食事中は、無論壮一君が談話の中心でした。珍しい南洋の話が次から次と語られました。その間には、家で以前の、少年時代の思い出話も、盛んに飛び出しました。
「壮二君、君歯その時分、まだあんよができるようになったばかりでね、僕の勉強部屋へ侵入して、机の上を引っ掻き回したりしたものだよ、いつかはインキつぼをひっくり返して、その手で顔を擦ったもんだから、黒んぼうみたいになってね、大騒ぎをしたことがあるよ。ねえ、お母様。」
お母様は、そんな事があったかしらと、よく思い出せませんでしたけれど、ただ嬉しさに、目に涙を浮かべて、ニコニコと頷いていらっしゃいました。
ところがです、読者諸君、こうした一家の喜びは、ある恐ろしい出来事のために、実に突然、まるでバイオリンの糸が切れでもしたように、プッツリと断ち切られてしまいました。
なんという心なしの悪魔でしょう。親子兄弟十年ぶりの再会、一生に一度というめでたい席上へ、その幸せを呪うかのように、あいつの不気味な姿が、朦朧と立ち現れたのでありました。
思い出話の最中へ、秘書が一通の電報を持って入ってきました。いくら話に夢中になっていても、電報とあっては、開いて見ないわけには行きません。
壮太郎氏は、少し顔を顰めて、その電報を読みましたが、すると、どうしたことか、にわかにムッツリと黙り込んでしまったのです。
「お父様、何かご心配な事でも。」
壮一君が、目ばやくそれを見つけてたずねました。
「うん、困ったものが飛び込んできた。お前たちに心配させたくないが、こういうものがこるようでは、今夜は、よほど用心しないといけない。」
そういって、お見せになった電報には、
「コンヤショウ12ジ オヤクソクノモノウケトリニイク 二○」とありました。二○というのは、「二十面相」の略語に違いありません。「ショウ一二ジ」は、正十二時で、午前零時かっきりに、盗み出すぞという、確信に満ちた文意です。
「この二○というのは、もしや、二十面相の賊のことではありませんか。」
壮一君がハッとしたように、お父様を見つめて言いました。「そうだよ。お前よく知っているね。」
不用说,用餐时壮一自然是话题的中心.壮一接二连三的讲述了新奇的南洋故事.在聊天时,也热烈地聊到了离家出走之前的少年时代的回忆话题.
[壮二,你那时候,还只是刚刚学会走路的那会儿,闯到我的学习房间里,把我的桌子上搞得一塌糊涂.不知道什么时候你将墨水瓶打翻,然后用手去擦脸,结果把脸上涂得漆黑漆黑的,轰动了一时.对吧,母亲.]
母亲虽然已经记不清是否发生过该事情,只是眼睛里高兴的含着泪水,微笑的点了点头.
然而,读者们,因为某个可怕的事情,这一家人的喜悦心情,宛如小提琴的弦断了一样,很突然地噗哧一声被斩断了.
真是一个太没有良心的恶魔.好像是要诅咒这个幸福一样,那家伙的可怕身影朦胧地出现在父母孩子兄弟姐妹相隔十年再次相聚,一生中唯一一次的喜庆宴会上.
正在谈论往事时,秘书拿来了一份电报.就算聊天聊的再怎么投入,有电报来的话,还是要打开来看的.
壮太郎微微皱起眉头,读完那份电报后,然后不知为什么突然沉默不语.
[父亲,是不是发生了什么担忧的事情.]
壮一眼光敏锐地看着那份电报,然后询问了父亲.
[嗯,那令人头痛的家伙突然现身了.我也不想让你担心啊,可是这家似乎伙要来,我们今夜不得不严加提防.]
说完那些话后,把电报递给了壮一,电报上写到.
[今夜正十二点,来取已约定的东西方 二0].二0肯定就是[二十面相]的简称.[正十二点]是十二点整,即凌晨零点整时来盗取.其字里行间充满了自信.
[这个二0 莫非是指二十面相盗贼的意思.]
壮一吃惊地注视着父亲.
[是啊,你也知道啊.]