次の(1)から(3)の文章を読んで、それぞれの問いに対する答えとして最も適当なものを1∙2∙3∙4から一つ選びなさい。
(1)人間は成長するにしたがい、何度も皮をむいて新しくなる。
この脱皮をさせてくれる助けはいろいろあるが、本はその大きなきっかけの一つである。あなたがある本と巡り会って、その中にある一つの言葉が、何か心にかかりながら、そのときは過ぎてしまう。何年かたってふと思い出し、「そうか、そういうことだったのか、ほんとだ、あの著者のいいたかったのは、こういうことなんだな。」とわかる、そのとき、あなたは
一つの脱皮を成し遂げる。そういうことが何度もいろんな本で行われると、その蓄積は次
①
第に厚く深くなってゆくだろう。人生経験を積み重ね、それを裏打ちして自分にプラスしてゆくには、どうしても読書が必要になる。
( ② )、言葉をたくさん知ることが望ましい。わたしたちは、言葉を使って考えを組み
立てる。積み木の数は、なるべくたくさんでなければならない。さまざまな形のものも欲
③
しい。本を読むことで、それらは幾つもできる気がする。口下手で、言葉をすぐ唇に上せられない(若いときはそういうことが多い)人も、頭の中に言葉がひしめいている。それでよいのだ。
(田辺聖子『読むことからの出発』講談社現代新書より)
問1 ①「そういうこと」とは何か。 7
1 ある本に巡り会ってその中の言葉が心にかかって、あるときふと思い出したこと
2 ある本の中の心にかかった言葉が何年か後に理解でき、成長したこと
3 人生でいろいろな経験をしながら、何度も脱皮したこと
4 若いときに口下手だった人が年をとって話せるようになったこと
問2 ( ② )に入ることばはどれか。 8
1 とにかく 2 ところが 3 それでも 4 しかしながら
問3 ③「積み木」はこの文では何のことか。 9
1 おもちゃ 2 読書 3 人生経験 4 言葉
(2)人間にとってもっと困難なのは緩慢な変化の累積の結果が起こる事態を予測し、
これに対応することである。環境破壊、人口爆発、食糧不足は人類の破滅に向かって緩
①
慢な歩みを続けている。地球環境問題の第一人者による本書は、緩慢な変化がいままさに切迫した危機に転化しようとしていることを明快に説いている。
現在世界では毎年九千万人の人口が増えているが、食糧生産は頭打ちの状態である。人口増や都市化にとる耕地の減少、森林の開発による水資源の減耗、土壌の浸食など食糧をめぐる環境は悪化の一途をたどっている。品種改良や肥料の開発による増産効果も現在は期待できない。
一方、先進国で豊かな生活を送る人間にとってはこれらの変化は具体的急激なものとは
②
映らない。時折アフリカの飢餓の悲劇が取り上げられるが、緊急援助を行うことでとりあえず危機を回避したような気になって、それ以上は新聞でも報道されなくなる。しかし、こうした変化がこのまま続けば食糧需給は逼迫し、食糧価格の上昇は世界の政治経済に大きな緊張を生むことは必死である。食糧問題は五十五億人の人間と、人間の依存する自然システム、資源との間の関係が悪化していることの表れだと著者は指摘する。われわれは人類史上の未知の領域に突入し生存か破壊かの選択を迫られているのである。
問1 ①「これ」とは、ここで何を指すか。 10
1 環境破壊、人口爆発、食糧不足 2 緩慢な変化
3 緩慢な変化の累積の結果 4 緩慢な変化の累積の結果が起こる事態
問2 ②「これらの変化」とは、どのような変化か。 11
1 現在世界では毎年九千万人の人口が増えているが、食糧生産は頭打ちの状態になる
2 人口増や都市化にとる耕地の減少、森林の開発による水資源の減耗、土壌の浸食など
3 品種改良や肥料の開発による増産効果も現在は期待できない
4 アフリカの飢餓の悲劇
問3 筆者がこの文章で一番に言いことは次のどれか。 12
1 われわれは生存か破壊かの選択を迫られている
2 緩慢な変化がいままさに切迫した危機に転化しようとしていること
3 食糧問題は五十五億人の人間と、人間の依存する自然システム、資源との間の関係が悪化しているのを反映していること
4 緩慢な変化がこのまま続けば、食糧危機は世界の政治経済に大きな緊張を生むほどの切迫した危機に転化しようとしていること
問4 作者がこの文章を書く第一目的は何か。 13
1 食糧問題は五十五億人の人間と、人間の依存する自然システム、資源との間の関係が悪化していることの表れだと指摘する
2 この本を書いた目的を説明する
3 この本の宗旨を説明して皆さんにこの本を推薦する
4 われわれは人類史上の未知の領域に突入し生存か破壊かの選択を迫られていることを強調する
(3)喫茶店の窓越しに見える仲のよさそうな女子高生二人。何の気なく二人を見ているとアレアレ不思議な現象が……。一人がテーブルに両肘をつけば( ① )、一人がコーヒーカップを持てば( ① )、と言う具合に二人の動作が似てくるのではないか。
こんな光景を目撃した経験はないだろうか?
わざわざまねをしているわけでもないのに、会話に熱中してくると知らず知らずに相手
と同じポーズをとってしまうことを、心理学では「姿勢反響」と呼ぶ。なぜこうした反応
②
が起こるかといえば、社会的地位が同じであると言うことを確認しているのである。つまり、同じようなくつろぎや緊張のポーズをとることで、「私はあなたとまったく同じですよ」とアピールしているのだ。それを受け取った相手は無意識のうちに気分がよくなり、更に会話も弾むのである。
問1 ( ① )には同じ言葉が入ります。適当なものを一つ選びなさい。 14
1 他人も 2 一人は 3 もう一方も 4 二人とも
問2 筆者は②「姿勢反響」はどんなことの現れだと言っているか。最も適当なものを一つ選びなさい。 15
1 「私はくつろいでいますよ」と言うこと
2 「私はあなたとまったく同じですよ」と言うこと
3 「私はあなたといると気分がいいですよ」と言うこと
4 「私はあなたと同じアピールをしていますよ」と言うこと