翅(はね)わつててんたう虫の飛びいづる——3日前の「折々のうた」で紹介された高野素十(たかのすじゅう)の句だ。虫の一瞬の動きを描いた句は多い。自然写真家の栗林慧(くりばやしさとし)さん(67)は、それをカメラで追っている。
“破翼处,彩瓢正欲飞”——这是3天前《时令短歌》所介绍的高野素十的俳句。描写昆虫动作瞬间的俳句多多。自然摄影家栗林慧先生(67岁)则是用照相机来留住这样的瞬间。
近著「栗林慧の昆虫ワンダーランド」(朝日新聞社刊)などの映像を見せると、大人も子どもも一様に驚く。虫のクローズアップは珍しくないが、背景がくっきり映っているからだ。
把他的近著《栗林慧的昆虫仙境》(朝日报社社刊)等书中的照片给人看时,无论大人孩子都会为之惊叹。单是昆虫的特写,则并不稀罕,神奇的是,他的照片,背景清晰异常。
海に浮かぶ島々を見下ろし、何事かを考える風情のトノサマバッタ。草むらに仁王立(におうだ)ちになって、頭から敵にかぶりつくカマキリ。樹液を求めて樹上で闘うカブトムシたち。作品を見る側も、自分が虫になって周囲に立ち向かう気分になる。
俯瞰点点海岛,若有所思的飞蝗。草丛中威然耸立,遇敌搂头就劈的螳螂。为争吸树汁而在树上一场混战的独角仙们。这些作品看着看着,仿佛我们自己就变成了昆虫,时刻准备着对付周围所发生的情况。
特殊な撮影を可能にしたのが、40年にわたって開発を続けてきた「虫の目カメラ」だ。医療用のカメラに改造を加え、先端に直径3ミリのレンズをはめ込んだ。被写体となるカマキリやバッタの目より小さい。「逃げることしか考えていない生き物」に向け、3センチ以下の距離までゆっくりレンズを近づけていく。逃げるか逃げないか、長年のつきあいで、虫の精神状態がわかるようになってきたそうだ。
这种特殊摄影的成功,实在是有赖于连续40年来研究开发所得的“虫眼照相机”。他将医用照相机进行改装,在前端嵌入直径3毫米的镜头。比螳螂、蝗虫这些拍摄对象的眼睛还小。对准这些“一心只想逃跑的生物”,将镜头慢慢地伸到3厘米以内的距离。至于昆虫是否真逃,据说由于长年累月地与昆虫打交道,他已能洞察昆虫的内心世界了。
自宅兼スタジオは、長崎県平戸市にある。東京から飛行機とバス、鉄道を仱昃@いで6時間。むせかえる緑の中、虫たちのざわめきが至る所から聞こえる。
栗林先生的住家兼工作室位于长崎县平户市。从东京坐飞机,然后改乘巴士、火车过去得化6个小时。一片浓得化不开的绿色中,昆虫的唧唧啼鸣声随处可闻。
今の都会の生活では、虫に巡り合うことは難しい。「虫はよく死んでしまいます。里山に連れて行って、お子さんに虫を見せてやってください。いのちの大切さを知るには、一番だと思います」。栗林さんは、そう話した。
在如今的都市生活中,已很难与昆虫邂逅相逢了。栗林先生说:“在城里昆虫会马上死掉。带孩子到近处的山里去走走吧,让孩子们看看昆虫。这是了解生命之珍贵的最好的方法”。
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栗林慧
1939年 中国・瀋陽で生まれる
1959年~69年 陸上自衛隊に4年間・保険会社に5年間勤務
1962年~63年 勤務の傍ら、東京綜合写真専門学校で写真の基礎を学ぶ
1964年~66年 アマチュア時代に、ペンタックス国際写真コンテスト、アンスコカラーフォトコンテスト、学研フォトコンテストなどで、推薦・最優秀賞を連続受賞
1969年 フリーの生物生態写真家として活動を始める。
1978年 日本写真協会(PSJ)新人賞受賞
1979年 Nikon Salon写真展「源氏螢」で伊奈信男賞を受賞
1991年 西日本文化賞受賞
1992年 日本写真協会(PSJ)年度賞受賞
1992年 SONYハイビジョンソフト「ファーブルシリーズ・トンボ」で地球環境映祭・国際高品位映像祭のハイビジョン撮影賞受賞
2000年 平成12年度・第41回科学技術映像祭で内閣総理大臣賞受賞
2001年 講談社「週間現代」ドキュメント写真大賞受賞
2002年 日本写真協会(PSJ)写真集「栗林慧全仕事」で年度賞受賞
2003年 平成14年度・第43回科学技術映像祭で テレビ朝日系放送「素敵な宇宙船地球号」『里山を育む昆虫たち』が文部科学大臣賞受賞