次の(1)から(5)の文章を読んで、それぞれの問いに対する答えとして最も適当なものを1∙2∙3∙4から一つ選びなさい。
(1)むき出しの好奇心にブレーキをかけて、はっきり「知らない」と言えず、そして、それを恥ずかしい、と思うようになるのは、それだけ自我意識が確立した、ということに他ならないのだから、( )、それを悪いことだ、とは思わない。しかし、知りたいと言う欲求を抑えて、知ったかぶりをする、と言うのは人生の生き方として、大きなマイナスなのではないか。頭の中には、まだいくらでも情報入る余地がある。好奇心にブレーキをかけるのは、決して懸命なことではないのだ。
【問い】 ( )にはどんな言葉が入るか。 16
1 さっぱり 2 一概に 3 はたして 4 必ず
(2)「太田さん、 変わりませんね 」
(中略)、四年ぶりにホテルのティー•ルームでお会いした編集者のAさんからそのようにいわれたとき、わたしはみた目のことをいわれたのだと思って、自然ににっこりした。
「Aさんも、お変わりありませんわ」
ダーク•グレイのスマートな背広姿は、四年前と変わりがなかったが、その髪にはいくらか白いものが目立つようになったなと思いながらそういったのである。
「いや、ちょうど十五分、遅刻したところがですよ。」
Aさんは眼鏡の奥の眼をいたずらっ子の少年のように、わざと大きくしながら言われた…
(太田治子「気ままなお弁当」)
【問い】 「変わりませんね」とあるが、Aさんは何が変わらないと言ったのか。 17
1 人と会うときは「お変わりありませんね」と言うこと
2 約束の時間にいつもちょうど十五分だけ遅刻するくせ
3 四年前に会ったときの見た目と今回会ったときの見た目
4 人と会うときはいつも外観ばかり気にするくせ
(3)私が書く小説には、しばしばサラリーマンの主人公が登場する。したがって、小説の舞台も、会社や家庭であることが多い。しかし、作家仲間や出版社の人達にも信じられないといった顔をされるのだが、実は、わたしには家庭を持った経験もなければ、会社員生活をした経験もない、全く実際の経験がないことを、さもよく知っているかのように書く。よくそんなことができると 怒られそうだか、そこは会社員の友人たちから得る情報と、わたし自身の想像力とで輔っているというわけである。
【問い】 だれが「怒られそう」なのか。 18
1 筆者 2 作家仲間や出版関係者たち
3 会社員の友人たち 4 読者
(4)科学者という言葉を聞くと、普通の人ではとても考えられないような難しいことばかり研究している人だと思われがちだ。もちろん、専門的な知識がなければ科学の研究はできないでしょう。しかし、科学に研究の出発点は、私たちが普段あたりまえに思っていることがらについて、それがあたりまえかどうか考え直すことにあるのです。それができたら、その人は科学者になる第一歩を踏み出したと言えるかもしれません。
【問い】 「それ」は、何を指しているか。 19
1 難しいことばかり研究していること 2 専門的な知識を持つこと
3 あたりまえのことを考え直すこと 4 ふつうのひとがふだん考えること
(5)朝の九時に仕事を初め、夕方の六時には終えるという習慣を持つようになって三年ほどになる。別に深い思いがあってのことではなく、ただの気まぐれから普通の会社勤めをしている人と同じリズムで暮らすようになっただけなのだ。しかし、一度そのようにしてみると、それはそれなりに楽しいもので、六時に椅子から立ち上がり、ラジオのスイッチを入れ、ぼんやりと窓の外を眺めながら、さて今夜はどうしよう、と考える気分はなかなか悪くないものだった。
(沢木耕太郎 「象が空を」より)
【問い】 この文章から、作者の職業は何だろう。 20
1 サラリーマン 2 大学教授 3 農業 4 文筆家(作家)