第二夜こんな夢を見た。
我做了这样一个梦。
和尚の室を退がって、廊下伝いに自分の部屋へ帰ると行灯(あんどう)がぼんやり点(とも)っている。片膝を座蒲団(ざぶとん)の上に突いて、灯心を掻き立てたとき、花のような丁子(ちょうじ)がぱたりと朱塗(しゅぬり)の台に落ちた。同時に部屋がぱっと明かるくなった。
退出和尚的房间,沿着走廊我回到了自己的房间,只见座灯的亮光昏暗朦胧。在我单膝跪在坐垫上拨高灯芯时,花一般的丁香油“啪嗒”地一声滴在朱漆灯台上。于此同时,房间里也顿时亮堂起来了。
襖の画は蕪村の筆である。黒い柳を濃く薄く、遠近とかいて、寒むそうな漁夫(ぎょふ)が笠を傾けて土手の上を通る。床には海中文殊の軸が懸っている。焚き残した線香が暗い方でいまだに臭っている。広い寺だから森閑(しんかん)として、人気がない。黒い天井に差す丸行灯の丸い影が、仰向く途端に生きてるように見えた。
隔扇纸门上的画出自芜村(译注:与谢芜村,1717-1783,是俳人亦是画家)的手笔。墨色的柳枝以浓淡相间、远近适宜的手法画出,一个渔夫斜戴着斗笠,冷嗖嗖地走在堤岸上。壁龛里挂着的是文殊菩萨踏海图的挂轴。点过的残香,仍在黑暗中散发着气味儿。寺庙很大,因此显得空旷寂寥没有人气。仰面躺下,看到圆形座灯投在黑漆漆的天花板上的圆圆的影子倒颇具生气。
立膝(たてひざ)をしたまま、左の手で座蒲団を捲って、右を差し込んで見ると、思った所に、ちゃんとあった。あれば安心だから、蒲団をもとのごとく直して、その上にどっかり坐った。
我单腿跪着,左手掀起坐垫,右手伸进去一探,那东西果然还在。只要还在,我就放心了,于是,我把坐垫复原,“扑通”一声坐了下来。
お前は侍である。侍なら悟れぬはずはなかろうと和尚が云った。そういつまでも悟れぬところをもって見ると、御前は侍ではあるまいと言った。人間の屑じゃと言った。ははあ怒ったなと云って笑った。口惜(くや)しければ悟った証拠を持って来いと云ってぷいと向をむいた。怪(け)しからん。
“你是个武士。既是武士,就不可能悟不出来。”和尚说道。“瞧你那总不开窍的样儿,可见你不是个武士,是人渣。哈哈,你生气了。”和尚说着笑了起来。“不服气,是吧。那你就拿出已领悟的证明来啊!”说完,和尚扭头不理人了。真是岂有此理。
隣の広間の床に据えてある置時計が次の刻を打つまでには、きっと悟って見せる。悟った上で、今夜また入室する。そうして和尚の首と悟りと引替にしてやる。悟らなければ、和尚の命が取れない。どうしても悟らなければならない。自分は侍である。
在隔壁大厅的落地大钟敲响下一个钟点前,我肯定领悟。领悟后,今夜还要登堂入室。要用我的悟道换取那和尚的首级。若不领悟,便取不了那和尚的性命。我必须领悟。因为我是个武士。
もし悟れなければ自刃(じじん)する。侍が辱しめられて、生きている訳には行かない。綺麗に死んでしまう。
如果不能领悟,那就自行了断。武士一旦受辱,岂能苟且偷生?干净利落,一死而已。
こう考えた時、自分の手はまた思わず布団の下へ這入った。そうして朱鞘(しゅざや)の短刀(たんとう)を引き摺(ず)り出した。ぐっと束(つか)を握って、赤い鞘を向へ払ったら、冷たい刃(は)が一度に暗い部屋で光った。凄いものが手元から、すうすうと逃げて行くように思われる。そうして、ことごとく切先(きっさき)へ集まって、殺気(さっき)を一点に籠(こ)めている。自分はこの鋭い刃が、無念にも針の頭のように縮められて、九寸五分(きゅうすんごぶん)の先へ来てやむをえず尖ってるのを見て、たちまちぐさりとやりたくなった。身体(からだ)の血が右の手首の方へ流れて来て、握っている束がにちゃにちゃする。唇が顫えた。
如此思量之间,我的手又不由自主地探到了坐垫下。顺手拽出一柄朱鞘短刀。我猛地攥紧刀把,将朱红色的刀鞘甩摔到了对面,寒洌的刀锋在昏暗的房间里闪出一道白光。一时间似乎有一些骇人的东西自我的手头嗖嗖地逸出,然后又全部聚集在刀尖上。是杀气,凝聚在那一点上了。看着这利刃令人懊恼地如针头一般全都收缩到九寸五分的尖端时,我突然产生了一股想“扑哧”捅一家伙的冲动。全身的血液全都流向右手的手腕,紧握着的刀把也觉的有些黏乎乎的。我的双唇颤栗不已。