歳末の混雑の中、高速道路の車が、歩くようにゆっくりと動くのが見える。街角には無数の豆電球が瞬き、どこからともなくクリスマスの歌が流れてくる。いつもながらの季節の光景だ。
年终岁末,一片拥挤,高速公路上的车移动得很慢,就像是在走路。街角处无数的小灯泡一眨一眨的,圣诞的歌声飘飘荡荡,也分不清来自何处。这个时节的景象,似乎也总是这个样子。
終戦の翌年というから今から60年前に、作家の太宰治からクリスマスプレゼントをもらった母と娘がいた。それは、ふたりをモデルにして太宰が書いた短編小説「メリイクリスマス」の載った雑誌「中央公論」だった。
终战后的第二年,也就是距今60年前,有一双母女得到了作家太宰治的圣诞礼物。那是一本杂志——《中央公论》,上面刊有太宰以她们娘俩为原形而创作的短篇小说《圣诞快乐》。
小説は、主人公の笠井が東京郊外の本屋で久しぶりに娘と出会うところで始まる。娘の母親は笠井にとって「思ひ出のひと」のひとりで、成長した娘の姿はまぶしく映った。娘は、はじめは母は健在だと言うが、笠井を案内して家の前まで来た時に突然泣き出し、空襲で亡くなったと告げる。
小说以主人公笠井在东京郊外的书店与姑娘久别重逢开场。姑娘的母亲是笠井的“记忆中人”之一,而已经长大成人的女儿身上洋溢着她昔日的风采。那姑娘一开始说母亲还健在,可她领着笠井到家后,突然哭了起来,说母亲在空袭中去世了。
ふたりは、母をしのんでしばらく店で飲む。居合わせた酔客が、通りを行く米兵に向かって出し抜けに叫ぶ場面で小説は終わる。「ハロー、メリイ、クリスマアス」。後味に敗戦の苦さも感じられる。
两人缅怀着母亲,在酒馆里喝了一会儿。店里一个喝醉了的客人,冷不防地对着走过身边的美军士兵叫道:“哈罗!霉你,哭你死妈死”。小说以此结尾,回味中给人一种战败的苦涩。
小説で娘の「シヅエ子ちゃん」として出てくるのが、当時18歳だった林聖子さんだ。実際には、母の富子さんは終戦から3年後に亡くなった。やがて、聖子さんは新宿に酒場「風紋」を開く。今月、45周年を迎えた。風に吹かれて姿を変えてゆく風紋(ふうもん)のように、時代は移り変わった。「あっという間でしたね」と聖子さん。
小说中的姑娘“静江子”,就是当年18岁的林圣子小姐。在现实生活中,她的母亲富子女士是在终战3年后才故世的。不久后,圣子小姐在新宿开了名叫“风纹”的酒吧。在本月,迎来了开店的45周年。真像风吹过后模样也随之改变的风纹一样,时代在发生着变化。“真是一眨眼的工夫啊”,圣子感慨万千。
60年前、太宰は着物の懐から雑誌を取り出して言った。「これは、ぼくのクリスマスプレゼント」。その時の、ひどくまじめな顔は、今も鮮やかに胸に残っているという。
60年前,太宰从和服怀中掏出杂志时说道:“这个,是我的圣诞礼物”。圣子说,他那时那异常认真的表情,至今仍鲜明地留在自己胸中。