您当前的位置:首页 > 学习资料 > 日本文学 > 原著
舞姬 森鸥外 (日文版)
时间:2007-03-15 01:10:30  来源:  作者:


余は暫し荘然として立ちたりしが、ふと油燈の光に透して戸を見れぱ、エルンスト、ワィゲルトと漆もて書き、下に仕立物師と注したり。これすぎぬといふ少女が父の名なるべし。内には言ひ争ふごとき聲聞こえしが、又靜になりて戸は再び明きぬ。さきの老媼は慇懃におのが無禮の振舞せしを詫びて、余を迎へ入れつ。戸の内は厨にて、右手の低き窗に、眞白に洗ひたる麻布を懸けたり。左手にほ粗末に積上げたる煉瓦の竈あり。正面の一室の戸は半ぱ開きたるが、内には白布を掩へる臥床あり。伏したるはなき人なるべし。竈の側なる戸を開きて余を導きつ。この處は所謂「マンサルド」の街に面したる一間なれぱ、天井もなし。隅の屋根裏より窗に向ひて斜に下れる梁を、紙にて張りたる下の、立たば頭の支ふぺき處に臥床あり。中央なる机には美しき氈を掛けて、上には書物一二巻と寫眞帖とを列ペ、陶瓶にはこゝに似合はしがらぬ價高き花束を生けたり。そが傍に少女は羞を帯びて立てり。
彼は優れて美なり。乳の如き色の顏は燈火に映じて微紅を潮したり。手足の纖くたをやかなるは、貧家の女に似ず。老媼の室を出てし跡にて、少女は少し訛りたる言葉にて言ふ。「許し玉へ。君をこゝまて導きし心なさを。君は善き人なるぺし。我をぱよも憎み玉はじ。明日に迫るは父の葬、たのみに思ひしシヤウムペルヒ、君は彼を知らでやおはさん。彼は「ヰクトリア」座の座頭なり。彼が抱へとなりしより、早や二年なれぱ、事なく我等を助けんと思ひしに、人の憂に附けこみて身勝手なるいひ掛けせんとは。我を救ひ玉へ、君。金をぱ薄き給金を析きて還し参らせん。縦令我身ほ食はずとも。それもならずぱ母の言葉に。」彼は涙ぐみて身をふるはせたり。その見上げたる目には、人に否とはいはせぬ媚態あり。この目の働きは知りてするにや、又自らは知らぬにや。
我が隠しには二三「マルク」の銀貨あれど、それにて足るぺくもあらねぱ、余は時計をはづして机の上に置きぬ。「これにて一時の急を凌ぎ玉へ。質屋の使のモンビシュウ街三番地にて太田と尋ね來ん折には價を取らすべきに。」

 6/17   首页 上一页 4 5 6 7 8 9 下一页 尾页


咖啡日语 Ver.7 Created by Mashimaro