資金に含まれる有価証券の評価に低価法を採用した場合の評価損の金額や外貨預金等の期末の換算差損益も加算または減算されます。
(5) 負債の増(減)
買掛金、未払金、預り金等の負債項目の期首・期末の差額を計算し、資産とは反対に、増加している時は減算し、減少していれば加算します。負債が増えると資金は増え、逆は減るという訳です。借入金や社債等は資金調達活動に伴う収支として増加は資金の増、減少は資金の減と計算されます。
このように、貸借対照表と損益計算書を組み合わせて計算することによって資金ないしキャッシュフロー計算書を間接的に作ることができます。貸借対照表や損益計算書から直接、諸比率を計算して財務諸表の分析をするばかりでなく、それらを利用して間接的に資金計算書を作成して分析すると、表面上では解らない部分を見付け出すこともできるでしょう。
[資金計算書による財務諸表の分析]
有価証券報告書の資金収支の状況の表は事業活動に伴う収支と資金調達活動に伴う収支の二つに分けて示しております。事業活動に伴う収支はさらに営業活動と投資活動の二つに分けて作成することもできます。あるいは、事業活動に伴う収支に金融収支(利息配当の収支)を加えて経常収支を計算することもできます。
損益計算書の上では利益を計上していても、経常収支が赤字ということは時としてあるものです。売上高が増えるとき経常収支が赤字になることがあります。売上が増える時に在庫が増えることが多いのも一つの原因です。売上代金回収の期間の方が仕入れの支払い期間より長いとなおさら赤字の原因となります。
伸びている時の一時的な赤字は健全といえるのですが、例えば売上高が増加しないのに在庫が著しく増えたり、回収の遅れている債権が増えたりした時の経常収支の赤字には注意が必要です。このような傾向が何期も続きますと問題です。赤字の真の原因が何なのか調べてみる必要があります。
[資金は有効に使われているか]
期末の資金残高の中身の動きも注意する必要があります。資金は「現金及び預金」だけでなく、有価証券等の短期の投資も入るのですから、それらがどのように哂盲丹欷皮い毪摔忾v心をもたねばなりません。
第一に、資金残高の相対的な大きさが問題になります。資金は支払手段ですから常にある程度の用意は必要ですが、円滑な取引が可能な程度を超えて多くの額を持たねばならない理由はありません。業種、取引形態によっても異なりますが、売上高の2~3カ月分も常時置いておく必要はないでしょう。本業と比肩しうるくらいの利益率の投資対象があるならば哂盲筏评妞蚣冥挨韦猡瑜い扦工⒆蚪瘠韦瑜Δ私鹑谏唐筏卫胜蔚亭い趣摔悉扦毪坤辟Y金残高を無駄に持たないよう心がける方が効率の高い経営といえましょう。
本業の成長性が高く、しかもある程度の収益性が期待できるならば、事業の拡大に投資すべきであるし、収益性の高い新規事業に進出するチャンスがあるならば、リスクとの見合いもありますが積極的に投資をすることも考えられます。そのような投資先がない場合はまず利息の高い借入金を返済する必要があります。
資金余剰が生じた場合の哂盲问侄韦趣筏谱陨缰晔饯钨I入償却があります。企業経営の目的が株主の利益を増やすこと、即ち、株主資本利益率(ROE)を高めることにあるならば、自社株式の買入償却はそのためには有効な方法といえます。
株主資本利益率=当期純利益/株主資本
(ROE) =(当期純利益/売上高)×(売上高/総資本)×(総資本/株主資本)
=売上高利益率×総資産回転率×レバレッジ
(この式は株主資本利益率を上げるには売上高利益率を上げるか、総資本回転率を上げるか、それとも負債の割合を増やすかの三つの方法があることを示してます。)
余剰資金を使って自社株式を消却すれば、総資本も減って回転率が高まることもありますが、レバレッジ(総資本の中の負債の比率)が上がる効果の方が大きいことが解ります。つまりROE計算の分母の株主資本が小さくなることによって、売上高利益率は変わらなくてもROEが高くなる計算になるのです。一方、自社株式の買入消却によって発行済株式数が減少しますから、1株当り利益が増える効果があるのも当然です。
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第7回 連結財務諸表
分社経営と連結財務諸表
例えば加工食品といったような、全国的に消費者向けの商品を製造販売する会社が、販売部門を子会社として独立させることがよくあります。販売会社は親会社から仕入れた商品を全国の主要な都市に設置した支店、営業所によって直接その周辺地域にある小売店に、またはさらに地域の問屋さんを通じて他の小売店に商品を販売します。
このような流通形態をとっていますと、商品は小売店の店頭に並んでいるだけでなく、製造会社はもちろん販売子会社、問屋にもそれぞれの顧客から注文があればすぐ応じられるように在庫されます。
ここで問題になるのは子会社である販売会社にある在庫です。子会社はもう十分な在庫を持っていると思っていても、親会社から要請されれば買い取ることになるでしょう。一方、親会社ではたとえ相手は子会社でも出荷すれば売上に計上されます。売上高と原価との差額は親会社では利益に計上されます。
ところが、この親・子会社を一体として経営されている組織と見た場合、親会社が子会社に売っても、子会社から外部へ売られない限りこの企業グループにとっては売上とは認められないでしょう。
親会社単独の経営活動を表す財務諸表を個別財務諸表というのに対して、親・子会社の経営活動を一体の企業グループとして表すように作られたのを連結財務諸表といいます。
連結財務諸表は粉飾決算を防止
