「見ておろう、見ておろう、好いか」と云いながら爺さんが笛を吹いて、輪の上をぐるぐる廻り出した。自分は手拭ばかり見ていた。けれども手拭はいっこう動かなかった。
“瞧一瞧!看一看!看好了啊!”老爷子一边吆喝着一边吹着哨子,踩着那个圆圈兜起了圈子。我也一个劲儿地盯着手巾看,可是那条手巾却依然纹丝儿不动。
爺さんは笛をぴいぴい吹いた。そうして輪の上を何遍も廻った。草鞋(わらじ)を爪立(つまだ)てるように、抜足(ぬきあし)をするように、手拭に遠慮をするように、廻った。怖そうにも見えた。面白そうにもあった。
老爷子将哨子吹得“嘀—嘀—”直响。人也在圆圈上兜了好几圈。他踮起穿着草鞋的脚尖、蹑手蹑脚地、似乎对手巾颇为忌惮地兜着圈子。那样子有点吓人,也很好玩。
やがて爺さんは笛をぴたりとやめた。そうして、肩に掛けた箱の口を開けて、手拭の首を、ちょいと撮(つま)んで、ぽっと放り込んだ。
过了一会儿,老爷子的哨子声嘎然而止。然后他打开挎在肩上的匣子,抓住手巾的一头,“嗖”地一把捏起,“啪”地扔到了匣子里。
「こうしておくと、箱の中で蛇になる。今に見せてやる。今に見せてやる」と云いながら、爺さんが真直に歩き出した。柳の下を抜けて、細い路を真直に下りて行った。自分は蛇が見たいから、細い道をどこまでも追いて行った。爺さんは時々「今になる」と云ったり、「蛇になる」と云ったりして歩いて行く。しまいには、
“收进了匣子,它就变蛇了。等着瞧吧。等着瞧吧!等一下就给你们看!”老爷子嘴里说着,迈开脚步,径直地走了起来。他穿过柳树,沿着小路笔直地走了下去。因为想看那条手巾变得蛇,我也沿着小路追了下去。老爷子一边走,一边嘴里不时嘟囔着:“就要变了”、“手巾变蛇了”,最后他哼唱着:
「今になる、蛇になる、 きっとなる、笛が鳴る、」
“就要变了,手巾变蛇了,肯定变了,铜哨要响了。”
と唄いながら、とうとう河(かわ)の岸へ出た。橋も舟もないから、ここで休んで箱の中の蛇を見せるだろうと思っていると、爺さんはざぶざぶ河の中へ這入り出した。始めは膝くらいの深さであったが、だんだん腰から、胸の方まで水に浸って見えなくなる。それでも爺さんは
最后他来到了河边。河边上既没有桥也没有船,我以为他或许会在这里休息一下,将盒子里的蛇给我们看,谁知他竟然哗啦哗啦地趟进了河里。起初水深及膝,随后就逐渐地淹到了腰部,最后水到了胸部,人都快要看不见了。即便这样老爷子仍在不停地唱着:
「深くなる、夜になる、 真直になる」
“变深了,入夜了,变直了。”
と唄いながら、どこまでも真直に歩いて行った。そうして髯も顔も頭も頭巾もまるで見えなくなってしまった。
老爷子一直往前走。就这样,直到胡子、脸、头、头巾全都无影无踪。
自分は爺さんが向岸へ上がった時に、蛇を見せるだろうと思って、蘆(あし)の鳴る所に立って、たった一人いつまでも待っていた。けれども爺さんは、とうとう上がって来なかった。
我心想也许老爷子在对面上岸后,会给我们看手巾变的蛇的,所以一直站在沙沙作响的芦苇丛中等着,孤零零地一人傻等着。然而,那老爷子却始终没有上岸