「遠慮しないでもいい」と小僧がまた云った。自分は仕方なしに森の方へ歩き出した。腹の中では、よく盲目(もうもく)のくせに何でも知ってるなと考えながら一筋道を森へ近づいてくると、背中で、「どうも盲目は不自由でいけないね」と云った。
“别抹不开啊。”小鬼又开口了。我硬着头皮朝森林方向走去。我心中暗想:这小子瞎了眼睛怎么什么都知道呢?一边想一边沿着笔直的一条道朝森林走去。背上又说话了:“瞎了眼可真没用啊。”
「だから負ってやるからいいじゃないか」
“所以才背着你么,还不知足?”
「負(お)ぶって貰ってすまないが、どうも人に馬鹿にされていけない。親にまで馬鹿にされるからいけない」
“让你背着是有点真过意不去,可也不能让人作弄啊,甚至被亲生父亲作弄。我真没用啊!”
何だか厭になった。早く森へ行って捨ててしまおうと思って急いだ。
我不由地心烦了起来。加快了脚步,心想:还是早点扔到到森林里算了。
「もう少し行くと解る。――ちょうどこんな晩だったな」と背中で独言のように云っている。
“再走一会儿你就明白了。……刚好也是这样一个夜晚。”背上自言自语似地说道。
「何が」と際どい声を出して聞いた。
“说什么呢?”我紧张地问道。
「何がって、知ってるじゃないか」と子供は嘲(あざ)けるように答えた。すると何だか知ってるような気がし出した。けれども判然(はんぜん)とは分らない。ただこんな晩であったように思える。そうしてもう少し行けば分るように思える。分っては大変だから、分らないうちに早く捨ててしまって、安心しなくってはならないように思える。自分はますます足を早めた。
“什么‘什么’的?你心里不明白吗?”孩子嘲弄似地答道。可 经他这么一说,我自己也觉得好像明白了一点什么。但是还不十分清楚。好像也是在这样的夜晚。觉得要再往前走一段的话,就会明白的。可真明白了就麻烦了,所以要在还不明白的时候赶紧地丢了这孩子,不然叫人怎么放得了心。我越发地加快了脚步。
雨はさっきから降っている。路はだんだん暗くなる。ほとんど夢中である。ただ背中に小さい小僧がくっついていて、その小僧が自分の過去、現在、未来をことごとく照して、寸分(すんぶん)の事実も洩らさない鏡のように光っている。しかもそれが自分の子である。そうして盲目である。自分はたまらなくなった。
雨已下了一阵子了。路上越来越暗。我几乎是不顾一切地往前走着。背上黏着一个小鬼,而这个小鬼像一面不会漏掉一星半点事实的镜子,熠熠生辉,能洞烛我的过去、现在、未来。并且,这还是我自己的孩子。又是个瞎子。我简直快受不了了。
「ここだ、ここだ。ちょうどその杉の根の処だ」
“这里!这里!就在那棵杉树下面。”
雨の中で小僧の声は判然聞えた。自分は覚えず留った。いつしか森の中へ這入(はい)っていた。一間ばかり先にある黒いものはたしかに小僧の云う通り杉の木と見えた。
在雨中,小鬼的声音听得真真的。我不觉停下了脚步。原来不知何时我们已走进了森林。一间(注:日本古代长度单位。约1.818米)开外有个黑乎乎的东西,看来就是小鬼所说的杉树。
「御父さん、その杉の根の処だったね」
“爸爸,就在那杉树下面吧?”
「うん、そうだ」と思わず答えてしまった。
“嗯,是啊。”我脱口而出地回答道。
「文化五年辰年(たつどし)だろう」
“是在文化(注:日本江户时代后期年号。1804~1818)五年,龙年吧?”
なるほど文化五年辰年らしく思われた。
哦,好像是在文化五年龙年。
「御前がおれを殺したのは今からちょうど百年前だね」
“正好在一百年前,你杀了我!”
自分はこの言葉を聞くや否や、今から百年前文化五年の辰年のこんな闇の晩に、この杉の根で、一人の盲目を殺したと云う自覚が、忽然として頭の中に起った。おれは人殺であったんだなと始めて気がついた途端に、背中の子が急に石地蔵のように重くなった。
我一听到这话,便骤然惊醒:在一百年前的文化五年龙年,在一个也是这样的黑夜里,就在这棵杉树底下,我杀了一个盲人。原来我是个杀人犯!我刚意识这一点,背上的孩子突然变重了,重得像一尊石雕的地藏王菩萨像一样。