上の例でいえば、連結財務諸表上では、子会社である販売会社から商品が出荷されない限り売上高とはなりません。親会社は子会社へ売ったことにして個別財務諸表では利益を計上できても、企業グループにとってはその利益は絵に描いた餅(未実現利益)です。子会社から外部に出荷されない限り在庫になりますから、子会社への売上高で親会社に計上された未実現利益も連結財務諸表では消えてなくなります。
親会社を頂点としてその下に多数の子会社がグループとなって、一体として経営されている会社が最近では多くなってきています。上の例でも解るように、このような企業グループの経営活動は親会社の個別財務諸表だけを見ていたのでは実態がわかりません。
わが国では証券取引法で有価証券報告書、届出書の添付書類として連結財務諸表が制度化されたのは昭和52年のことで、まだ20年の歴史しか持っていません。添付書類から本体に組み込まれるようになったのは、平成3年4月以後に開始する事業年度からですから、まだ5年しかたっていません。
昭和40年代には上の例のように販売子会社を利用して押込み販売をすることによって粉飾決算まがいのことをやった例が多く見られました。わが国の連結財務諸表制度は、このような子会社を利用しての粉飾決算まがいを防止することを主な目的として--これが連結財務諸表を作成することの本来の目的ではないのですが--昭和52年に制度化されたのです。
今ではわが国の公開会社の中で連結財務諸表を作成していない会社の方が少なくなっているようです。平成7年度でみますと、東証1部上場約1,300社の内約4分の3程度が連結財務諸表を作成開示しています。連続性のある統計ではありませんが、昭和61年度では有価証券報告書提出会社の61%が連結財務諸表を提出していたようですから、9年間で10%以上増えたとみてよいでしょう。最近は子会社の形で事業の分野や活動の面を広げている企業が増えており、財政状態や経営成績の実態を見るのに連結財務諸表の重要性はますます高まりつつあります。
親子会社間取引の消去
大会社が子会社を作って事業を展開するのには色々な理由があると思いますが、おおよそ分類すると次のように考えられます。
i) 販売部門子会社-総代理店の場合と地区別販売会社(国内及び外国)をつくる場合。
ii) 製造部門子会社-親会社が販売会社で製造の全てを子会社が行う場合と、製造工程の一部だけを子会社に受け持たせる。
iii) 中間品製造会社の場合その製品の加工製品の製造を子会社に受け持たせる。
iv) 事業の多角化部門を子会社に受け持たせる。
この内i)、ii)及びiii)のケースでは必ず親会社と子会社の間で製品または商品の売買が行われます。i)は冒頭に説明したケースです。例えば、子会社が作った部品を購入して親会社が製品を組み立てるようなのが、ii)の典型です。また、プラスティックの樹脂メーカーが成型加工会社を子会社に持つようなのが、iii)の例になります。
これらの場合、親・子会社間の取引は連結財務諸表では会社内部の移動と認識されますから、売上/仕入は消去されます。子会社の作った部品は親会社に出荷すれば子会社では売上高ですが、企業グループの連結財務諸表では親会社が製品に組み立てて出荷するまでは売上高にはならず、在庫となります。したがって、子会社が親会社に売上げた時に計上した利益も連結財務諸表では消去されます。その代わり、親会社が売上げた時には部品の原価は子会社からの仕入価額ではなく、子会社での製造原価が部品の原価となり、親会社の製品の製造原価は低く(利益は大きく)なります。
もうお解りと思いますが、連結財務諸表は親会社と子会社それぞれの個別財務諸表を単に合計した財務諸表ではありません。親会社の下につらなる子会社が親会社の意志で一体となった一つの組織体としての活動を表す財務諸表です。売上/仕入、債権/債務等が重なるところは消去されて作成されるのです。
連結財務諸表の重要なポイント
連結財務諸表の作成にはかなり複雑な手続きが必要で簡単には説明しきれません。そこで、以下多少難しい説明になるかもしれませんが、連結財務諸表作成の骨組みについて説明します。
(1)連結の範囲
現在のわが国の規則では、連結の対象となる会社は議決権の過半数を実質的に所有されている子会社となっています。実質的に所有というのは名義がどのようになっていてもということと、直接だけではなく間接的に持っている分も含めることを意味してます。
原則として全ての子会社を連結の範囲に含めねばなりませんが、更生会社とか清算中の会社のように組織的に一体と認められなかったり、継続性に問題があると認められる会社や議決権の所有が一時的な場合等には連結の対象から外されることになります。また、「企業集団の財政状態及び経営成績に関する合理的な判断を妨げない程度に」と限定されていますが、重要性に乏しい子会社は連結対象会社とはならないことがあります。この重要性の判断基準については通達によって細かな算定基準が示されています。連結の範囲から外された子会社の株式の評価は下記の(4)で説明する持分法が適用されます。
(2)親会社の投資と子会社の資本の消去
親会社の個別財務諸表(親会社単体の財務諸表を個別財務諸表といいます)の貸借対照表には通常、子会社株式は購入原価(額面で払い込んだものならば1株当たり額面金額)で計上されます。ところが、連結財務諸表を作成するときは親会社の持つ子会社株式(投資)は取得した日を基準に子会社の資本勘定を相手として消去されます。ところが、子会社株式の取得価額が子会社の資本勘定を上回っていたり、あるいは逆に下回る場合は、消し切れなかったり、余りが出たりします。そのような不足や余りは、その発生原因を調べて適切な勘定に振替えます。例えば、土地の含み益の分だけ高く買ったような場合は土地の価額に振替えるのです。