壮太郎氏は笑いながら立ち上がって、部屋の隅の小型金庫に近づき、ダイヤルを回し、扉を開いて、小さな赤銅製の小箱を取り出しました。そして、さも大事そうに小箱を抱えて、元のいすに戻ると、それを壮一君との間の丸テーブルの上に置きました。
「僕は、初めて拝見するわけですね。」
壮一君が、問題の宝石に好奇心を感じたらしく、目を光らせて言います。
「うん、お前には、初めてだったね。さあ、これが、かつてロシア皇帝の頭に輝いた事のあるダイヤだよ。」
小箱のふたが開かれますと、目も眩むような虹の色がひらめきました。大豆ほどもある。実に見事なダイヤモンドが六個、黒ビロードの台座の上に、輝いていたのです。
壮一君が、十分鑑賞するのを待って、小箱のふたが閉じられました。
「この箱は、ここへ置くことにしよう。金庫なんかよりは、お前とわしと、四つの目で睨んでいる方が、確かだからね。」
「ええ、その方がいいでしょう。」
ふたりはもう、話す事もなくなって、小箱を載せたテーブルを中に、じっと、顔を見合わせていました。
時々、思い出したように、風が窓のガラス戸を、コトコト言わせて吹きすぎます。どこか遠くのほうから、激しく泣きたてる犬の声が聞こえてきます。
「何時だね。」
「十一時四十三分です。後、十七分・・・・・・。」
壮一君が腕時計を見て答えると、それっきり、ふたりはまた、黙り込んでしまいました。見ると、さすが豪胆な壮太郎氏の顔も、いくらか青ざめて、額にはうっすら汗が滲み出しています。壮一君も、ひざの上に、握りこぶしを固めて、歯を食いしばるようにしています。
二人の息づかいや、腕時計の秒を刻む音までが聞こえるほど、部屋の中は静まり返っていました。
「もう何分だね。」
「あと十分です。」
するとその時、何か小さな白いものが、じゅうたんの上をコトコト走っていくのが、二人の目の隅に移りました。おやっ、はつかねずみかしら。
壮太郎先生微笑的站起来,走到房间角落的小保险柜前,旋转着号码盘,打开保险柜的门,取出一个用紫铜制作的小箱子.然后非常小心翼翼地包着小箱子,坐到原先坐过的凳子上,然后将它放在他和壮一中间的圆桌上.
[我还是第一次看见.]
壮一似乎对这个引人瞩目的宝石感到很好奇,眼睛盯着它讲到.
[是的,这是第一次给你看.这就是那个曾经在沙皇头上闪耀过的钻石.]
打开小箱子的盖子时,闪耀着令人眼花缭乱的彩虹色彩.黄豆般大小,有6个实在是非常漂亮的钻石,在天鹅绒的座上闪闪发光.
壮太郎先生等壮一欣赏完钻石后,盖上了小箱子的盖子.
[这个箱子就放这里吧.你我二人四只眼睛盯着它,总比放在保险柜里要放心得多.]
[是的,这样比较好啊.]
两人已经讲到无话可讲了,然后围着摆放小箱子的桌子,一直面面相觑的看着对方.
有时,风时不时地梆梆的吹打着窗户玻璃.听到远处狗不停地在狂叫.
[几点啦.]
[11点43分.还剩17分钟......]
壮一看了看手表回答到.之后两人又沉默不语.观察后可发现就连勇敢的壮太郎先生的脸色也稍微有些苍白,额头上微微地冒着汗.壮一的手放在膝盖上,紧握着拳头,紧紧地咬着牙齿.
房内鸦雀无声,静到可以听到两人的呼吸声和手表一秒一秒的转动声.
[还有几分钟.]
[还有10分钟.]
此时,一个小的白色物体在地毯上滚动,这一幕映入两人视线内.哎呀,是不是一只小白鼠啊.