表現と自己発見がなされていると言える。
問1 ①「それ」が指す内容として最も適当なものはどれか。 15
1 目的を達成するための行動
2 消費者の欲望
3 基礎的な欲望
4 分かっている基礎的な欲望
問2 ( ② )に入る適当な言葉を選びなさい。 16
1 しかし
2 そして
3 すなわち
4 ところで
問3 ③「これ」とはあるが、ここで何を指すか。 17
1 美しさや面白さ
2 欲望の対象
3 消費の目的
4 基礎的な欲望
問4 ④「表現が適当であること」とあるが、ここの「表現」の具体的な意味は何か。18
1 生産者の生産の目的の表現
2 人間の欲望と趣味の表現
3 消費者自分自身の欲望の表現
4 時代の趣味の表現
二、
世間はゴールデンウイークで輝いているのに、閉じこもっている人たちがいる。日本のレジャー施設や旅館ときたら、金離れのいい人、体が自由自在に動く人を念頭に設計されている。そのせいだ。
3日、開園2周年をお祝う「長崎でてこいランド」は、一味違う。「ディズニー(出ずに)ランド」の向こうを張った名前は「だれでも楽しめるから出ておいて」という呼びかけでもある。
【問い】「長崎でてこいランド」の趣旨に合わないものは次のどれか。 19
1 障害をもつ人も楽しく過ごせる設備を備えていること
2 お客さんを楽しませるために、デラックスな設備をたくさん導入すること
3 入場無料であること
4 知的なハンディをもった子を楽しまめるために、おもちゃ館を設けること