天声人語
2010年12月15日(水)付
だめな政治や、困った隣国をぼやくことが多いせいか、心がほっこりする話も読みたいというご意見をいただく。うなずくしかない。寒々しい世相ゆえ、湯たんぽみたいな話には書き手も救われる▼
也许是因为老唠叨些糟糕的政治、麻烦的邻国的缘故吧,有读者提意见说,也想读一些温暖人心的故事。我只好从命。世风浇薄,所以暖水袋般的故事也救了我这个作家。
東京の声欄に「席とってくれた優しい少年」が載った。投稿者(30)は妊娠6カ月。いつものように混んだ通勤電車で立っていると、隣に立つ小学生がおなかを見つめている。大きな駅で大勢が降りた時、少年は空いた席に走り、ランドセルを置いて戻ってきたそうだ。「こちらに座って下さい」▼
本报东京版的《声》栏(读者来信栏目)刊登了《为我占座位的好心男孩儿》。投稿者(30岁)妊娠6个月。她说,她像往常一样站在拥挤的上下班列车中,站在旁边的小学生一直盯着她的肚子。在大站很多人下车后,男孩儿跑到空出的座位跟前,放上书包,又跑了回来。对我说:“请坐这儿吧!”
「エスコートされるままに乗客の間をすり抜け、空席に座りました。温かい気持ちで胸が詰まり、とっさに言えたのはありがとうの一言だけ」。気恥ずかしいのか、その子はすぐに離れたという▼
“在他的护送下,我从乘客之间挤过去,坐到了空座位上。一股暖流直塞胸臆,情急之下能说的只有‘谢谢’一句话而已。”那个小孩儿似乎不好意思,马上就离开了。
声欄では先頃、「妊娠マーク」を振りかざすような女性に65歳の男性が苦言を寄せた。「善意を軽く見ないで」と。これには妊婦さんらが「温かく見守って」と異を唱えた。読めばどちらも納得できるが、車内の緊張やイライラは小さな気遣いで大団円にできると、少年の好意が教えている▼
在《声》栏,前些日子,有一个65岁的男性对挥舞“妊娠标记”的女性寄来忠告:“不要将善意视为当然。”对此,孕妇们提出异议:“请呵护孕妇。”读起来,双方说得都有道理,但是车内的紧张和焦虑只需小小的体贴就能获得大团圆的结局,这是男孩儿的好意告诉我们的。
おなかの赤ちゃんにまず備わるのは聴覚だという。妊娠中期から母の声、次いで外の音が聞こえ始めるらしい。誕生前から、お母さんと一緒にたくさんの「ありがとう」を聞ける子は幸せだ▼
据说腹中的胎儿首先具备的是听觉。好像从妊娠中期起就开始听到妈妈的声音,接着听到外面的声响。从诞生前就能和母亲一起听到许多“谢谢”的孩子是幸福的。
おなかの大きい人を見かけることは少なくなった。日本の将来のためにも、妊婦には心安らぐ日々を、生まれくる命には健やかに育ちうる世の中を贈りたいものだ。それでまた、小欄は懲りずにぼやくことになる。
已经很少碰见挺着大肚子的人了。为了日本的将来,希望大家把舒心的每一天奉献给孕妇,把能够健康成长的社会奉献给初生的生命。因此本栏又要不知悔改地唠叨了。