基礎的なことばかりですが、かなり上級の人でもよく間違うところです
1.文体の不一致
「です・ます体」と「だ体」を混ぜて使ってしまう例です。わかっているはずなのに、よくある間違いです。
例:私が住んでいるのは阜新です。阜新は瀋陽からバスで4時間ぐらいの町だ。(-->町です)
2.時制の間違い
これも、よくわかっているのに、注意不足のため間違えてしまうことが多いようです。
例1:子供の頃、夏休みはいつも友だちと川で泳いで遊びます。( -->遊びました)
例2:私は生まれてからいままで、大連に住んでいました。( -->住んでいます)
ヒント:「今も住んでいる」という意味ですから、過去形にするのは間違いです。また、「今まで」を「ずっと」に変えたほうがもっと自然です。
3.「ある」と「いる」の間違い
中国語には「ある」と「いる」の区別がありませんが、日本人はこの二つを区別して使います。人間だけではなく、魚や虫も「いる」を使わなくてはなりません。
例1:人口の大多数は朝鮮族ですが、ほかの民族もあります。( -->民族もいます)
例2:小さい時は、林でカブト虫をとったりしましたが、今は林がなくなり虫もほとんどありません。( -->虫もほとんどいません)
4.「~ている」の使い方の間違い
「~ている」は「動作・行為の進行」と「状態の継続」に使います。しかし、「動作の繰り返し」には使いません。
例1:新年や国慶節には、ふるさとへもどって家族と一緒に過ごしています。( -->過ごします)
例2:ふるさとに帰るたびに「もし小さい時に戻れればいいが……」という気持ちを持っています。( -->気持ちになります)
ヒント:「帰るたび」は繰り返しを表しますから、「持っている」ではなく、「なる」を使います。
5.指示詞の間違い
作文の中で「あれ・あの・あそこ」を使うことはほとんどありません。「あれ」というのは、「書き手」と「読み手」の双方が知っている事柄を指す時だけに使います。したがって、友人や知人に手紙を書く時にはたまに使うことがありますが、普通の作文で使うことはありません。作文の中では必ず「それ」を使います。
例1:私は「把梨」という梨が大好きです。あの梨は柔らかくていい香がします。( -->その梨は)
例2:田中さんは私の古い友人です。あの人は中国語がとても上手です。( -->田中さんは中国語がとても上手です)
ヒント:「その人は」でもいいのですが「古い友人」なので、名前で呼んだほうが自然です。
6.敬語の間違い
「敬語を使わない間違い」よりも「敬語を使いすぎる間違い」が多く見られます。日本語の習慣では、自分の家族や自分のことに敬語を使うことはありません。この点が朝鮮語とは違う点で、朝鮮語を母語とする人は注意が必要です。
例1:私は私のふるさとがますます豊かになることをお祈りいたします。(-->祈っています)
ヒント:「私のふるさと」なので、敬語は使わない。
例2:ふるさとに電話をすると、いつも両親は「都会の生活は疲れるだろう」とおっしゃいます。( -->といいます)
7.中国語を直訳してしまった間違い
とくに動詞の使い方を間違うことが多いようです。日本語と中国語は同じ動詞を使っていても、少し意味が違うことがよくあるので、注意が必要です。
例1:ホテルに住みます。(-->泊まります)
ヒント:日本語の「住む」は長期間、そこで生活することを意味します。
例2:山を下がった時、大雨が降ってきました。( -->おりた時)
例3:全国人民の絶えず努力のおかげで、2008年のオリンピックは中国で開催すると決定しました。( -->絶えず努力したおかげで)
ヒント:「努力」だけでは動詞になりません。動詞として使う時は「努力する」です。
例4:私たちは、涙が出ながら離れた。( -->涙を流しながら別れた)
作文をうまく書くために必要なことは、とにかく「たくさん書く」ことです。書けば書くほどうまくなります。また、自分の母語で作文を書くのが下手な人は、日本語で作文を書くのも下手です。生徒を指導する時は、母語でもたくさん作文を書くように指導してください。
留学生の作文を読んでいると、名前を見なくても「中国語話者だな」とわかることがあります。特定の語彙を使いすぎたり、使い方が中国語(漢語)風だったりするので、それが「不自然な日本語」に感じられてしまうのです。その典型的な例をいくつか紹介したいと思います。
1.「まじめな」「感心する」の使い方
例1:教師のまじめな仕事ぶりに感心しました。
例2:本田先生のまじめな指導のもとで、私の発音はよくなった。
「まじめ」は、目上の人が目下の人に対して「まじめでいい青年だ」と評価したり、「まじめに勉強しなさい」と注意したりする時に使います。例1、2のように先生の授業の様子や指導に対して使うのは適当ではありません。例1、2の場合は「熱心な」を使うといいでしょう。ほかには「真剣な」「真摯な」「ひたむきな」「情熱的な」などの言葉を場面に応じて使います。ちなみに「まじめ」という言葉のイメージは必ずしもいいわけではありません。例えば、「バカまじめ」「クソまじめ」「きまじめ」といった言葉がありますが、いずれも「まじめすぎてよくない」ことを表しています。
「感心する」も、一般的に目上の人が目下の人を評価する時に使います。したがって、目上の人に対して「感心する」を使うのはふさわしくありません。「感銘を受ける」「感激する」「感動する」などを使うといいでしょう。また、自分が教えてもらったような場合は「感謝する」を使うことが多いと思います。
2.「よく」の使い方
例3:新しい知識をいろいろ勉強したので、これからよく教えることができる。
例4:研修会に参加してよく勉強になりました。
「よく」という言葉には(1)うまく、上手に、(2)回数が多い、頻度が高い、という二つの意味があります。しかし「よく~する」「よく~(に)なる」という文型には、(2)の意味しかありません。したがって「うまく~する」という意味で使っている例3の文は誤りです。また、例4は、「よく」を使って「程度」を表現しようとしているので不自然な文になっています。
例3の場合、「これからうまく/もっと上手に教えることができる」、例4の場合、「研修会に参加してとても/たいへん勉強になりました」などの言い方がいいでしょう。
3.「珍しいチャンス」という使い方
例5:今度の研修会のような珍しいチャンス(機会)を生かして、一生懸命勉強したいです。
中国語の「珍」には「貴重な」「価値が高い」という意味がありますが、日本語の「珍しい」は「数が少ない」という意味です。もちろん「数が少ないから、価値がある」という場合がありますが、必ずしもそうとは限りません。また、例えば、晩秋にチョウが飛んでいるのを見て、「珍しいですね」という場合は、「不思議だ」「奇妙だ」というニュアンスを含みます。したがって例5では、「チャンスが少ない」という意味を表すと同時に、そのようなチャンスがあることが「不思議だ、奇妙だ」というニュアンスも含んでしまいます。この場合は「貴重だ」を使います。これは、数の多少に関係なく、たいへん価値があること表します。したがって「貴重な水資源を大切に」という表現は適切ですが、「珍しい水資源を大切に」という言い方は適切ではありません。例5の場合も「貴重なチャンス」「得がたいチャンス」「めったにないチャンス」と言うべきでしょう。
これらの例は、中国出身の日本語学習者(母語が漢語、朝鮮語、モンゴル語のいずれであっても)によく見られます。作文指導の参考にしてください。