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悪霊シリーズ第4巻 悪霊はひとりぼっち
时间:2007-09-20 09:59:34  来源:|  作者:

【悪霊はひとりぼっち】
           【小野不由美】

 

プロローグ


「ふぅ……ん」
 思わずつぶやきながら、あたしは新聞をデスクの上に広げた。活字の上に頬杖《ほおづえ》をつく。 新聞の三面に、大きな活字が並んでいた。
 新聞の三面に、大きな活字が並んでいた。
『生徒三十五人、集団ヒステリー』
 昨日、千葉にある公立高校で起こった事件。授業中、あるクラスの生徒が眼に見えない耸肿悚驀y《か》まれた、と訴《うった》えて大騒《おおさわ》ぎになったらしい。「……はぁー」
 あたし、谷山麻衣は十六歳の学生でアル。ま、自分で言うのもなんだけど、ごくフツウのマジメな学生だ(本当だってば)。けど、ちょっと変わったアルバイトをしているんだ、これが。そのバイト先が今新聞を読んでいるここ、『渋谷《しぶや》サイキック・リサーチ』。
 東京は渋谷の一角にオフィスを構える、わが『渋谷サイキック・リサーチ』は、心霊現象の調査事務所だ。つまり、幽霊や超能力や、そういう心霊現象と呼ばれる不可思議《ふかしぎ》な事件を調査する団体。
 まぁ、こういうところでアルバイトなんかをやってると、幽霊屋敷《やしき》やらに出かけることもあるわけで。当然、世にもめずらしい体験をすることになる。幽霊にお会いするとか、超能力少女とお友達になるとか。
 そんなあたしだけど、この新聞記事にはみょうに感動してしまったのだ。
 何度も記事を読んでいたら、千秋《ちあき》センパイに声をかけられた。
「どーしたの、麻衣」
 読んでいた本から顔をあげて、あたしの顔を見ている。
 笠井《かさい》千秋。十八歳、都内の女子高校に在学中の超能力少女。スプーン曲《ま》げが得意だったけど、ちょっとスランプ。現在『渋谷サイキック・リサーチ』に不調脱出のためトレーニングに通っている。
「なんかあった?」
 聞きながら新聞をのぞきこんでくる千秋センパイに、あたしは問題の記事を示した。
「ほら、これ。また緑陵《りょくりょう》高校だよ」
 緑陵高校。近ごろ一週間とおかず新聞に登場する学校だった。
「またかぁ。今度はなに?」
「藝yまれるって、教室がパニックになったんだって」
「いぬ?」
「うん。先生には見えなかったんだけど、生徒がみんな噛《か》まれたって騒ぎ出したって、噛まれたって訴《うった》えた学生の中には、本当に犬かなにかに噛まれたみたいなケガをしてる人もいたんだって」
「へぇぇ……原因は?」
「集団ヒステリーってことになってるよ。『同高校では近ごろ不可解な事件が続いており、これに動揺《どうよう》した生徒が軽いヒステリーを起こし、さらにそれが他の生徒にも伝染したと考えられる』……だって」
「でも、ケガした人もいるんでしょ? それは?」
「説明、ナシ」
「ま、ありがちだわね」
 緑陵高校はここひと月ほどの間に、新聞にのっただけですでに四件の事件が起きている。
「最初は何だっけ」
「集団登校拒否だったかな」
 あるクラスの女の子全員が、幽霊が出ると言って、学校を休んだのが最初だった。
 次に報道されたのが、集団中毒事件。あるクラスの生徒が半数近く、急に吐《は》き気《け》を訴えて苦しみだした。食中毒の症状に似ていたけど、けっきょく食中毒ではなかったらしい。原因は不明のまま。
 千秋センパイは天井《てんじょう》をにらむ。
「んー、その次が更衣室の火事か」
「正確に言うと、ボヤ。秋以来、体育館の更衣室で何度かボヤが続いているのが、バレたんだよね。それを新聞にスッパぬかれたというわけ」
「放火じゃないの?」
「それが、教師が厳重に見張ってたらしいんだよね。鍵《かぎ》までかけて、ぜったいに人が入れるはずないのに、ボヤが起こったの」
 話をしながら、あたしは新聞にハサミを入れる。問題の記事を切り抜くために。ハサミを使いながら、
「その次、四番目が除霊事件。
 学生がこれは何かのタタリだって、自分たちで除霊をしようとしたんだ」
 千秋センパイは指をはじく。
「何か月か前に、自殺した生徒がいたんだ」
「うん。九月ぐらいに自殺した男の子がいて、その子のタタリだって信じてたらしいのよね。その除霊をするって言って体育館に集まってて、それを先生はやめさせようとして、けっきょくケンカになったの」
「……で、今度で五回目か」
 千秋センパイは、あたしが切り抜いた新聞記事をつまみあげる。目の前にかざしたところで、声がした。
「何が五回目?」
 あたしと千秋センパイが声のした入り口のほうを見ると、ちょうどタカがコートを脱《ぬ》いでるところだった。
 タカ。本名、高橋優子《たかはしゆうこ》。十七歳、学生。千秋センパイの後輩。もともとは、我が『渋谷サイキック・リサーチ』に事件の依頼《いらい》をしてきた人なのだけど、最近はアルバイトとして雑用をやりに来てる。
 タカはちょこちょこ歩いてきて、あたしたちの手元をのぞきこむ。
「なぁに?」
 千秋センパイが切り抜きを見せた。
「緑陵高校。まただってよ」
「またぁ? すごいねー」
 タカの言葉に、あたしは身を仱瓿訾筏皮筏蓼Α


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